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45話 逃亡


 ナターシャ、とイーギス様が私を呼ぶ声が聞こえる。無視するのは心苦しいけど、振り向くわけにはいかない。逃げる?田舎に逃げてスローライフを送る?でも侯爵令嬢生活が快適すぎて田舎で1人暮らすのは想像がつかない。前世だって都内出身在住だったんだから。せめて誰かの侍女に……。そうだ、セリの家の侍女になろう。ダメだ、それじゃイーギス様に見つかってしまう。


「覚悟を決めないと」


 私がヒロインになったのなら、異世界でスローライフを送れるはずだわ。急いで荷物をまとめて、カーテンを縛って窓から降りる。怖いけど、一度死んでる身だったから痛いのくらい平気だと思った。それより今はこの手しかない。


「ごめんなさい、イーギス様」


 ゲームの世界じゃ王都しか出て来なかったし、この世界に来てからあまり外出をしなかったからどこに行けばいいかわからないけど。使用人に頼んで遠くへ馬車を走ってもらう。


「ナターシャ様、どこに行く気ですか?」

「私は修行に出るのよ。誰にも言わないでね」


 今の家族は私のことなんて心配しないだろうし、ある程度のところで馬車を乗り継げば居場所はバレないだろう。まだ何も引越し先で何するかは決めてないけど、仕事さえ見つかればどうにでもなるだろう。真面目だけが取り柄なのだ。


「ここで降ろして。帰ってていいわよ」

「ナターシャ様、いつ頃迎えに来れば……」


 要らないわ、と言うと驚かれる。侯爵令嬢が家出なんて信じられないだろうけど、私は懐から金貨を出して使用人に握らせた。


「私は新しい生活を楽しみたいの」

「……わかりました。お気をつけて」


 うちの使用人はお父様に似て金に汚いらしい。キャシーだけだわ、純粋なの。キャシーにも挨拶してこなかったから、してくれば良かったかなと今更後悔する。とはいえ、もう私には関係ないことなのだ。これから第二の人生が待ってるんだから。いよいよ何で転生してきたのかわからないけど、とりあえず馬車を乗り継いで遠くに行く。もうここがどこかもわからなくなっていた。


「うわー、綺麗〜」


 海辺で馬車を降りて風に当たる。海見るのも久しぶりだし、こんな綺麗な海関東じゃ見れないから感動する。海の家あるかなと思ったけど、日本じゃないから見当たらなくて。とりあえず私は裸足になって、海に足をつけた。


「つめたーい」


 まるで子供みたいに興奮してる。ぴちゃぴちゃと軽く足を動かして遊んでみる。釣りをして生きるのもいいかもしれない。どこ行けば釣り人に会えるのかわからないけど。


「海好きなの?」

「そうみたいです」


 話しかけられて答える。道案内してもらえないかと振り向いた私は固まった。


「ど、どうして?」


 振り向くと、腕を組んで私を見てるイーギス様がいる。イーギス様に隠れて逃げてきたのに、どうして……。


「キャシーが窓から逃げるナターシャを見てたんだ。だからすぐに追いかけたよ」

「そ、そんな……」


 そんな小説みたいな展開があるか。じりじりと近づくイーギス様に後退りをする。私は靴と靴下をほっぽり出して走った。

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