表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霞が関の過労官僚、異世界で【月詠の窯】に目覚めスローライフ!…のはずが、最強ワイルド軍医とヤンキー聖獣に囲まれ溺愛村おこし!?  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/9

特産品ブランド化計画と、スパダリ軍医の過保護な『善行ポイント』稼ぎ

特産品ブランド化計画と、スパダリ軍医の過保護な『善行ポイント』稼ぎ

「――というわけで。私が創った【月詠の窯】の器を村の貯水槽に沈め、浄化された水を農業用水として利用します。これで、ポポロ・タバコと月見大根の品質は劇的に向上するはずです」

 ポポロ村の集会所。

 輝夜は手書きの資料を広げながら、村の代表者たちに向けて『特産品ブランド化計画』のプレゼンテーションを行っていた。

 集まっているのは、毒舌教師のネギオや、すっかり丸くなった泥沼源蔵をはじめとするベテラン農家たちだ。

「なるほど」

 ポポロシガーを吹かしながら、ネギオが伊達メガネを中指で押し上げる。

「水質改善による魔力価の底上げですか。確かに、あなたの器の浄化作用があれば、特産品の価値はさらに跳ね上がるでしょう。ドンガン帝国との交渉材料としても申し分ありません」

「へへっ、輝夜ちゃんのおかげで、うちの畑も毎日絶好調だからな! やろうぜ、みんな!」

 源蔵の力強い賛同に、他の農家たちも「おうっ!」と拳を突き上げた。

「ただ、一つだけ問題があります」

 輝夜は少し困ったように眉を下げた。

「浄化された水を畑の隅々まで効率よく行き渡らせるには、今の水路だけでは不十分です。地球にあるような『農業用ホース』や『ポンプ』があれば、農家の皆さんの負担も大幅に減るのですが……」

 異世界のアナステシアには、魔法はあっても、便利な現代農業のインフラは揃っていない。

 輝夜の【月詠の窯】はあくまで土を陶器に変えるスキルであり、ゴム製のホースや機械を創り出すことはできなかった。

「まあ、そこは俺たちで水汲みを頑張るしかねぇな!」

「そうですね。少し時間はかかりますが、みんなで協力してやりましょう!」

 村人たちと前向きに話し合いを終え、輝夜はホッと息をついた。

 その集会所の窓の外。

 腕を組んで壁によりかかり、会話を密かに聞いていた優太は、咥えていたアメスピを携帯灰皿に落とした。

(……農業用ホースに、ポンプ、か)

 優太は自身の腕時計――G-SHOCKの盤面を確認する。

 彼には、地球のあらゆる品物を取り寄せることができるユニークスキル【地球ショッピング】がある。

 しかし、それを使うためには、打算のない人助けなどで得られる『善行ポイント(P)』を消費してガチャを引かなければならない。

 金曜カレーや、輝夜のための日本の調味料を出したことで、優太のポイント残高はすっかり心もとなくなっていた。

「……しゃあねぇ。ひとっ走り、稼いでくるか」

 優太はパーカーの袖を肘までまくり上げると、誰にも見つからないように、集会所の裏手から姿を消した。

     *

 数時間後。

 ポポロ村の郊外にある森の中で、異様な光景が繰り広げられていた。

「シッ……!」

 短い呼気と共に、優太のワスプ薙刀が銀閃を描く。

 ギャァァッ! という悲鳴と共に、村の畑を荒らそうとしていた低級魔獣・ゴブリンが次々と吹き飛ばされていく。

 優太の動きは、普段の冷静沈着な戦術医療とは全く違う。とにかく手当たり次第に、周囲の害獣を片っ端から殲滅する『ポイント稼ぎ(ファーミング)』の動きだった。

『ピコン。害獣退治(軽度)……100P獲得』

『ピコン。害獣退治(軽度)……100P獲得』

 脳内に響くシステム音を聞きながら、優太は額の汗を拭った。

「ちぃっ、ゴブリンじゃ大したポイントにならねぇな……」

 実はここに来る前、優太は宿屋『月見亭』の厨房で、尋常ではないスピードで皿洗いをこなし(1P獲得×100枚)、村のあぜ道の溝掃除を一人で完璧に終わらせ(50P獲得×10箇所)、さらには荷物を運ぶおばあちゃんを猛ダッシュで手伝って(100P獲得)きていた。

 ルナミス帝国軍の誇るハイブリッド軍医が、愛する女(予定)の農作業を楽にするためだけに、限界まで身体を酷使して雑用と魔獣狩りに精を出しているのだ。

「オゥオゥオゥ! 優太、お前こんな森の奥で何しとんねん!」

 ふいに空間が割れ、金ジャージにサンダル姿のリキ兄貴が次元跳躍で現れた。

 泥だらけになってゴブリンを狩り続ける優太を見て、リキはポカンと口を開ける。

「お前、非番やろ? なんでそんな血眼になってゴブリンの群れ追いかけ回しとるんや。しかも、なんか溝掃除のヘドロの匂いもするで?」

「うるせぇ。今忙しいんだよ、話しかけんな」

「……あー、なるほど。さてはアレか? 姐さんが『ホースが欲しいなぁ』とか言うとったから、お前のそのポイントで出したろと思っとるんやな?」

 ニヤニヤと笑うリキの言葉に、優太の肩がピクリと揺れた。

「ヒュー! 愛の力は偉大やなぁ! あのクールな軍医殿が、姐さんのために泥水すすってポイント稼ぎとは! よっ、スパダリ! 過保護!」

「……リキ。お前、一回三枚におろしてやろうか?」

「おっかない顔すんなや! ワイも姐さんのためなら一肌脱いだるわ! ほら、向こうにロックバイソンの逸れ魔獣がおったで! あれ倒したらボーナスポイント入るんちゃうか!?」

「マジか。……行くぞ」

「切り替え早っ!」

 かくして、軍医とヤンキー聖獣の、輝夜のためのオーバーキルなポイント稼ぎが幕を開けた。

     *

 夕方。

 村の畑で陽薬草の苗をチェックしていた輝夜のもとに、優太が戻ってきた。

「輝夜」

「あ、優太さん! どこに行ってたんですか? ずっと探して……えっ、どうしたんですかその泥だらけの服! 擦り傷まで!」

 輝夜は慌てて駆け寄った。

 優太のグレーのパーカーは泥とゴブリンの返り血で汚れ、頬には小さな擦り傷ができていた。

「いや、ちょっと村の周りをパトロールしてな。……それより、これを使え」

 優太がドサッ、と地面に置いたのは。

 太くて頑丈な『工業用耐圧ホース』の束と、魔石を動力にして動くように改造された地球製の『高性能ポータブル給水ポンプ』だった。

 それらは、優太が必死で稼いだポイントと、輝夜を想う純粋な『運命力(レア度上昇補正)』が引き起こした、100Pガチャの超大当たりアイテムだった。

「これ……地球のホースと、ポンプ!? どうして……」

「俺のスキルで出た。あんた、昼間にこれが欲しいって言ってただろ」

 優太はタバコを取り出しながら、何でもないことのように言い放つ。

「俺のポイントは、こういう時のためにあるんだ。あんたは村の頭脳なんだから、水汲みみたいな重労働で体力削るな。……使えるものは、俺でも何でも使え」

「優太、さん……」

 輝夜の胸が、ぎゅっと締め付けられた。

 自分が集会所でこぼした些細な悩みを、彼は裏で聞いていてくれたのだ。

 そして、この泥だらけの服。

 スキルを使うために、どれだけ彼が裏で奔走してくれたのか、霞が関で死ぬほど働いてきた輝夜には痛いほどよくわかった。

「……ふふっ。優太さんって、本当に不器用で、優しすぎます」

 輝夜は自分のポケットから清潔なハンカチを取り出すと、背伸びをして、優太の頬についた泥と血の汚れをそっと拭った。

「っ……」

 至近距離から香る、輝夜の石鹸のような清潔な匂いに、優太の身体が硬直する。

「ありがとうございます。優太さんが私を助けてくれるから、私はこの村で頑張れるんです。……大切に、使わせてもらいますね」

 輝夜が満面の笑みを向けると、優太は真っ赤になった顔を誤魔化すように、ふいっとそっぽを向いた。

「あー……。おう、さっさと水路完成させろよ。……今日の晩飯は、ちょっと豪華に頼むわ」

「はいっ! 腕によりをかけて作りますね!」

 照れ隠しで逃げるように歩き出す優太の背中を見つめながら、輝夜は手の中のホースをぎゅっと抱きしめた。

 彼の無骨な優しさが、たまらなく嬉しかった。

 二人の間に、確かな温かい絆が結ばれていく。

 しかし、その光り輝く平和な村の片隅で。

 彼らの活躍を忌々しげに見つめる、不気味な影――死蟲王サルバロスの手先である『死蟲機ネクロミミック』が、音もなく潜入し始めていることに、まだ誰も気づいていなかった。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

クールで最強なスパダリ軍医が、愛する女の「ホースが欲しい」という一言のために、皿洗いやドブ掃除、ゴブリン狩りに精を出すギャップ回でした!(笑)

リキ兄貴に「過保護!」と突っ込まれながらも、輝夜のために泥だらけになる優太の愛情、伝わりましたでしょうか?

泥を拭ってあげる輝夜と、真っ赤になって照れ隠しする優太の尊い距離感に、

「優太、不器用すぎるけど最高!」

「リキ兄貴のツッコミが的確w」

「二人の絆が尊い……!」

と少しでも胸キュン&ニヤニヤしていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】をポチポチッと押して【★★★★★】にし、応援していただけると、作者の執筆スピードが限界突破します!!

皆様からの「星(評価)」と「ブックマーク」が、優太のガチャ運(運命力)をさらに引き上げる最強のパワーになります!

(本当に数秒で終わりますので、どうかポチッとご協力をお願いいたします…!)

次回『第10話:忍び寄る影。不気味な死蟲機ネクロミミックの暗躍』

ついに村の平和を脅かす敵が侵入!? しかし、輝夜には最強の男たちがついています! お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ