表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニベルの右手 -忌まわしき女神の使命-  作者: 蓮見ななこ
ノイシュタット大陸 世界樹の森
PR
35/207

35.襲撃

 「やれやれ。

 久しぶりにこんなに魔力を使って、少々疲れたわい。」


 エルフの長は、傍にあった椅子に腰かけた。


「……わしはあの時、セリシアに何と言ってよいのか分からなかった。

 扉を開けるまでは、この森を出ていくように命じるはずじゃった。

 じゃがの、幼子のお前さんを抱いたセリシアに、どうしてそんなことが言えようか。

 そして、何よりセリシアはあの人間を誰よりも愛していた。

 愛する者が自分の目の前で連れ去られ、エルフ達の怒りを一身に受けざるを得なかったセリシアが、わしは気の毒でならんのじゃ。」


「長老様……。」


「ところで、お前さんたちは何故この世界樹の森に来た?

 エルフ達が言うように、ここは本来人間がくるところではない。」


 エルフの長の問いに、ハープが答える。


「私達、水の精霊に会いに来たんです。

 ラクベールの大長老様は、この世界樹の森に水の精霊がいるとおっしゃってました。

 水の精霊の力を、どうか貸していただきたいんです。」


 ハープの答えに、エルフの長は失笑した。

 人間風情が水の精霊の力を借りるなどということが、とても滑稽でならない。


「確かに、精霊様はこの森の世界樹に宿られておる。

 残念じゃが、精霊様とて人間なんぞには力を貸さぬじゃろうて。

 何しろ、お前さんたち人間は世界樹を燃やそうとしたんじゃからの。

 ……無駄足じゃったのう。

 お前さんたちには本当に、嫌な思いばかりさせてしまってすまんのう。」


「長老様が謝ることなんてありません!」


 外から大きな声が聞こえた。

 レンジ達とエルフの長は外に出る。

 すると、そこにはエルフ達が立っていた。

 だが、先程とは違って大人しい。

 しかし、向けられる眼差しは決して好意的なものではなかった。


「……長老様に聞いたんだろ?

 この森で過去に何があったのかを。

 これで分かっただろう?

 僕達エルフが、君ら人間を嫌う理由が。

 セリシアは勘違いしていたみたいだけど、人間はやっぱり醜い生き物だ。

 ……お願いだから、もう出ていってくれないか。

 僕達、平和に暮らしていたいだけなんだ。」


 今レンジ達に喋るエルフは、先程の回想にも出てきた男のエルフである。

 見た目はレンジよりも幼いが、おそらく何百年と生きているのだろう。

 少年は怒っていた。

 ここのエルフ達がセレスの母を責めたりしなければ、セレスはこの森で暮らせるはずだった。

 ほぼ記憶にないはずの故郷に、懐かしがって涙する彼女の姿が不憫でならなかった。

 少年の悪い癖だ。

 怒りに任せて、言葉が止まらない。


「その平和のために、水の精霊に会いに来たんだよ!

 確かに人間は勝手なトコもあるけど、てめぇらだって勝手じゃねぇか!

 セレスの母ちゃんは何も悪くねぇのに追い出しやがって!」


「な……何だと!?

 醜いお前ら人間なんかと、エルフを一緒にするな!」


「一緒でい!

 お前らが怒るように、俺達だって怒るんだよ!」


 エルフ達はしどろもどろしている。

 怒りをあらわにしている者もいれば、あの事件を思い出して身を震わせる者もいる。

 当のエルフの少年は、涙目になりながらもこちらを睨み付けている。


「レンジやめて。

 彼らの言う通りだわ。

 私達が勝手にこの森に来たのが悪かったのよ……。」


 セレスの言葉に、レンジは我に返る。

 手のひらに違和感が走る。

 広げて見てみると、血が滲んでいた。

 このユニベルを平和に導くために精霊の力を必要としているのに、どうしてエルフ達には理解してもらえないんだ、と悔しい思いを募らせる。

 だが、それよりも彼の悔しさを駆り立てたのは、自分たちが記憶の回想に出てきた、あのアカデミーの人間と同類に思われていることだった。

 その時───。


「な、何!?」


 森じゅうに大きな地響きが走った。

 その音の大きさに、エルフ達はとっさに耳を塞ぐ。

 何かが焼ける匂いがする。

 その方角に目をやると、世界樹から煙が上がりだした。


「まさか……世界樹に異変が!?」


「精霊様!」


 集まっていたエルフ達は、蟻の子を散らすように散らばっていった。

 そして、その場にはレンジ達しかいない。


「行こうよ!

 みんなが危ない!」


 セレスは、一目散に世界樹の方角へ走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ