50話 王子ルート
前を王子とフローラが歩いて、その後ろをランパードが。最後尾をイーギス様と私が歩く。フローラは庶民だと言うのに、レオンハルトはゲームの設定通り差別をしない。ランパードも最初は小言を言っていたが、普通に接する王子に諦めた様子だった。
「イーギス様、いいんですか?フローラ、王子に取られちゃいますよ」
「フローラが王子とどうにかなるわけないだろ?妄想しすぎ」
呆れたように言うイーギス様の背中を叩く。
「王子は攻略対象でメインルートです。うかうかしてられませんよ!」
「だからナターシャにしか興味ないって」
イーギス様が私の手を繋いで、ふふっと笑う。呑気すぎる……。
「イーギス様は幸せになりたくないんですか?」
「ナターシャと幸せになるよ」
イーギス様が私の手を持ち上げて、手の甲にキスをする。再会してからというものイーギス様の距離が近くて、戸惑う。私が絆されるわけにはいかないのに……。
「そんな難しい顔しないで」
イーギス様が繋いでない方の手で私の頭を撫でる。
「ナターシャも、自分の幸せを望んでいいんだよ」
「私の幸せ……、はイーギス様が幸せになることですわ!」
最初から一貫してブレない。私の言葉にイーギス様は苦笑する。私はイーギス様の手を引っ張って、前を歩く王子とフローラに合流した。
「王子、あれ食べませんか?」
私は屋台を指差して、王子に言う。
「貴様、王子は食べ歩きなどしないのだ」
「でも王子、いちご飴気にいると思いますよ」
ゲームのイベントでフローラが王子と食べ歩きするシーンがある。最初は戸惑う王子だったけど、一口齧った瞬間気に入って他のものもあれこれ買うようになった。
「たまには息抜き、必要じゃありませんか?」
王子ルートを潰すには、王子のイベントを私がこなせばいいと思う。頷いた王子に、私はいちご飴を人数分買ってきた。ゲームの世界だからご都合主義に練乳がかかってるとっても美味しいやつだ。
「はいどうぞ」
みんなに配り終えると、まずイーギス様がぱくっといちごを食べた。
「甘、」
そんなイーギス様を見て、王子やフローラもいちご飴を口にする。
「美味しい……」
「ああ」
口を押さえて王子を見上げるフローラに、王子は頷いた。私は2人の間に割って入る。
「美味しいですよね!他のも食べませんか?王都だからレベル高いですよ!」
王子の手を引っ張って先を歩くと、ランパードが後ろから文句を言う。気にせず王子を連れ回してたら、後ろから抱きしめられた。
「ナターシャはこっち」
「イーギス様」
王子と手を離されて、イーギス様が私の手を掴む。私は振り向いて、イーギス様の頬をつまんだ。
「イーギス様、やる気あるんですか?一体誰の幸せのために」
「ナターシャが勝手に言ってるだけだろ?」
こてんと可愛く首を傾げて、イーギス様は言う。こうしてる間にも王子とフローラは会話を重ねてるというのに……。
「ナターシャの、ちょっとちょうだい」
イーギス様は気にせず私の揚げ餅に齧り付いた。ゲームでは終盤まで作った笑顔しか見られなかったから、今心から笑えてるイーギス様を見られるのは嬉しい。でもこの幸せがいつまで続くか、わからないんだ。だからこそ、イーギス様はフローラと幸せになってほしい。そう思う私は間違ってるのだろうか。




