王都編 閑話
これはあの鉱山を出た直後にあったお話。
「剣の腕を見て欲しい?」
「あぁ、でだ、願わくば剣の師になってほしいんだ」
そう言ってエリオンは俺に頭を下げてきた。が、エリオンがいきなりそんなことを言ったのか理解できずに呆けてしまい聞き返してしまったのだ。
だが、彼の話を聞くと理解出来る話でもあった。
どうやらエリオンは先ほどの俺とゴーレムの戦いを見て何か思う所があったようで俺に鍛えて欲しいとのことだった。
ぶっちゃけた話、俺は人に教えることに不慣れだ。会社でのプレゼンだって得意だったわけではない。別に熱意がないとかじゃなく単に俺が下手なのだ。
この世界に来てからはそんなことをしなくて済むぞー!やったー!と思ってたくらいだしな!
だから俺には人に教えるなんて到底出来そうになかったのだ。
「エリオンが俺を評価してくれているのは素直に嬉しいが、俺は人に教えるという立場に立った経験が少なくてな・・・
剣に関しても感覚に近いことではあるんだ」
元の世界でだって俺は剣術なんてものは嗜んでいなかったしさっき使った技だって元々ガロンが覚えた剣術スキルの一つだった。
取得条件は少し面倒だったな・・・確か、ロングソード系を250回使用とショートソード系300回使用した後覚える飛連というスキルを1000回使用するだっけかな
しかもその剣技を解放したあともまた回数解禁で・・・
「ちょ!?だ、大丈夫か!?」
あ、やべ。軽くトリップしてた
「大丈夫、大丈夫。で?剣の腕を見るのと師になって欲しいだっけか」
「あぁ!頼む!」
エリオンは頭を下げ両手を前に出して手を合わせている。なんという日本流。しかもイケメンだから様になっているし
「んー・・・剣の腕を見るのは構わないけど師は・・・とりあえず理由を聞いても?」
「解った。俺は剣を騎士団で磨いて次に冒険者になったんだ。理由は常時身を危険における冒険者だからこそ剣の高みへと目指せると思ったからだ。
別に騎士団のレベルが低いというわけではないからそこは勘違いしないでくれ。むしろ騎士団は諸外国よりは高い錬度を持っていると思っている」
「だな。第一にシャルノがいるし質が悪いってことはないだろう」
あの錬度を保つのは相当に努力をしなければならないだろう。だからこそ理由が分からなかったがその疑問は次でわかった。
「シャルノさんは確かにものすごく強い。だけど、俺の剣とは噛み合わないんだ」
それを聞いて俺は少し考える。確かにエリオンの剣はシャルノの腰にあった剣より幾分か剣周りが太い。
それに道中での彼の戦いぶりはどちらかと言うとシャルノも威力は勿論あるのだが研鑽された技巧による素早さが売りの剣技だったがエリオンはそれとは逆の一撃で相手を屠る威力特化タイプだった。
俺もどちらかと言えば手数が多い剣技が多いんだけどなぁ 等と心の中で呟いたがエリオン自身は俺の返事を待っているようだ
仕方ないか・・・どこまで教えれるかわからないし指導が上手く出来るかわからないがやってみよう。何より頼られるというのは存外悪い気分でもないからな!と区切りをつけた
「わかった。だけど、俺も人に教えるなんてのは下手だからな?」
「構わない!師匠!これからよろしく頼む!」
エリオンは満面の笑みで俺に頭を下げた。
「あぁ、それと剣技については教えるけど師匠はやめてくれ。これからも呼び方は変えなくていいから」
「・・・俺としてはありがたいけどいいのか?師弟の関係としてはやっぱりケジメは着けた方が良くないか?」
そう言いながらエリオンは頭を上げて少し困惑気味に尋ねてきた。が、俺としては対等な付き合いが欲しかったために当然却下である。
「まぁ、世界に一つくらい師弟としての呼び方が違ってもいいんじゃないか?」
「うーん・・・まぁ、ガロンがそう言うのならば・・・」
「そうそう!それに俺も初めて剣術を教えるんだ。ある意味ルーキーだしな!」
「ぷっ!あっははは!ならお互いに成長しよう!」
そうして、暫く二人で笑い合いながら俺たちは来た道を戻り始めた。
王都までの3日間はまさに修業という感じで俺はエリオンに剣技の指導をしていた。そして王都まであと少しといった所でエリオンがふと
「そう言えばガロンは王都のどこに住んでいるんだ?王都に着いてからも剣技の指導をしてほしいんだが」
「あーそう言えば、伝えてなかったっけか」
「ん?」
「実はな、まだ家が決まっていないんだ。王都についてからギルドを通して色々物件を見て回ってはいるんだが良いのがなくてなぁ。それに俺は世界を見て回りたいってのもあってな
中々あと一歩を踏み出せなかったりするんだ」
「そうか。旅をすることは勿論奥さんたちには言ってるんだろ?」
「あぁ、言ってるし妻たちには俺に付いてきてもらうつもりだよ。まぁ、今すぐに世界を旅する訳でもないし今は王都でゆっくりするつもりだ」
「なるほど。んー・・・あっ!そうだ!ガロン!俺なら一つ良い物件を知ってるぜ!」
エリオンは思い当たる場所があったのか提案してくれたが、どうにも含みのある笑みなのが解せない
「へぇ?それはどこなんだ?ギルドの物件を粗方見たと思ってたんだが」
「へっへっへ。俺は一応この国の王子の一人だぞ?ギルドに出してはいない土地の一つや二つあるさ」
なんだかとても嫌な予感がする言い方で思わず俺は後ずさってしまった。
そんな俺にお構いなしのエリオンは
「そうだなー、王都に帰ったら明日の朝にでもギルドに来てくれ。話は通しておくし父上もシャルノさんより強い人が近くにいるなら安心できるだろ」
「お、おい!?エリオン?なんだかとても嫌な予感がするぞ」
俺はエリオンに答えてもらおうとしたが当の本人はスルーした所か全速力で王都までの道を走りだした
「ガローン!じゃぁまた明日なー!俺はこのまま走っていくわー!」
振り向いたエリオンは俺に手を振りそのまま王都まで走り見えなくなっていった。一応はまだ王都に着いていなかったためサードアイで警戒しながら俺も少しだけ小走りに戻るはめになったのは内緒だ。
なにはともあれ、預かったルーグス輝石の加工を今日中に屋敷でして明日渡そう。それ以外のことは嫌な予感というかもう確実に俺の予想してることが当たるだろうがそこはもう諦めよう。
異世界さんこんにちわ~不死王だけど元人間です~ 王都編 閑話
近いうちに王都に戻ってくるまでのアリーシャ&シャルノの閑話を挟んで本編に戻ります




