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ペン回し部は廃部です!  作者: 中二病でも小説が書きたい!
第四章 根古屋薙の感傷
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7.6 雨上がりの夜空に⑥

 

 朝のホームルームが始まるまでの時間潰しに俺はユニ助と無駄話をする。今日、俺はこの時間を楽しみにしていた。兎澤……キャロ先輩を仲間に引き入れた報告をしてユニ助の驚く顔を早く見たかったのだ。いつも通り、ユニ助はまだ教室に来ていない。ちっ、いつまで待たせやがる。


 開放された教室のドアを眺めながら悶々としていると、ようやくユニ助が現れた。しかも都合の良いことに、鞄も置かずに俺の座席に駆け寄ってくる。俺は口角が上がらないように気をつけてやつに声をかける。


「なぁ――」


「俺、根古屋の家行ったぜ!」


 ユニ助はそれを遮り、そんな報告をなぜか興奮気味に言ってくる。意味不明な上に、俺の自慢を聞いてもらえず面白くない。


「朝っぱらからご機嫌にラリってんじゃねーよ。そんなのいつものことだろーが」


 しかしユニ助は腹立つ顔でチッチッと指を振っている。モハメド・アヴドゥルかオメーはよ。


「根古屋の家ん中入って、茶ぁ飲んできた!」


「マジで!?」


 それは確かに一大事だ。こちらとの接触を避けてきた根古屋の家に招かれるなんて。ことの次第を詳しく聞かねばならない。


「それがよお、聞いてくれよ! いつも通り電車降りて根古屋んとこ行こうとしたら、雨降ってきやがってよ! 傘持ってないし金もないしで最悪だったぜ! マジ顔面ビチョビチョになったからカバン頭の上に乗っけて走ってたんだけど、中にマンガ入ってんの思い出して! うーわ最悪! って1人でデカい声出しちゃって――」


「要点を絞って話せるか?」




 * * *




 とにかくよ、パンツまでビチョビチョになりながら根古屋ん家に着いたわけ。そんときには雨が結構大粒になってて、雨がつむじとか手に当たって痛いくらいだったぜ。


 んでずぶ濡れのカバン見てたら、亀掛川きけがわ先生にプリント預かってたの思い出して。やべえ! って思って急いで出したら封筒の上にクリアファイルに挟まれてあってよ。無事だった。……なに、先生は俺がビチョビチョになるのを予想してたって? まあ、それなら傘貸してくれって話だけどな!


 まあいいや、プリントの無事を確認してたら道の向こうから傘差した女の人が歩いてきてよ。目があったと思ったら早歩きで俺んとこ向かってきて、うわあなんだ!? って思ったら突然雨がさえぎられて。そのオバさんが傘差してくれて、ナギのお友達ですか、ってそう言ったんだ。その人、根古屋のママさんだったんだよ。


 でもちょっと意外だったぜ。根古屋と真逆っつーか。髪の毛後ろでピッと結んで、白いシャツビシっと着こなして、なんかほっそい銀の眼鏡かけて。うちの母ちゃんとはえらい違いだぜ。シローみたいな、シンケーシツって感じがしたぜ。なんだよ怒るなよ。


 根古屋にプリント持ってきましたって言ったら、びっくりしたような顔で俺の全身ジロジロ見て、とりあえず上がりなさいって家に入れてくれたぜ。玄関でバスタオルまでくれてよ。玄関で全身拭き終わったらリビングに通されて熱い茶ぁ出してくれたぜ。冷えるから、って。


 家ん中すげーキレイにしててよ。リモコンの位置決まってんじゃねーかってくらいテーブルの上とか片付いてんの。ありゃ絶対A型だよ。玄関なんか靴2足ぐらいしかなくてさ。……まあ嘘だよ。ホントはもうちょっとあったよ。そこはいいだろ。


 ペン回し部のこととか色々しゃべったけどカタい感じであんま盛り上がんなかったぜ。面接してるみたいで。


 そしたら、2階の階段から降りてくる足音がしてな。向こうから、シホさ〜ん今日のご飯はなんだろにゃ〜って、ゆるい声が聞こえてきて、まあ根古屋だわ。頭の上にネコのっけてよ、ピンクのパーカーにジャージ着てたぜ。あいつ、あの服しか持ってねーんじゃねーか?


 そこで初めて俺と目ぇ合ってな。俺がいるなんて思っちゃいないからすげー慌ててたよ。顔なんか真っ赤でさ。そりゃそうだよな。ネコのふりしてるとこ見られたら誰だって恥ずかしいよな。ものすごい勢いで、帰れ! って言って2階に戻っちまったぜ。


 そんでママさんには、なんかすいませんって言って、急いで茶ぁ飲んで帰ってきたぜ。傘貸してもらったから、今日返しに行くんだ。




 * * *




「まあそんな感じだな! すげーだろ!?」


「ああ」


 正直、やつの説明では足りない部分があったが、根古屋の保護者に認知されたのは大きな進展だろう。根古屋宅に足を踏み入れたユニ助の一歩は、根古屋攻略においてはアポロ11号の月面着陸にも劣らない偉大な一歩だ。


「そんで、お前はなんだ? 何か言いかけただろ」


「昨日、キャロ先輩がペン回し部に入ったぜ」


「マジで!? すげーじゃん! なんでもっと早く言わねーんだよ!?」


「お前が遮ったからな」


「もっとテンション上げろよ!」


「余計な世話だ」


「だはは! その調子でよ、ペン回し部作る話もバシッと解決してくれよ!」


 ユニ助は呑気に笑う。無責任だなと思うが、頼られて悪い気はしない。キャロ先輩の加入により、一気に現実味を帯びた部活設立。俺はその部長から頭脳として頼られている。東大を目指すほどの学力はないが、少なくともペン回し部の中でなら俺が一番上手くやれる自信はある。今の俺すげえ主人公っぽい。


 さて、ここからが本番だ。部活動の申請期限の5月31日まであと2週間を切っている。『ペン回し禁止令』の中でペン回し部を作るには。無謀な挑戦だが、これをクリアしたら俺は、常識破りのペン回し部を設立させた男として何者かになれるだろう。そうしたら俺は今度こそ、自分を好きになれる気がする。




 第7話 雨上がりの夜空に 完


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