表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニベルの右手 -忌まわしき女神の使命-  作者: 蓮見ななこ
アルメイン大陸 王都カリナーン -後編-
PR
56/207

56.カリナーンは好きか?

 レンジ達一行は、カリナーンに到着すると二手に分かれた。

 シアードとセレスが城内に入り、王妃を討つ。

 それ以外の者は、徴兵されている国民を救うために、城内の訓練場を目指すという作戦だ。

 どちらともまず、カリナーン城を目指すのだが、そこまで辿り着くのは容易ではない。

 まるで要塞のようにそびえ立つあの城は、大砲を街の方へ向けている。

 二万の兵士に大砲をもつカリナーンの軍隊と、千人ほどの庶民の力とでは雲泥の差がある。

 だが、レンジは言う。


「いいじゃねぇか少なくても。

 要するに負けなきゃいいんだ。

 俺達は俺達で、城にいる国民を助けよう!

 そんでもって、シアードを信じろ!」


 レンジが士気を高めている時、向こうの方から何かが壊れる音が響いてきた。

 衝撃が起きた直後、熱を帯びた突風が小石や枝を運んでくる。

 カリナーンの軍隊が、あろうことか街の中に大砲を撃ったのだ。


「なんて奴らだ……!」


「レンジ、急ごうよ!

 でないと、もっと撃ってくるよ!」


 そう話すハープの様子が、撃たれた大砲の威力を物語る。

 レンジ達は、急いで城の中の訓練場を目指す。

 その際に、自分達を狙ってくるいろんな兵士と戦闘を交える。

 ただひたすら、見境なく人を斬り付けてくる者もいれば、集落の者の姿を見ると、涙を流しながら剣を放る者もいる。

 ひとえに「兵士」と言っても、彼らの戦う動機はひとつではなかった。

 ただ暴れたいだけ、本当は戦いたくないが命令に背くことが許されないなど、様々だ。

 二万の兵士の中に、命を賭して国のために戦う者は、一体何人いるだろうか。

 団結力のない寄せ集めの兵などに、長くこの日を待ちわびた集落の人々が負けるはずもなかった。

 倒した兵士の武器を奪うことで、レンジ達の軍は強化されていった。


 カリナーンの城門に辿り着いたとき、門番が二人とも倒れていた。

 レンジは、そこにかすかに見える馬の足跡で、シアードとセレスは既に城内にいることを確信した。

 レンジ達は、地図で見た位置の訓練場に向かった。


「みんな、助けに来たぞ!」


 訓練場の扉を開けると、そこには大勢の武装した兵士がいた。

 彼らは皆、街から収容された国民であった。

 だが兵士達は、こちらに槍を一斉に向けてきた。


「ま、待てよ!

 俺達はあんたたちを助けにきたんだぞ!?」


 兵士の一人が、声を震わせながら大声を上げる。


「う、うう、うるさいっ!

 俺達は、逃げたお前らの分まで、苦しめられてきたんだっ!

 か、か、覚悟しろ!」


 兵士がもつ槍は、大きく震えていた。

 怒りで震えていたのか、同じ国民に槍を向けるのが怖いのか、その震えがどこからきているのか分からないが、このままやられるわけにもいかなかった。


「ま、待てよ!」


「うるさいっ!

 うるさいうるさい!!

 わあぁーーッ!!」


 兵士は叫びながら突進してきた。

 レンジは咄嗟の出来事に避けられないでいた。

 身構えながら、ぐっと体に力を入れて目を瞑っていたが、何も起こらない。

 恐る恐る目を開けると、目の前にはバートが手を広げて立っていた。

 兵士の突いた槍は、バートの左手を貫通していた。


「バートさん!!」


 大量の血を流すバートに、大勢の人が駆け寄る。

 矛先が真っ赤に染まった槍を握りしめたまま、兵士は歯を剥き出して取り乱していた。


「ワシは……大丈夫じゃ。

 なぁに、腕の一本くらい……国民が受けた苦しみに比べたら……こんなもの……。

 ……なぁ、お主ら……。

 カリナーンは好きか?」


 ハープが、傷口に布をあてがう。

 しかし、それはみるみるうちに真っ赤に染まっていく。

 バートは手当てを優しく阻止すると、ゆっくりと立ち上がり、なおも言葉を続けた。


「ワシは……第一王子と共に、一度はこの国を出た。

 じゃがのう、やっぱりのう、捨てきれんかったんじゃ……。

 昔に比べて……この国は変わってしもうたがの、いつか取り戻すことをずっと夢見てきたんじゃよ……。

 ……第一王子が帰ってきたんじゃ。

 シアード王子は……今まさに王妃を討とうと、国を取り戻そうとしておる。

 国民よ、戦おうではないか。

 ワシらの手で……大地と花の国を取り返すんじゃ。」


 その時、後ろの方で拍手が聞こえてきた。

 拍手しているのは、一人だ。


「ハイハイハイ!

 いやぁ、なんとも素敵な爺様だ!

 熱いねぇー、俺、そういうの嫌いじゃないぜ?

 でもよ、こいつらは渡せねぇ。」


 壁に手をついてそう話す大柄な男は、傍にいた兵士を一蹴りした。

 すると、兵士はそのまま壁の方へと激突し、意識を失った。

 衝撃によって凹んだ壁が、男の一撃の威力を物語る。


「みんな、早く脱出するんだ!」


 息を切らすバートを背負った集落の男が、部屋から出るように促した。


「そうはさせねぇっての!」


 男が大きな体を使って、こちらに体当りしようと目掛けてくる。

 ハープは手の平から火の球を生み出し、それを男に投げつけた。

 一瞬ひるんだ隙に、レンジが両手を前に出して動きを阻止した。


「何だ、おめぇはよぉ……。」


「おめぇの相手は俺だ、デカブツ!」


 レンジ、負けないで。


 全員が無事部屋を脱出したことを確認したハープは、レンジに目で合図を送ると、人々の一番後ろについて出て行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ