13.王都リューベルク
レンジ達一行は、王都リューベルクにいた。
初めて間近で見るお城に、レンジは口を開け、セレスはうっとりしながら見上げていた。
リューベルクは、ノイシュタット大陸の三分の二ほどの領地を統治する国である。
アレス島には、王権もなければ政治らしい政治もない。
村独特の和気藹々(わきあいあい)とした雰囲気は、城下町からは感じられなかった。
都会とはそういうものなのだろうか。
しかし、ただならぬ気配を感じるのは、初めて来た彼らにも分かる。
兵士があちらこちらで、慌ただしく動いている。
「どうしたんだろ?」
「さぁ?
それよりも、早く王様に会おうぜ。
関所を開けてもらうんだ。」
レンジの気持ちは、ラクベールに行き、ハープに会いたい一心だった。
昨夜ドン・チェルニにラクベールに行くためにはどうしたらいいのかを聞いたため、ノイシュタット大陸に着いたときの不安など、とうに消え失せていた。
ラクベールに行くためには深い森を抜けなければならないのだが、そのこともすでに頭から抜けている。
城の大きな門をくぐろうとすると、二人の兵士が機敏に動く。
そして、自分の背丈より長く細いランスを、斜め十字に重ねて行く手を阻む。
「待て、何用だ!?」
「旅の者です。
北部に用があるので関所を開けていただきたい。」
シアードが兵士に臆することなく、丁寧に話す。
「何の目的があってかは知らないが、今は怪しい者は城に入れぬようにと王様のご命令だ。
悪いがお引き取り願おう。」
「その方たちは私の使用人だ。
一緒に旅をしているのだが、入れてはもらえんかね?」
レンジ達の後ろでゆったりとした、記憶に新しい声がする。
振り向くと、そこにはドン・チェルニの姿があった。
「チェ、チェルニ様!
しかし今は……。」
「なぁに、頼まれ物のティーセットを卸したらすぐに出るさ。」
「……では。」
兵士たちが、重ねていたランスを解く。
ドン・チェルニの後を三人はついていく。
「誰が使用人だ誰が!」
「そうよ!
大体、私とシアードはあなたに会ったことないはずよっ。」
少し離れた廊下で、レンジとセレスが恩人に詰め寄る。
詰め寄る二人の首根っこを持ち上げ、シアードはその恩人に頭を下げて、ただ一人、礼を言う。
「昨晩、レンジから話は伺ってます。
ありがとうございました。」
「いやなに、たまたま通りかかっただけだよ。
だが、この城は普段なら旅人や城下町の人々に開かれているもんだがね……。
何やら街も慌ただしいし、落ち着かない。
あとは君たちが王様に話を聞いてみるといい。
私は面倒なことが苦手でね。
ティーセットを卸したらとっとと帰るよ。」
そう言うと、彼は何処かに行ってしまった。
「あれが王様?」
王の間の入り口まで来ていたが、二十人ほどの兵士が王の前に寸分の狂いもなく二列に整列している。
王が何かを言ったかと思うと、兵士は散らばっていった。
そして、王座の肘掛けに肘をおき、ため息をついてうなだれた。
兵士達の前で見せた勢いは、跡形もなく消え去っていた。
その隣で、赤いドレスを着た上品な女性が、両手で顔を覆っている。
とても、頼み事など出来る雰囲気ではなかった。




