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霞が関の過労官僚、異世界で【月詠の窯】に目覚めスローライフ!…のはずが、最強ワイルド軍医とヤンキー聖獣に囲まれ溺愛村おこし!?  作者: 月神世一


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忍び寄る影。平和な夕暮れと、不気味な訪問者

忍び寄る影。平和な夕暮れと、不気味な訪問者

「スイッチ、入れますね!」

「おうっ! 頼むで、輝夜ちゃん!」

 輝夜がポータブル給水ポンプの電源ボタンを押し込むと、ブルルルッという低い駆動音と共に、太い工業用耐圧ホースから勢いよく水が噴き出した。

 ドバババッ! と音を立てて水路に流れ込んだのは、輝夜が【月詠の窯】で創り出した巨大な浄化の器を通った、澄み切った魔力水だ。

「うおおっ、すげぇ水圧だ! これなら畑の隅々まで一瞬で水が回るぞ!」

「しかも、ただの水じゃねぇ! 輝夜ちゃんのおかげで、土がどんどん元気になっていくのが分かる!」

 泥沼源蔵をはじめとする農家のおじさんたちが、水路を流れる澄んだ水を見て歓声を上げた。

 これまでは、川や井戸から手作業で水を汲み、重い桶を運んで畑に撒くという重労働を強いられていた。それが今では、ポンプとホースのおかげで、蛇口をひねるような感覚で極上の水を供給できるようになったのだ。

「ふふっ、良かったです。これでポポロ・タバコも月見大根も、もっと美味しく育ちますね」

 輝夜はホースの先端から流れる水を見つめながら、ホッと胸を撫で下ろした。

 そして、そのホースの黒く分厚いゴムの手触りに、そっと指を這わせる。

(優太さん……これを用意するために、あんなに泥だらけになって……)

 霞が関の官舎で、夜中に一人、小さなプランターのハーブに水をやっていた頃の孤独な記憶が蘇る。

 あの時は、誰も輝夜の頑張りを見てはくれなかった。効率よく完璧な書類を作れば作るほど、次から次へと新しい仕事を押し付けられるだけだった。

 けれど、今は違う。

 輝夜のちょっとした呟きを拾い上げ、彼女が快適に作業できるようにと、泥水に塗れてポイントを稼ぎ、最強のインフラを用意してくれた不器用で優しい男がいる。

『俺のポイントは、こういう時のためにあるんだ。……使えるものは、俺でも何でも使え』

 照れ隠しにタバコを吹かしながら、そっぽを向いて言った優太の横顔を思い出し、輝夜の胸の奥がじんわりと温かくなる。

「輝夜ちゃん、本当にありがとうな! 俺たち、ますます気合い入れて最高の作物作ってみせるからよ!」

「はいっ、楽しみにしていますね!」

 笑顔で村人たちを見送る輝夜。

 村は今、かつてないほどの活気と温かな絆に包まれていた。

 だが、光が強ければ強いほど、そこに落ちる『影』もまた濃くなるということを、まだ輝夜は知らなかった。

     *

 夕暮れ時。

 村人たちがそれぞれの家や宿に帰り、畑の周辺は静寂に包まれていた。

 輝夜は一人、陽薬草の畝の横で、土いじりを続けていた。優太のために【月詠の窯】で新しい器を創ろうとしていたのだ。

(毎日使ってくれるから、少し手になじむように、縁を滑らかにして……)

 優太は夕方から、ルナミス帝国軍への定時連絡と野営地の巡回任務があると言って、少しだけ席を外していた。

『暗くなる前に絶対宿に戻れよ。後で月見亭に迎えに行くからな』

 そう念を押されていたため、輝夜もこの器が完成したら、すぐに切り上げて宿に戻るつもりだった。

 ――カサッ。

 ふいに、背後の茂みで葉の擦れる音がした。

「……源蔵さんですか? 忘れ物……」

 輝夜が振り返り、声をかけた瞬間。

 ぞわり、と。

 全身の産毛が逆立ち、本能が警鐘を鳴らすような悪寒が輝夜の背筋を駆け上がった。

 そこに立っていたのは、源蔵ではなかった。

 ボロボロの灰色のフードを深く被った、長身の男。

 ポポロ村は緩衝地帯であり、色々な種族の旅人や訳ありの流浪人が訪れる。しかし、その男が纏う空気は、明らかに『生者』のそれとは異なっていた。

「あの……どちら様、ですか……?」

 輝夜が一歩後ずさる。

 男は答えない。ただ、フードの奥から、ギラリと無機質な赤い眼光が覗いた。

 その正体は、死蟲王サルバロスが天魔窟から放った機械兵器の潜入工作員――『人型死蟲機ネクロミミック』だった。

 ポポロ村はドンガン帝国の技術による絶対防衛結界で守られている。しかし、完全に魔力を遮断した状態のネクロミミックが、流浪の商人に擬態し、正規の関所から堂々と村に入り込んでいたのだ。

『……見ツケタゾ。特異ナ魔力ヲ放ツ、浄化ノ器ヲ生ミ出ス女』

 男の口から、金属が軋むような、不気味な合成音声が漏れた。

 それと同時に、男の周囲から、ツンとするオイルの匂いと、腐敗臭が混ざったような酷い死臭が漂い始める。

「な……っ!?」

 輝夜は目を見開いた。

 男の右腕が、カシャカシャという無機質な駆動音と共に、人間の皮膚を突き破って、鋭く巨大な『蟷螂カマキリの鎌』のような金属刃へと変形したのだ。

『我ガ王ノ復活ノタメ、ソノ純粋ナ魂ヲ、ニエトシテ頂コウ』

 ジリ、とネクロミミックが一歩を踏み出す。

 関節の動きが、人間とは決定的に違う。カク、カク、とコマ送りのような奇妙な動きでありながら、逃げる隙を与えない圧倒的な威圧感があった。

(逃げなきゃ……! 声を出して、誰かを……!)

 頭では分かっていても、極限の恐怖と、得体の知れない死の気配にあてられ、輝夜の足は石のように固まって動かなかった。喉がヒュッと鳴るだけで、叫び声が出ない。

 霞が関でのどんな激務も、徹夜の資料作成も、こんな暴力的な死の恐怖には直結していなかった。

『死ネ』

 無機質な宣告と共に、ネクロミミックが地面を蹴った。

 鈍い銀色の鎌が、夕日を反射してギラリと光り、輝夜の華奢な首筋をめがけて振り下ろされる。

(……優太さん……っ!)

 輝夜はギュッと両目を閉じ、咄嗟に両手で頭を庇った。

 刃が迫る。

 その軌道が、輝夜の肌に触れる寸前――。

 ――ガキィィィィンッ!!!!

 耳をつんざくような激しい金属の衝突音が、静かな夕暮れの畑に鳴り響いた。

「……あ、れ……?」

 痛みは、なかった。

 恐る恐る輝夜が目を開けると。

 そこには、輝夜とネクロミミックの間に割り込み、巨大な金属の鎌を、たった一振りの『薙刀』で受け止めている、広く逞しい背中があった。

「……優太、さん……!」

 グレーのパーカーの背中。

 輝夜が異世界で初めて見た、圧倒的な安心感を放つあの背中だった。

「チッ……。だから暗くなる前に宿に戻れっつっただろうが、馬鹿野郎」

 優太はワスプ薙刀の柄を両手で強く握り込み、ネクロミミックの刃をギリギリと押し返しながら、肩越しに輝夜を一瞥した。

 その瞳は、普段の少し気怠げなものではない。

 自らの『大切な女』を傷つけようとした者に対する、冷酷で、静かなる殺意に満ちていた。

「俺の女に、その汚ぇ刃ァ向けてんじゃねぇぞ、ガラクタが」

 優太の低くドスの効いた声が、殺気となって周囲の空気をビリビリと震わせる。

『ギ、ギギッ……!? 何者ダ、貴様……ッ!』

「通りすがりの、ただの軍医だ」

 スパダリ軍医が、ついにその圧倒的な戦闘力と保護欲を剥き出しにする。

 夕日に染まるポポロ村の畑を舞台に、泥臭くも最高に頼りになる男の、容赦のない防衛戦が今、幕を開けようとしていた。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

ついに不気味な敵、死蟲機ネクロミミックが輝夜に襲いかかりました!

しかし、読者の皆様、ご安心ください!

私たちのスパダリ軍医・優太は、絶体絶命のピンチに必ず間に合います!

「俺の女に汚え刃向けてんじゃねぇ」

この台詞、ついに優太の独占欲と溺愛が完全に爆発しましたね……!

次回は、優太のCQC&薙刀アクション、そしてあの男(リキ兄貴)も乱入して、敵を容赦なくボコボコにするスカッと爽快な展開です!

「優太、最高のタイミングで来た!!」

「『俺の女』発言にキュン死にした……!」

「次回、敵を完膚なきまでに叩きのめしてほしい!」

と、少しでも胸を熱くしていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】をポチポチッと押して【★★★★★】にし、応援していただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!!

皆様からの「星(評価)」と「ブックマーク」が、優太の薙刀の威力を跳ね上げる最強のバフになります!

(本当に数秒で終わりますので、どうかポチッとご協力をお願いいたします…!)

次回『第11話:襲撃と、無双禁止のハイブリッド・メディック』

軍医の本気のアクションと、輝夜のバフ飯サポートが光ります! 明日も更新しますので、絶対にお見逃しなく!

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