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蘇術少女のリヴォルト  作者: 天木蘭
断章1.光
15/60

1-3

「こいつがブラムだ」

「お前がエフィーか。アヴァの知り合いなんだな」


 開口一番、ブラムはそう訊ねる。エフィーは不快に思うこともなく、頷きを返した。


「アヴァは無事なのか?」

「わからない。アタシが、地上へ連れて来られるまでは無事だった。アンタのことも心配してたよ」

「そうか。まあ、お前が本当のことを言っているかわからないし、今も無事なのかはわからなくて当然か」


 その口振りは、エフィーの(しゃく)に触った。


「アタシは、本当のことしか言わないよ。アヴァは金髪で目は綺麗な青。歳は12だ」

「そんなの、無理やり聞いてもわかることだ。それに、お前の言葉が真実でも嘘でも関係ない。俺が知りたいのは、反乱の仲間を集めるっていう意志だけだ。あとは、終わってからいくらでも知ることができる」


 エフィーは生意気な少年だと思ってしまったが、それも仕方のないことだと思い直した。この空間で人格が()れずにいられる者など、滅多にいない。彼もまた、犠牲者の一人で仲間だ。


「わかった。なら、アヴァの無事は自分の目で確認しなよ。反乱の意志も本物だ。だから、アンタにはその仲間集めをしてもらいたい。ディルじゃ、疑われてそれも難しいからね」

「そんなの簡単だ。俺の身の回りに、不満を持ってるやつなんていくらでもいる」

「そうでないと困るわ。もしも失敗して、敵側に知られそうならそのときは」


 エフィーは、ディルに目配せする。受け取った方も、内容を理解して頷いた。


「そうならないよう努力する。それで、反乱を起こすまではいい。だが、その計画とその後はどうするんだ?」

「計画は、人が増えてからでも遅くないよ。先に考えてしまうと、それを教えろと言われたときに断れないし、教えた相手が敵だったら最悪だ」

「確かにそうかもしれない。なら、その後は?」

「その後は、みんな自由だ」

「本当に、それを望んでいるのか?」


 エフィーには、ブラムの言っていることが理解できなかった。

 望んでいるかだって? そんなの当然だ。この閉ざされた世界から逃れることが、正しくないわけがない。


「アンタは、自由になりたくないの?」

「なりたいさ。俺は、妹を守らないといけない。もう、それしかないんだ」

「なら、さっきの質問は必要だった? アンタもアタシも、自由を望んでいる」

「いや、わからないならいい。俺は、仲間を集める。それだけでいいだろ」


 なにか、自分にも見えていないものがあるのだろうか。ブラムの言い方は、それを含んでいるように感じられた。しかし、大したことではないのだろう。重要なことであれば、もっと深く言及してくるはずだ。


「ええ、それでいいわ。任せるから、しくじらないでよ」

「言われなくても、そのつもりだ」


 ブラムは無愛想(ぶあいそ)にそう言って、その場を立ち去っていった。


「ディル。あの子、予想と全然違ったわ。アヴァのお兄さんなら、もっと仲良くできるかと思ってたのに」

「仕方ないさ。まだ若いし、この環境だ」


 そうだ。仕方ない。わかっている。だからこそ、もしもなにか助けになれることがあれば、そのときは手を伸ばそう。


「ディルも、彼の気をあまり逆撫でないように、気をつけてね」

「そんなことしないさ。他のことで精一杯だからな」

「精一杯だから心配なのよ。気を配れる余裕を持っているかどうかがね」

「そんなことで、心配を掛ける気はないさ。お前だっていっぱいいっぱいのはずだ。少しでも休んで、気晴らしして、耐えてくれよ」

「アタシは、まだ大丈夫よ。辛くなったら、頼らせてもらうから」

「俺でよければ、好きにしてくれ」


 ディルが心の許せる相手になるというのが、エフィーには不思議なことに思われた。そこで、彼女は一つだけ気になることを思い出した。


「そうだ。ねえ、アタシの両親ってどうなったかわかる?」

「……急だな。いや、むしろこれまで尋ねて来なかったのがおかしいくらいか」

「余裕がなかったから。ディルのおかげで、ようやくって感じね。でも、その様子だと、あまりいいことはないのかしら」

「ああ。お前の親父さんは、最初にこの環境へ抵抗した男だった。そして、襲われた」

「……死んだのね」

「いいや、それはわからない。逃げたからだ。それも、奥さんと一緒にな。その後、死体は確認していないから、もしかしたら、まだ生きているかもしれない。

「そう。あまり、期待はしないでおくわ」


 襲われて逃げたというなら、備えも十分なものではなかったはずだ。

 本当は誰かに殺されて、ディルがそれを知らないだけかもしれないし、どこかでのたれ死んでいるかもしれない。他人を信じ過ぎた善人の最期としては、とても報われないものだ。だから、言ったのに。やっぱり、お父さんもお母さんもバカだ。


「……なにしてるのよ」

「こうした方がいいかと思ったんだよ。嫌なら辞めるさ」

「……別に、嫌じゃない」


 溢れ出す想いを止められず、エフィーはディルの腕の中で、子どものように泣きじゃくり続けた。

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