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曇りガラスの向こう
閉ざされたガラス窓、華やかな街の光。向かいの家では今日もパーティ、馬車が何度も止まっては見知らぬ乗客を降ろす。二階のテラスでは、着飾った人たちが優雅な会話に興じている。
見上げた空は、灰色に染まっていて。
ふと視線を戻すと、窓ガラスに映る自分の姿。
髪に乗せられた白いキャップ、白いエプロン。
それに、ちょっと疲れた顔。
ジーナは窓ガラスの中の自分へ、笑いかけた。
声をあげて笑ったのは、いったいいつの事だろう?
笑い声さえ、忘れてしまった。
深いため息が、あっという間にガラスの表面に広がる。エプロンで慌てて、窓をこする。
向かいの屋敷、窓の向こうにいた上品そうな少年は、そんな彼女の一連の動作を、不思議そうに眺めていた。




