【第22話】最強格への1歩
自主訓練を始めてから、2年が過ぎようとしていた。
「きゅうじゅ…きゅう! ひゃ……くぅっ!!」
リオ爺が来るまでの間、絵を描きながらも筋トレをしようと考えて、必死で腕立て伏せをしていた。
腕がぷるぷる震える。さながら産まれたての子鹿だ。
手始めに取り組んだ腕立て伏せだが、やってもやっても強くなっている実感が持てない。
ただ、最初と比べると進歩はした。
「やったねナツメ君! 腕立て伏せ連続100回達成だよ!
初めなんて、10回くらいでひぃひぃ言ってたのに」
「恥ずかしいから、触れないで欲しいな……」
確かに初めは10回も出来なかったから成長はしている。
ただ、見た目の変化が何一つ無いのが残念極まりない。
筋トレが終われば次は絵だ。
もちろん、こちらも手を抜いていない。
筋トレの後は腕が鈍らないように、武器の絵を毎回10数枚ほど描いている。
前回の訓練で絵を描こうとすると、その前に描いた絵がバシャっと崩れる現象を自分なりに解明しようとしていた。
「これを……意識したまま、こう……」
──よし、今回は成功かな。
今僕の前には2個の剣が形を保ったまま存在している。
何度か描く内に、自分なりに法則を見つけた。
まだ実験段階ではあるが、いくつか紹介しよう。
【1つの武器に2つの性質を持たせることが出来ない】
要するに先端が刃物、柄が縄のような武器が描けない。
刃物は刃物、縄は縄という風に別個で描く必要がある。
これは僕が未熟なだけで、リオ爺ならもしかすると出来るかもしれない。
【絵が複雑になると脆くなる】
これは余計な装飾を施すよりも、シンプルな作りにする方がイメージがしやすいからだ。
装飾が多いと、そちらにも意識が回ってしまう。
それに、実用性を考えるなら装飾は必要無い。
【生き物が描けない】
これに関しては描けないと言うよりも、描いても生き物型の置物になってしまう。
気分転換に鳩をイメージして描いたら飛び立つのか、試してみたら発見した偶然の産物だ。
何個か例を挙げたが、リオ爺なら全部覆して来るかもしれない。
「まぁ、細かい事はリオ爺が来てから教えて貰うかぁ」
「わたくしに何を教わりたいのですかな?」
「うわぁ!!?」
ビックリした……急に後ろから声を掛けないで欲しい。
気配も全く感じなかったし……
リオ爺は僕の反応に満足した顔で微笑んでいる。
リオ爺って実は意地悪なのかな……
いや、この人は多分イタズラ好きなだけだろう。
「クークラへのお話は20分程度で終わったのですが、その後アルバが中々捕まえられずに今まで掛かりました」
また何かしらの仕事を押し付けられたのか……
いつの日か、菓子折でも持っていった方がいいかな?
そんな事を考えている間に、リオ爺は上着を脱ぎ捨て、白いシャツに灰色のベスト姿になった。
こう言うのを所謂"イケおじ"と呼ぶのだろう。
いや、イケお爺かな……
「何やら失礼な事を考えていませんか?」
「どちらかと言えば褒めてたはずです」
割と勘が鋭いんだよなぁ……
それとも、僕が表情に出やすいだけか。
まぁそんな事よりも、今は僕が自分なりに研究した結果の答え合わせをして貰おう。
僕はリオ爺がいない間に得た技術や考察などを話した。
「──という感じなのですが……」
「結論から申し上げますと、先程の考察の約7割は実力不足、及び経験値不足と言った所です」
うわ……ほぼ実力不足じゃないか。
分かってたよ? まぁ、分かってはいたけど心に来るものがあるな……
そんな悲観的になっている僕にリオ爺は続けた。
「しかし、自分で考え、答えを導こうとしたその姿勢は大変素晴らしいです。
私も図書館長として期待に応えてあげましょう。
目標はそうですね、神域の図書館の最強格と闘り合える程度まで鍛え上げましょう。
もちろん、ルーナさんと一緒に」
「図書館の最強格、ですか?」
「そうです。
具体的には、メイレールやアベリア、わたくしもその1人と言われています」
リオ爺は「恥ずかしい限りです」とか言っているが、満更でもなさそうである。
って言うか、最強格の顔ぶれ濃いな……
メイレールさんは『轟雷』の2つ名持ちだし、アベリアさんはオーラが既に只者じゃない感が出てるし、リオ爺は圧倒的な武闘派だ。
そんな化け物達と闘り合う自分の姿が想像できない。
「そうと決まれば、早速戦闘訓練を始めていきましょう。
ルーナさん! こちらに集まって貰えますかな?」
「は〜い! 今行きます!」
ルーナも揃った所で、訓練の内容が言い渡される。
「訓練は至って簡単です。
2人で協力し、わたくしに一太刀入れてください。
その過程が訓練だと思ってください」
この日から、数十年にわたる地獄のような特訓が始まるのは言うまでもない。
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次回は、VS リオ爺なのです!
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