表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/55

51話 幸せの定義


 イーギス様に邪魔されながらも、王子とフローラの交流を阻止していると王子が私を見て微笑む。


「イーギスは相当君のことが好きなんだな」

「……いえ。イーギス様はフローラと結ばれるんです」


 ランパードと買い物してるフローラを見ながら言うと、後ろに引っ付いてるイーギス様が私の口を塞ぐ。


「またそんなこと言って。王子もこう言ってるじゃん」

「今の時代、恋愛結婚できることは幸せなことだ。そうだろう?イーギス」


 寡黙な王子が珍しく喋ってる。その言葉に私は俯いた。「わかってる」とイーギス様は頷く。私たちの関係だって親が決めたものだ。それなのに、イーギス様は私のどこがそんなに良く見えてるのだろうか。


「王子も、フローラが気になってるんですか?」

「秘密だ」


 王子とフローラはほぼ一目惚れに近い。出会ってしまったら私はそれを阻止できないのかもしれない。王子とランパードと別れ、フローラとイーギス様と3人で馬車に乗る。イーギス様の肩にもたれかかりながら、私は窓の外を見ていた。


「フローラは、王子のことが好き?」

「えっ、いやそんな……恐れ多い」


 顔を赤らめて否定するフローラに、もうイーギス様ルートはないんだと悟る。目を伏せる私の手の甲をイーギス様が優しく撫でた。


「今日はありがとうございました」


 フローラを送って、イーギス様と2人きりになる。


「ナターシャ、また悩んでるの?」

「……イーギス様は本当にいいんですか?もうフローラと結ばれることはきっと、ないんですよ」


 私は諦めきれない。最推しが、ヒロインと幸せになれないだなんて。イーギス様は優しく私の肩をトントンと叩く。


「俺はナターシャさえいれば何も要らないよ」

「そんな……。小さい時からずっと一緒にいたから、錯覚してるだけです。私をお姉ちゃんだと思い込んでるだっ」


 私が言葉を言い終わる前に、イーギス様が私の口を塞ぐ。甘いはずのキスが、私の涙でしょっぱかった。


「俺は間違わないよ。ナターシャを愛してるんだ」


 こんなに言われて嬉しくない人なんていない。嬉しいんだ、嬉しいんだけどまだ心のブレーキがかかってる。イーギス様はフローラと一緒なら幸せになれると信じて疑わなかったから。


「私は、そうは思えません」


 私のためにも、イーギス様のためにも折れない方がいい。私はイーギス様の胸を押し返した。


「ナターシャ……」


 イーギス様の手が離れる。


「俺のこと、嫌い?」

「嫌いじゃないです。でも、恋愛的な意味じゃない」


 推しにこんなこと言うのは心苦しいけど、はっきりさせるべきだと思った。そっか、とイーギス様が立ち上がって私の正面に座る。馬車の中で、私もイーギス様も何も言わなかった。イーギス様と一緒にいて、初めて苦しいと思った。推しをフることになるなんて、なんて贅沢で想像もしていなかった。イーギス様がフローラと結ばれないなら、誰となら幸せになれるんだろう。フローラ以外の女の子なんて、ゲームではほとんど出てこないから。私は軽くイーギス様に挨拶して馬車を降りて、ふらふらと自室に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ