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43話 凡人


 今日もお父様について回る。


「お父様、私をイーギス様の婚約者に戻してください」

「いつまで言ってるんだ。お前は可愛い妹から愛する人を奪う気か?」


 最初に奪ったのはエイシアなのに。私への愛がなくなったのか、本性を表したのかお父様はエイシアばかりを贔屓する。まだキャラが定まってなかっただけで最初からこういう人だったのかもしれない。ナターシャが悪役令嬢になったのだって、きっと何か理由はあるはずだ。


「お父様、私がグランドル家の婚約者で居た方が都合がいいわよ」

「その話は終わりだ。もう聞きたくない」


 バンッとお父様が書斎の扉を閉める。私は扉に向かって叫んだ。


「お父様が進めてる計画をより上手くこなせるのは私よ!」


 こんなのはただのはったりだ。だけど、現実はシナリオ通りに進んでる。ナターシャが行うはずだった横領を誰かが代わりにやってるはず。エイシアはまだ小さいから、お父様が裏で手綱を握っててもおかしくはないわ。お父様は扉を開けて、私を書斎に入れる。


「何の話だ?どこで知った?」

「想像つくわ。エイシアは何も知らずに協力させられてるだろうけど、私の方が上手く情報を聞き出せるわ」


 元々ナターシャの役目だったし。ゲームの中じゃなぜナターシャが犯罪に手を染めたのか明かされなかった。もしかしたらゲームでもお父様が絡んでたのかもしれない。お父様は私の手を引っ張ってどこかに連れて行く。


「ナターシャ、お前にはがっかりだ」

「え」


 お父様は地下の部屋を開けると、まるで漫画の中に出てくるような牢屋がある。必死に抵抗したけどお父様には勝てなくて、私は牢屋に入れられた。


「お父様!お父様!」

「殺さないだけマシだと思いなさい」


 ナターシャの悪役令嬢っぷりは血筋だった。悪役はどこまで行っても悪役で、救いようがない。あと2年しかないのに、一生をここで過ごすのだろうか。結局何も上手くいかない。私がこの世界に来た意味は?何もシナリオを変えられないの……?


「ただ、イーギス様の幸せを願ってるだけなのに」


 凡人の私が転生しても、凡人のままで。これなら転生なんてしない方がマシだったんじゃないかと思う。ゲームをゲームとして割り切れるなら、こんなに苦しい思いをしなくてよかった。自分の無力さを感じなくてよかったのに……。


「イーギス様……」


 すぐ近くにいたのに、同じ世界にいるのに……。イーギス様に会えないなんて生き地獄だ。イーギス様もいない、ゲームもない。そんな状況で、久しぶりに暇があっても何をしていいのかわからない。ただゆっくりと時間が流れるだけ。どこで間違えたんだろう。どうしたら良かったんだろう。私の人生はここでゲームオーバーなのだろうか。それでも食事もろくに取れなかった社畜時代とは違い、時間になったらご飯が出てくるだけでもありがたいと思ってしまった。イーギス様にはもう会えないのに……。


「バカだね、ナターシャ」


 どれくらい経っただろう。初めのうちは食事の回数を数えてたけどそれも覚えてられなくなった。そんな状況だったから、ついにイーギス様の幻聴まで聞こえる。


「遅くなってごめんね」


 ガチャッと扉が開いて顔を上げると、イーギス様がそこにいた。夢じゃ、ない?

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