22.迷いの森
王都リューベルクを後にしたレンジ達一行は、北部にある関所にいた。
関所を監視する二人の兵士に、王から受け取った手紙を渡す。
「……確かに。
どうぞお通りください。
ただし、この先は我が国の統治外。
私共も、この先には迷いの森と呼ばれる森が広がっているだけとしか存じておりません。
どうかお気を付けて。」
兵士は心配そうな表情を浮かべている。
その様子から不安が胸に広がりつつあるレンジは、兵士に尋ねた。
「数日前、黒い髪をした女の子を見かけなかったか?」
「女性は見てませんね。
ただ痩せ型の男と、長い髪をした男の二人組が通っていきました。
二人ともさほど若くなく、白衣を着ていました。」
「そうか……。」
ハープは本当にここを通って行ったのか?
ラクベールは本当に、この森から行くことが出来るのか?
考えていても始まらない。
可能性が少しでもあるなら、行ってみる価値はある。
兵士に礼を告げ、レンジ達は関所を通っていった。
外の景色はすでに薄暗く、森の中に入るとまた一段と暗くなる。
アレス島の森はどんなに暗くても、月明かりが差し込む。
昼間となると、木々がよけるかのように青空を見せてくれる。
だが、この森は違う。
森全体が生きているような気がしてならない。
ケイシャ鉱山の時とはまた違った、自然の中に不気味さを感じる。
「ここ……なんだか怖い。」
「な、何だよセレス、情けねぇなっ。」
セレスの言葉に強がってはみたものの、実は自分も怖かった。
気が付けば二人とも、シアードの服の裾を掴んでいる。
「……歩きにくい。」
シアードから、二人は離れようとしない。
森を突き進むと、いよいよ夜になってしまった。
フクロウだろうか。
不気味な鳴き声が森中に響く。
またさらに奥へ進むと、茂みから葉の擦れあう音が聞こえてきた。
「ま、魔物か!?」
レンジが戦闘態勢をとり、シアードも背負っている剣に手をかける。
セレスは怯えていたのか、一歩遅れをとってしまう。
何やら黒い影が、三人の前に現れた。
「きゃっ!!」
目をきつく閉じたセレスの耳に、聞き慣れない声が入る。
「いやぁ、驚かせてゴメン。
僕達は魔物じゃないよ。」
おそるおそる目を開けるとそこには、白衣を纏った男性が二人、苦笑いをしながら立っていた。
魔物ではないと分かると、レンジとシアードは戦闘態勢をとく。
関所の兵士が話していた通り、痩せ型の男と、髪の長い男だ。
そして二人とも、白衣を身に纏っていた。




