49話 王子様
王都について、馬車を降りる。今日はショッピングをするのが目的だった。目の前には色んな出店が並んでいて、ゲームで見た光景に目を輝かせる。
「イーギス様、あのお店なんかいいんじゃないですか?プレゼント」
私はイーギス様に耳打ちをする。イーギス様はくすりと笑った。
「何か買ってほしいものあるの?」
「フローラにですよ。髪飾りとかどうですか?」
イーギス様は私の手を掴んで出店の方に行く。フローラも私の隣をついてきた。イーギス様の隣には行かないか……。
「可愛い」
「そうですね」
私は手に取ってフローラに当ててみる。
「フローラは何でも似合いそうだね」
「いえそんな……。ナターシャ様こそ」
フローラがはにかんで否定する。イーギス様は私の後ろから手を回して、イヤリングを手に取った。
「ナターシャ、じっとしてて」
「私のはいいですから」
せっかくフローラと仲を深められる機会なのに、イーギス様は私ばっかり。耳にかかる息が近さを感じさせてドキドキする。イーギス様は私にイヤリングをつけ終わった後に、くるっと私を振り向かせた。
「うん、似合ってる」
これください、と店員さんに言ってイーギス様がお金を払う。イーギス様が私に懐くのも理解できるけど、距離近くありませんかね……?
「イーギス様……、恥ずかしいです」
「もっと恥ずかしがればいい」
ちゅっと耳にキスをして、イーギス様が笑う。フローラを見ると、顔を赤らめていた。私はイーギス様を引き離す。
「近すぎますって!」
「いいだろ?俺とナターシャはフィアンセなんだから」
恥ずかしがる素振りも見せず、平然とイーギス様は言う。私はフローラの後ろに回り込んだ。
「おじさん、これもください」
「はいよ」
イーギス様はフローラに何も買わなそうだから、私が髪飾りを買ってあげる。
「はい、フローラ。プレゼント」
「あ、ありがとうございます」
フローラが目を見張って、ゆっくりと受け取る。袋から金貨を出そうとしてたけど、私は断った。
「ほんとはイーギス様がやるんですからね」
「俺はナターシャにしか興味ないよ」
イーギス様は私を姉だと思ってるのかもしれないけど、姉とはこんな距離近くない。それをイーギス様にもわかってもらわなきゃ。
「あっ」
フローラがブレスレットを落としてしゃがむ。その後ろに見えた人にあ、と私は声に出した。その人はブレスレットを拾い上げてフローラに渡す。
「ありがとうございます」
レオンハルト王子と従者のランパード。まさかここで出会うとは……。私はフローラの前に出て、王子に話しかける。
「奇遇ですね、王子も買い物に来たんですか?」
「ただの視察だ。それより気安くレオンハルト様に話しかけるな」
無口な王子に変わって、ランパードが私を睨む。王子……、とフローラは呟いた。フローラは初めて会ったのか。ゲームでの初対面は学園に入学してからだった。
「イーギスはデート……?3人で?」
王子がイーギス様を見て首を傾げる。イーギス様は私の手を掴んで持ち上げた。
「ええ。ナターシャはあまり王都に来たことがなかったので」
そういえば家とグランドル公爵領の行き来だけで、落ち着いてどこか回るってことしなかったな。きっとそれは庶民のフローラも同じ。
「ランパード」
王子がランパードに耳打ちをする。「ええっ!?」とランパードが驚きの声を上げた。
「……レオンハルト様も、一緒に回るそうです」
「え」
それは……、ピンチだ!




