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57話 ゲーム開始


 馬車を降りると黄色い悲鳴が聞こえる。


「きゃー、来ましたわ!」

「美しいですわね」


 そんな話を得意げに聞きながら、イーギス様から少し離れる。いくらナターシャが美少女だからといって、私がイケメンの隣を歩くのは居た堪れないのだ。そんな私に気づいて、イーギス様が私の腕を引っ張る。最初は少し距離があったのに、今はイーギス様の腕を掴む形になっていて恥ずかしい。


「レオンハルト王子と一緒に通えるなんて幸せですわね」

 

 あれ?イーギス様じゃないの?後ろを向くと、王子とランパードが歩いてきていて眩しさに眩暈がした。イーギス様も日の光に当たると綺麗だったけど、王子の金髪は別格だった。


「相変わらずライバルは手強いですわね」


 ぐぬぬ、と私は拳を握って王子を見る。そんな私にイーギス様は苦笑した。

 

「王子はナターシャに興味ないと思うよ」


 私が、じゃありませんもの。そんなイーギス様を無視して、私は前に出て王子の前で転んでみせる。


「ナターシャ!」

「ナターシャ様、何の真似です?」


 駆け寄るイーギス様と呆れるランパード。ちらっと後ろを見るとフローラが歩いていて、ガッツポーズをした。イベントを一つ阻止できたから。


「すみません、この靴慣れなくて」

「じゃあ俺に掴まってなよ」


 王子に話しかけると、イーギス様が私をお姫様抱っこする。


「イ、イーギス様!?」


 王子と話してる最中だったのに、全然王子と話せない。てか、そんなことしたら私の心臓が壊れちゃう!私を抱き上げたイーギス様に女子の黄色い歓声が上がる。慌てて王子を見るともうとっくに校舎の方に歩いていて何故かフローラの隣を歩いていた。1個邪魔するだけじゃ足りないのか……。


「王子!また話しましょうね!」

「ナターシャうるさい」


 王子の背中に向かって叫ぶと、イーギス様が呟く。私はイーギス様の方を向いて抗議した。


「イーギス様!せっかく王子のイベントを邪魔しようとしてるのに」

「またゲームの話?」


 怒る私に呆れるイーギス様。


「はい、フローラは攻略対象とのいくつものイベントをこなして攻略対象と恋人になっていくんです。だからイベントを阻止しないと」

「庶民のフローラが王子や俺と恋人になるなんて想像もつかないんだけど」


 想像つかなくても、そういう話なんだからありえるんですって。だけど、イーギス様は気にせず私をお姫様抱っこしたまま校舎へと歩く。


「イーギス様、降ろしてください!」

「嫌だ。また転んだら怪我するかもしれないし」


 あれはイベントだと説明したでしょう?じたばた暴れてみるけど抑え込まれて、私はおとなしくイーギス様に抱えられる。


「イーギス様、クラス表は?」

「クラス表って何?

 

 クラス表はどこに貼ってあるんだろうと探してみるけど、イーギス様はすたすたと教室まで歩く。


「どこのクラスか名前が貼り出されてる紙ですよ」

「そんなダサい文化があるの?クラスならもうわかってるし」


 そういえば、ゲームでも最初からフローラのクラスはわかっていたな……。なんて思ってると、イーギス様は教室の中に入って行った。


「ここって……」


 1ーA、そこはイーギス様や王子、フローラのクラスの教室だった。

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