58話 同じクラス
ナターシャは何組だったけな。下ろしてほしくて腕を叩く。
「イーギス様、私は別のクラス……」
「何言ってんの?ナターシャもここだよ」
イーギス様は教室に入って、教卓の上のバッジを手に取る。
「同じクラスって……」
そんな、まさか……。そう思ってると私は後ろの席まで運ばれて、見ると机にナターシャ・ユーリティスと彫られていた。後ろの席はランパードだ。イーギス様は隣の席で、その後ろには王子がいる。
「ええ!?」
ゲームの世界とは違う?ナターシャは別のクラスだったはずだけど。私以外の登場人物も全員同じクラスだったから、主要キャラ全員揃ってることになる。
「イーギス様、何かしたんですか?」
「何もしてないよ。家柄的にナターシャがAクラスなの普通だよね。むしろ何でフローラがいるのか不思議なんだけど」
イーギス様がドアの方を見るとおろおろとしてるフローラがセリと一緒に入ってくる。それはこの世界のヒロインだからとしか言いようがない。私は深呼吸をしてから、立ち上がってフローラに近づいた。
「あら、何であなたがこのクラスにいるのかしら?場違いじゃなくて?」
「ナターシャ様……?」
フローラに嫌味を浴びせると、セリがフローラを庇う。
「何だよ。学園側の決めたことだろ」
「でもこのクラスには上流貴族しかいないの。あなたたちクラス間違ってるんじゃない?」
この学校に来る前から決めていた。ゲームが開始したら、私のやるべきことをやろうって。イーギス様に嫌われるのも、イーギス様ルートにフローラを進ませるのも全部私の役目。
「ナターシャ、どうしたの?フローラは親友でしょ?」
「あらやだ。今まではわざと優しくしてあげてたのよ。今更仲良くする理由なんてないわ」
イーギス様も不思議そうに私に近づいて、肩に手を乗せる。私はその手を振り払った。
「とにかく、自分の立場をわきまえて生活しなさい」
「うるせーよ」
セリが今にも私に掴みかかりそうになってるのをイーギス様が止める。心苦しいけど、私はまだ諦めてないのだ。だって、それがイーギス様の幸せだって信じてたから。
「何なんだよ、お前今まで演技だったのかよ」
「ええ、可哀想な庶民に慈悲をかけてあげただけですわ」
ああ、こんなこと言いたくない。けどイーギス様ルートはほとんどがナターシャのいじめでイベントが作られていたから。
「ナターシャ様、何かしてしまったのならごめんなさい。でも私はナターシャ様と仲良くしていたいですわ」
「諦めることね。もう子供のごっこ遊びは終わりよ」
私は手を振りかぶってフローラを叩こうとした。セリが間に入り、イーギス様が私の手首を掴む。
「ナターシャ、席に戻ろう」
「うるさいですわね」
私はイーギス様の手を振り払って席に戻る。
「学園で問題起こさないでくださいよ」
「だったらフローラをこのクラスに入れるんじゃないわよ」
小言を言うランパードに文句を言うと、ランパードは眼鏡を直す。
「私の力ではどうにも」
「王子が言えば済むことじゃないの?」
王子を見ると、王子は長い前髪の隙間から私を見つめた。
「フローラは悪くない」
「そんなことしても王子とフローラは結ばれませんよ」
ナターシャ様!とランパードが私を咎める。ゲームの中じゃ理由は明らかにされてないけど、今回フローラが同じクラスなのはきっと王子が口添えしたからだ。その事実に私は焦りが芽生えていた。




