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ユニベルの右手 -忌まわしき女神の使命-  作者: 蓮見ななこ
ノイシュタット大陸 魔法都市ラクベール
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23/207

23.人食い蛾

魔物のお食事シーン(少々グロテスクな表現)があります。

苦手な人はスキップ。

 痩せ型の男は不愛想で口数が少なく、長い髪をした男は飄々(ひょうひょう)としており、実に対照的な二人だった。


「僕達、アカデミーという組織の人間なんだ。

 ちょっとした実験のために、この森に来てるんだ。」


 長髪の男が、三人の警戒心を打ち消すかのように話す。


「危ない!」


 未だ状況を飲み込めていない、セレスの近くにあった大木から、酸性の液体が降り落ちてきた。

 長髪の男が白衣をかざし、液体を打ち払った。

 白衣の一部が溶けて煙を上げている。


「あ、ありがとう……。」


「お礼なんていいよ。

 それよりコイツら、どうしたもんかね。」


 そこには、二メートルほどの大きさの蛾がいる。

 姿が確認できたのは、三匹。

 細長く伸びたストロー状の口元から、不透明な黄色い液体が垂れている。

 一滴垂れるたびに、地面から白い煙が上がる。


「……人食い蛾だ。

 こいつに直接触れたら毒気で殺られるぞ。」


 痩せ型の男がやっと口を開いた。

 レンジは自分の攻撃が効かない相手に、初めて恐怖を抱いた。

 レンジとセレスが後ずさりしているうちに、シアードが剣を抜き、羽を斬り落とす。

 一匹の人食い蛾はググッ、と鳴いた瞬間、紫色の血しぶきをあげ、その場にどさっと落ちた。

 残りの二匹が血の匂いに反応したのか、にちゃにちゃと生々しい音を立てながら仲間を新鮮なうちに貪り始める。


「今のうちに逃げるぞ!」


 その光景を見ることなく、五人は走り出した。

 食事が終わったのだろうか、動くものを確認したからだろうか。

 案の定、二匹の人食い蛾がレンジ達を追いかけてきた。


「下がれ!」


 シアードと、二人の男性が身構える。

 痩せ型の男は、一匹の人食い蛾に試験管を投げつけた。


「君、火はないか?」


 シアードに手を出して、まるで早く寄越せと言わんばかりに尋ねる。

 シアードは煙草を吸うときに使うライターを渡すと、男は小枝に火を付け、それを人食い蛾に投げつけた。

 得体の知れない化学薬品を浴びた人食い蛾は、炎に包まれる。

 ギイィッ、という断末魔をあげ、その身体は真っ黒に焼かれた。

 一方で、長髪の男は茨の鞭でもう一匹と闘っていた。

 いや、守りに入っていたというのが正しいのかもしれない。

 親玉だろうか、他の二匹よりも一撃に威力がある。

 それを茨の鞭で跳ね返すのがやっとのことだった。

 下手によけると、レンジとセレスに蛾の口元が当たりかねない。


「何やってんだ、コイツもこうして───。」


 痩せ型の男の声が止まった。

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