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ユニベルの右手 -忌まわしき女神の使命-  作者: 蓮見ななこ
ノイシュタット大陸 魔法都市ラクベール
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25/207

25.魔法都市ラクベール

 光に誘われて、何とか森を抜けることが出来たレンジ達は、目の前に広がる光景に言葉を失う。


 とある、体格のいい男がいる。

 持っている道具や格好からして、おそらく大工だろう。

 見るからに魔法とは無縁そうではあるが、男はレンジ達のその既成概念を覆す。

 男は地面に手をかざし、何かを呟いている。

 すると、地面から岩が勢いよく飛び出してきた。


「こんなにいらねぇんだよなぁ。」


 男はため息をつき、今度は岩に向かって両手をかざす。

 すると、風の刃が岩を荒くそぎ落とし、男は程度の良い岩の前に座ると、ハンマーで叩き始めた。

 他に辺りを見回すと、魔法で水を生み出して衣類を洗う若い女性や、火の魔法で焚火を起こして暖をとる老夫婦などが目に入る。

 ここにいる皆が、魔法を日常的に使っているのだ。

 ここは紛れもなく、魔法都市ラクベール。

 レンジが渇望していた場所である。


「ここの人達、なんだかすごいね。

 それに、街の雰囲気も今までと違う……。」


 セレスは自分も魔法が使えるが、目の前に繰り広げられる魔法には、ただただ驚かされるばかりだ。

 いつも冷静なシアードも、珍しく辺りを見回している。

 魔法を使わんとする者を見つけては、凝視している。


「お兄ちゃんたち、どうやってここに来たの?」


 一人の少年がレンジに話しかけてきた。


「これを使って来たんだ。」


 レンジがネックレスを見せると、少年は指を差してレンジに驚いて見せた。


「それ、ハープ様のだよ!

 何でお兄ちゃんが持ってんのー!?」


「ハープ……様?」


「とにかく、返してあげてよっ!

 それ、下界とここを繋ぐ大切なものなんだ!」


 少年はレンジの腕を引っ張って走り始めた。


「おいっ、どこに行くんだよ!?」


「ハープ様のところだよ!

 ハープ様……やっと帰ってきたんだよ。

 たった一人で、ロイドの母さんの病気を助けるために旅に出てたんだ。」


 話が全く見えない。

 レンジは、この少年に身を任せることにした。

 身を任せていれば、自分が探すよりも早くハープに会えるからだ。

 しかし、周りの人々の視線が冷たい。

 あまり良く思われていないということが、鈍感なレンジにさえ分かる。

 自分がいた村とは大違いだ。

 この街は、とても冷たい雰囲気だった。


 しばらくすると、街中よりも少し外れに建っている民家に着いた。


「ロイドの母さん、下界の人間なんだ。

 だけど、声が出せないんだって。

 ラクベールはふつう、下界の人間なんて住めないんだけど、あの人はどうしてかずっといるんだよね……。」


「うーん、よく分かんねぇけど、ハープはあの人の声を治す方法とか薬を探して旅に出てたんだな?」


「そうだよ。

 ハープ様は優しいんだ。

 僕、ハープ様が大好きなんだ。

 お兄ちゃんも見てみなよ。」


 少年が民家の窓を覗いて中の様子を見ている。

 レンジは、このようなこそこそするような真似は好きではないが、どうも話が見えないので少年に従った。

 そこには、ベッドに座る女性がいる。

 その両隣に、黒髪の青年と、自分が会いたいと願い続けていた少女───ハープの姿があった。

 耳を澄ますと、何やら声が聞こえる。

 覗きもしてるんだ、どうせなら、と、会話を聞くことにした。


「ハープ。

 お前が旅に出てから、みんな心配してたんだぞ。

 何もなかったのか?」


「えっ?

 別に、何もなかったよ。

 それに外の世界の様子を見ることが出来てよかった。

 まだ、大丈夫そうだったよ。」


「そうじゃなくて!」


 黒髪の青年は、ハープの肩を掴んで声を上げた。


「お前に何かあったら、僕が嫌なんだよ!」


 ───この男は、ハープの何なんだ?


 自分の惚れている少女が、他の男性に目の前で触られている。

 その光景に、レンジは苛立ちが隠せない。


「なぁ、あいつはハープの何なんだ?」


 レンジは小声で少年に聞いた。


「あぁ、ロイドはハープ様の家族みたいなモンだよ。

 でも、それだけじゃなくて、ロイドはずっとハープ様の傍にいて、ハープ様が危ない目に合わないように守っているんだ。

 下界の言葉では、ボディガードっていうのかな?

 それを、ここでは守人もりびとっていうんだ。

 ロイドはずっと、ハープ様の守人になりたがってるんだよ。」


 その「守人」というのには、自分がなることは出来るのだろうか?

 そう考えていると、後ろから大きな声が聞こえた。


「こらっ!

 何してるの!

 覗きなんてやめなさいよ!」


 セレスの声に驚き、体勢を崩してしまう。

 そのまま地面に倒れ込んでしまった。


「いてて……。

 いきなり声かけるやつがあるかっ!」


「ご、ごめん。

 でも覗きはよくないわ!」


 レンジとセレスが言い合いをしていると、民家の扉が静かに開いた。

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