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【第39話】継ぎ接ぎの巨人

今年最後の更新になります!


来年も応援よろしくお願いします!


どうぞお楽しみください!




 シンデレラの世界から僕達は無事に生還した。

 体感では丸1日くらいは経過していると思っていたが、禁書庫に戻って来た時にはまだお昼前。

 そんな訳で、図書館の外の大通りを僕とルーナの2人で、昼食を食べる場所を探し歩いていた。

 いつもと変わらない何気ない日常のはずなのだが……



「あーっ! 怒槌のお姉ちゃんだ!」


「この前の決闘見たよ! 凄かったな嬢ちゃん!」


「怒槌の姉ちゃんじゃねぇか! 串焼き1本サービスするから、食べていきなよ!」



 そう、あの決闘からまだそんなに日が経っていないせいか、こうして声を掛けてくる人が後を絶たない。



「もうヤダぁ……」



 ルーナは両手で顔を覆って、俯きながら歩く。

 たぶん、今手を退かすと、羞恥で真っ赤な顔を晒してしまう事になるだろう。



「ほらルーナ、貰った串焼き食べる? 美味しいよ?」


「…………食べる」



 数秒の葛藤の末、結局は食べるようだ。

 ルーナは不満そうではあるが黙々と串焼きを頬張る。



「別に良くない噂とか悪口って訳じゃないし、良いんじゃないかな?」


「そうだけど、そうじゃないの!

 最初は『雷』じゃない事に不満はあったけど、今では気に入ってもいるよ?

 でも、人に言われるのはまた違うの!」



 気に入ってはいたんだ……

 でも、いまいちその感情が分からない。



「例えばだけど、ナツメ君が本に入る時の合言葉、今ここで人に聞こえるように言える?

 わたしも自分の合言葉は気に入っているけど、それは無理なの。そういう感じなの!」


「あぁ、そういう感じか……完全に理解した……」



 うん、恥ずかしさで死んじゃうかもしれない。

 更には、それを周りから言わるんだもんな……


 その後もお店に出入りする度、歩いているだけでもそこら中から『怒槌』という単語が聞こえてくる。

 おかげで僕は悪目立ちする事は無かったが、ルーナは終始、恥ずかしさでプルプル震えていた。

 それを見ていると流石に居た堪れなくなり、昼食を食べ終え、すぐに図書館に戻る事にした。



「ハぁぁぁぁ……」


「幸せが逃げるよルーナ」


「古い幸せは逃がして、新しい幸せをいっぱい溜め込むからいいもん」



 いかにもルーナらしい考え方だ。

 それにしても、図書館に戻って来た所でする事が無い。

 サボってそうな人を探すか、忙しそうな人を手伝うか。



「リオ爺さんって、禁書庫に居るよね?」


「たぶんそうだと思うけど、行ってみる?

 僕達が異形を倒した後も結局最後まで出てこなかったし、会いに行って見ようか」


「そうと決まれば出発!」






 という訳で、禁書庫に到着した。

 中には誰もいなかったが、魔法陣の壁前の机には本が1冊置いてある。



「『ジャックと豆の木』か……」


「どんな物語だっけ?」


「う〜ん、大雑把にしか覚えてないけどいい?」



 僕はルーナに物語の概要を説明し始めた。


 主人公のジャックが街で売るはずだった牛を勝手に魔法の豆と交換してしまう。

 それで母親に怒られて庭に捨てられた豆が、翌日には天まで届く木になっていた。

 木に登った先には巨人の城があり、その中で出会った巨人の女性に夫は人を食べるかもしれないからと言われ、置いてあった金貨が入った袋を盗んで帰宅。

 味をしめたジャックはまたもや城に侵入し、次は金の卵を産む鶏を盗む。

 後日、ハープを盗もうとした時に巨人の夫にバレて追いかけられる。

 最後には追いかける巨人を木から降りてくる途中でジャックが木を切り倒し、巨人を殺してしまう。

 盗んだお宝で母と幸せに暮らしましたとさ。


 大まかにはこんな感じのお話だ。

 正直、教訓も何もない。



「えぇ……ジャック、クズ過ぎない?」


「だよね? だから僕も好きじゃないんだよ、この物語。

 控えめに言って、巨人が不憫過ぎる。

 絶対、異形は巨人だよ」



 ルーナのストレートな感想に僕も賛同する。

 だって、どう考えても巨人は悪くないんだし……



「百聞は一見にしかずって言うし、取り敢えず本の中に入ってみよう」



 僕達は本の上に手を重ね、それぞれの合言葉を唱える。



『悪しき者に正義の鉄槌を、助けの声に愛の手を』


『我は守護する者、扉よ開けこの命朽ち果てるまで』



 光る魔法陣へ歩を進める。

 魔法陣を抜けた先、開けた景色の中に見えたのは、数え切れないほどのクレーター。

 そして、遠くから響く地鳴りのような音。



「取り敢えず、震源地に行こう。絶対そこに居るし」


「でも、邪魔にならないように遠くから見てなきゃね」



 その方向へ進むにつれ、地面の揺れと爆発音の如き鈍い轟音が増していく。

 そして、とうとう見えてきた。



「わぁ、わたしリオ爺さんが戦ってる所、初めて見たよ」



 ここから見える範囲だと、上半身だけの巨人が暴れているように見える。



「ここからじゃ分からないけど、口調とかも変わるよ。

 なんて言うか、少し辛辣になるんだ。

 もう少し近寄って見ようか?」



 先程の場所より巨人に近い木陰から覗く。

 ここはさっきよりも巨人の容姿がよく見える。


 巨人の握り拳だけでリオ爺と一緒くらいの大きさがある。

 1度バラバラにした身体を再度縫い合わせた様な見た目に、下半身はどうやら周りに散らばっている巨大な肉塊がそれだろう……



「うわぁ、あれも岩じゃなくて足だよナツメ君……」


「え? うわ、ホントだ……」



 近くにあった僕達の背丈以上ある岩だと思っていた物体は、巨人のかかとだった。

 少し周り込めば、つま先も見えた。

 なんか、ちょっとグロい……


 そうして巨人とリオ爺の戦闘を眺めていると、不意に僕達の前に巨人の一部が飛んで来た。

 飛んで転がって来たのは、恐らく巨人の指のどれかだと思われる。


 僕とルーナは多少の驚きの後、再びリオ爺の戦闘を見ようとした時に喉が詰まりそうになった。


 完全に合ってしまったのだ。目が、リオ爺と……




読んでいただき、ありがとうございます!


「面白い!」「続きが読みたい!」と思った人は、ブックマークや広告の下の評価☆☆☆☆☆を押してくれると助かります!


どうか来年もよろしくお願いします!

皆様も良いお年を!


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― 新着の感想 ―
[良い点] たぶん、ジャックは巨人よりも小さいという理由だけで許されてしまうのでしょう。確かにクズですけどね。いつもながら、導入と展開の仕方が面白いですね。
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