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ユニベルの右手 -忌まわしき女神の使命-  作者: 蓮見ななこ
決戦 ゼロ
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205/207

205.レンジ

 レンジはハープの体を抱き寄せたまま、彼女の顔を見つめていた。

 その姿に、セレスとシアード、ヤグティンはいたたまれない気持ちになった。

 セレスは少年に声をかけようと、近づこうとした。

 しかし、シアードに腕を掴まれることで阻止される。


「でも……っ。」


 セレスの今にも泣き出しそうな表情に、シアードも眉をひそめて首を横に振った。


「こんなのってないよ……。

 悲しすぎるよ……!」


 セレスは、両手を覆ってただただ泣くばかりだった。


「ハープ……ごめんな。

 俺……結局、印の魔法を使わせちまった……。

 お前を守り切る事が出来なかった……。」


 どれだけ話しかけても反応は返ってこない。

 少年の呟くような切ない声だけが、虚しく響き渡る。


「なぁ……起きてくれよ。

 俺、まだ言ってねぇだろ……?

 お前が好きだって、伝えてねぇだろッ!?」


 レンジの叫びもハープにはもう届かない。

 生き残った三人とも、そう感じていた。

 しかし───。


「……泣かないで。」


 ハープのかすかな声が聞こえる。

 きつく目を閉じて、彼女を抱きしめていたレンジは、ばっ、と彼女の顔を見た。

 目は開かれており、優しく微笑む彼女の表情があった。


「ハ、ハープ……!」


「ゼロはもう大丈夫。

 三百年前の私とロイドが、私を助けてくれたの……。」


 レンジは乱暴に涙を拭うと、ハープの手を握り、固唾を飲んだ。


「ハープ……。

 俺はずっと、ハープの事が───。」


 続きは言わせてもらえなかった。

 レンジの唇に、柔らかい感触が走る。

 彼の唇は、ハープの唇によって塞がれた。

 唇を離した彼女は、頬を赤らめながらもレンジの目をじっと見つめていた。


「私、あなたの事が好き、大好き……。

 初めて出会った、あの日からずっと……。」


 夢かと思ったレンジは、自分の頬を強くつねった。

 痛い。

 これが夢ではない、紛れもない真実だと認識すると、レンジはハープを強く抱きしめた。


「さ……先に言うなよな……。

 俺だってずっと言いたかったのに……。」


 ハープは、ぶっきらぼうな口調のレンジが愛おしくてたまらなかった。

 強く抱きしめてくれる愛する人に、ハープも自ら背中に腕を回した。

 ばくばくと、強く脈打つ彼の鼓動が心地よかった。

 それに伴い、自分の鼓動も激しく高鳴っていく。

 ハープは、生きている事を実感した。


「あ……。」


 ヤグティンは、柔らかい光を放つ箱舟に目をやった。

 誰も乗っていない箱舟が、ひとりでに宙に浮き始めた。

 役目を終えた箱舟は、天高く昇っていく。

 まるでゼロと三百年前のハープ、そしてロイドの魂を天へ運ぶかのように───。


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