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西方の魔法師  作者: 榊さん
波乱
12/25

2-4

夜の静寂が降り始め、周囲の景色が闇に溶け込んでいく頃、荒い鼻息を響かせる馬が、疲労を滲ませながら馬車を曳いていた。


イオスたちが門へ近づくと、手前で数名の騎士たちが片付けを行っているのが目に入る。


「街は無事だったようですね」


懸念していた最悪の事態を免れたことに、胸のつかえが下り、静かに息をついた。


「イオス君、どうやら盗賊の後処理をしている最中みたいだよ」


荷台から身を乗り出したカグラが、街道の端を指さしながら呟く。


視線を遣ると、防具をつけた魔法師が足元にある巨大な何かの塊に火をくべ、その上から容赦なく薪を投げ入れているところだった。きつい焦げ臭さと煙が風に乗って漂ってくる。野晒しにはできない盗賊の死骸を焼却処分しているのだろう。


馬車が門前で速度を落として停止すると、精悍な騎士が一歩前へ踏み出してきた。


「リア王女ご一行様でございますね!」


騎士は抜いた剣を胸の前に掲げ、凛とした姿勢で深く一礼を捧げた。

イオスは荷台から降り立ち、周囲の様子を窺いながら尋ねる。


「盗賊の襲撃は問題はなかったようですね 」


「ええ、襲撃してきた盗賊の群れなら、あちらの冒険者殿が魔法で見事に追い払ってくださいました」


騎士が指し示した方へ視線をやると、先ほど死骸の処理で火魔法を使っていた魔法師が、こちらの様子に気づいてゆっくりと歩み寄ってくるところだった。


「挨拶が遅れて申し訳ない」


その男は背が高く、光沢のある銀色の甲冑を身に纏っていた。

透き通るような銀髪に、整った端正な顔立ち。一目で歴戦と知れる風格を漂わせている。


「あ、こちらこそ」


イオスが丁寧にお辞儀を返した、その時だった。


「イオス君、ちょっとちょっと!」


カグラがひそひそ声で横槍を入れてきた。


「なんですか?カグラさん」


耳を貸したイオスに、カグラは目を丸くしながら男を指さす。


「この人、有名な冒険者のラクシュよ! あの『紅の銀狼』のラクシュ!」


「ほう」


「ふむ……」


カグラの言葉に、後方にいたオロチとミロが同時に目を細め、感心したような声を漏らした。百戦錬磨のベテラン冒険者二人でさえ、驚きを隠せない表情でラクシュを凝視している。


その視線を全身に浴びて、男――ラクシュは苦笑いを浮かべながら、頭の後ろを掻いた。


「いやぁ……そんなにじろじろ見られても困るんですがね」


有名人扱いされて少し居心地悪そうに頭を掻くラクシュに、イオスは気まずさを察して軽く咳払いを挟んだ。


「ひ、ひとまず、街の中に入れていただけますでしょうか。今日は移動の最中にも色々とありましたし、リア王女もお疲れかと思いますので」


イオスが丁寧な口調で先を促すと、ラクシュはハッと表情を引き締め、快く頷いた。


「そうですね、配慮が足りず失礼しました。では、こちらへどうぞ」


ラクシュの誘導に従い、一同を乗せた馬車がゆっくりと進み出る。重厚な木製の門を潜り抜けると、イオスたちは無事にオラクル国境沿いの街へと足を踏み入れた。




イオスたちが到着したオラクルの国境街、その名をエルコラといった。

エルコラは国境を流れる大河を挟み、二国を結ぶ交易都市だった。夜も人の往来は絶えず、宿屋や酒場には旅人や商人たちの明かりが灯っている。


一行は予定通りその中の一軒に入り、部屋を確保することができた。

長旅の疲れを拭うため、宿に荷物を置くと同時に女性陣はすぐさま温かな湯あみへと向かった。一方で、男たちは宿には十分な湯殿がなかったため、街外れを流れる川へ火照った身体と汗をさっぱりと流しに行くことにしたのだった。


旅の汚れを落とし、イオスが風魔法で涼を送っていると、ラクシュが声を掛けてきた。


「イオス君は魔法学院の生徒だったよね?」


そう尋ねてきたラクシュに対し、イオスは気負うことなく素直に答えた。相手が名の知れた著名な冒険者ということもあり、イオスの中に警戒心はほとんどなかった。


「はい、そうです」


「学院のディオス主任は元気かい?」


「主任ですか? 主任は相変わらずいつも通りですね。教壇にもろくに立たずにふらふらしていますが」


「ははっ。あいつらしいな」


「ラクシュさんは、ディオス主任とお知り合いなんですか?」


「悪ガキの頃からの古い仲間だよ。ここ二年ほどは会えていないかな」


遠い目をして懐かしそうに語るラクシュに、イオスは和やかな笑みを返す。


「そうだったんですね。今度、ぜひ顔を出してあげてください」


思いがけない共通の話題に、二人の間では一層会話に花が咲いた。そんな折、ラクシュがふと思い出したように本題を切り出してきた。


「そういえば、先日のディオスの依頼……あれを受けたのは君かい?」


「知っていたんですか。そうです。あれは本当に大変でした」


「ちょっと詳しく聞きたいんだが」


そこから、ラクシュの問いに答える形でさらに深い話し合いへと移っていった。あの遺跡で何があったのか、どのような魔法が存在していたのか、そして魔法師としてどのような対応をしたのか――イオスは記憶を辿りながら丁寧に言葉を重ねていった。


「なるほどな……どうやらイオス君は、ディオスの秘蔵っ子というところかね」


「やめてくださいよ」


気恥ずかしさに苦笑いを返すイオスに、ラクシュは微笑を浮かべた。


「照れることはないさ。あっちの騎士たちも、今日の君の見事な活躍を話題にしていたぞ」


「……それを言うなら、ラクシュさんだって同じでしょう」


二人は視線を合わせ、どちらからともなく楽しそうに笑みを交わした。川面を渡る夜風が、濡れた肌に心地よく吹き抜けていく。


やがて表情を引き締めたラクシュは、真剣さを帯びた眼差しでイオスを見つめ、静かに言葉を継いだ。


「今回の依頼、正直なところ姫様の一言で今後の道筋が大きく変わる。期待しているよ、イオス君」


「はい」


ラクシュは頼もしそうにイオスの肩を軽く叩くと、今度は少し離れた場所で汗を流していた騎士たちの方へ話しかけに行った。




「イオス様の助力もあり、誰一人欠けることなく無事に国境沿いまで辿り着くことができました。心より感謝いたします。……さて、それでは現状の報告をお願いできますでしょうか」


宿の部屋に集まった一同を見渡し、リア王女が静かに切り出す。


「向こうの状況については私が一番詳しいと思いますので、私から説明させていただいてもよろしいでしょうか?」


そう言って前に進み出たのはラクシュだった。


「ええ、どうぞ。お願いいたします」


リアが優しく促すと、ラクシュは表情を引き締め、手元の情勢を語り始めた。


「まず、これから向かうレベレース側の国境についてです。私がこちらへ発つ直前、山脈側から現れた盗賊の群れに襲撃されました。そちらは無事に撃退したのですが……問題はその直後です。まるで後を追うようにして、今度は魔物の群れが襲ってきましてね。ただ……妙なんですよ」


「何がですか?」


「混ざっているんです。人と魔獣が」


ラクシュのその一言が落ちた瞬間、イオスたちの身体が跳ねるように動いた。オロチとミロも同時に顔色を変え、凄まじい勢いで立ち上がる。

イオスの背筋に、ねっとりとした不快な汗が伝い落ちた。頭の中に、先日の激闘とあの忌々しい異形の記憶が一気に蘇る。


「リ……リア王女、すぐにここから撤退してください!」


「っ……!? ちょっと待ってください、イオス様! 詳しくお話を――」


突然悲壮感を露わにして取り乱したイオスに、リアは驚きで目を丸くする。

その時、力強い手がイオスの肩に置かれた。


「イオス、落ち着け」


オロチの低く落ち着いた声が、熱くなったイオスの頭を冷やす。


「あ……。そ、そうですね……すみません、失礼しました」


イオスは大きく一呼吸を置き、乱れた呼吸を整えてから静かに座り直した。


「……取り乱してしまい申し訳ありません。実は、私たちが先日ディオス主任の依頼で赴いた遺跡で、まさにそれと同じ『異形』と遭遇していたんです」


そう前置きし、イオスは遺跡で起こった凄惨な戦いの詳細を語って聞かせた。


リアや騎士たちも、この若き魔法師がそれほどまでの苛烈な死線を潜り抜けてきたとは露ほども思っておらず、複雑な表情で息をのんで耳を傾けていた。話し終えたイオスは、思考を巡らせながら再び口を開く。


「……話を脱線させてしまい申し訳ありません。ラクシュさん、改めて盗賊の数と魔物の数を教えていただけますか?」


「盗賊は五十人より多くはなかったですね。ただ魔物は百匹ほどはいなかったものの、盗賊よりは明確に多かったです」


「援軍要請の状況はどうなっていますか?」


「すでに本国へ事態を報告済みで、援軍を派遣する旨の連絡は届いています。私たちも領主からの緊急救援要請を受けたため、私以外の護衛依頼を引き受けていた冒険者たちには、そのまま防衛に参加してもらっています。ただ、道中のあらゆる危険を考慮し、私単独で情報をお伝えしにこちらへお迎えに上がった、という次第です」


ラクシュは一呼吸置くと、真剣な眼差しをリアへと向けた。


「本国の援軍も動いてはいますが、到着までにはどうしても時間がかかります。それらを踏まえた上でお伺いしたいのですが――リア王女、これからどうなさいますか?」


「イオス様、今の状況から、何が起こっているのか考えられますか?」


尋ねるリアの澄んだ瞳が、まっすぐにイオスを射抜く。


イオスは腕を組み、頭の中で情報を素早く繋ぎ合わせていく。


(盗賊……魔物……そして『異形』。要素が多すぎる。だけど、組み立たないわけではない)


「……みなさん、少し私の仮説を聞いていただけますか」


静かに切り出したイオスに、一同の視線が集まる。


「まず、盗賊と魔物の動きです。もし盗賊が魔物を操っているのなら、順番が逆です。先に魔物を放って街を混乱させ、その隙に利益を掠め取るのが定石のはず。ですが今回は盗賊が先に現れ、敗走した直後に魔物が押し寄せている」


「それは私も考えました」


騎士団長が納得したように頷く。


「ええ。オラクル側とレベレース側、双方向で盗賊が出現しているのもそれが理由です。彼らは襲撃に来たのではなく、山奥の住処を追われ、国境へ逃げ出してきた」


「では、山奥で魔物が自然発生的に暴走したのか?」


騎士団長の問いに、イオスは首を横に振った。


「それならもっと前に猟師や冒険者の間で噂が立つはずです。今回は急すぎる。そして何より……魔物の中に『人と魔獣の異形』が混ざっていた」


イオスの眼光が鋭さを増す。


「単なる生態系の異常じゃありません。山奥で何者かが『異形』を作り出し、溢れ出させている……。これは誰かが意図して引き起こした、人為的な惨劇の可能性があります。」


場に冷たい緊張が走る。


「仮説は以上です」


イオスが言葉を締めくくると、部屋の中に重苦しい沈黙が落ちた。その緊張を破るように、ラクシュが静かに一歩前へ出る。


「リア王女、お尋ねします。このような事態となっても、このまま本国へお戻りになられますか? 無論、私が責任をもって本国へリア様の安全を報告いたします。それに可能であれば騎士団の方々にもお力を貸していただき、本国からの増援が到着するのを待ってから事の処理に当たれば、安全に解決できるでしょう」


安全策を提示するラクシュの言葉に、すかさず騎士団長が毅然とした態度で背筋を伸ばした。


「本国が危機に瀕しているのに、騎士団が逃げ出すという選択はありませんな」


胸に手を当てて力強く応じる騎士団長。しかし、当事者であるリアは双方の意見を前にして、決断を下せずに困惑の表情を浮かべていた。


「私は……」


その時、沈黙を守っていた金髪のメイド、ヨミが静かな足取りでリアの脇へと歩み寄ってきた。


「みなさま、少し休憩を入れてはいかがでしょうか。ささやかですが、軽食もお持ちいたしました」


張り詰めていた空気が、甘いお茶の香気によって和らぐ。それを見たイオスは、自らの焦りを反省するように心の中で呟いた。


(そうだ……これほど重大な判断を、今すぐ決めろと迫るのは早計だったな)


イオスは小さく息を吐き出した。


「いいですね、そうしましょう。少し息が詰まりすぎていました」


リア王女の小さな肩に、大きな決断を迫ったことを深く反省したイオスは、張り詰めていた空気を少しでも和らげようと、わざと明るい声を作った。


「ヨミさん、ありがとうございます。カグラさんなんて、もうお腹が鳴りそうでしたよ。ほら、冷めないうちにいただきましょう」


「こら!イオス!女性にそんなこと言わないの!お腹がすいていたのは本当だけれども……」


カグラものってくれ、場の空気が緩む。話し合いは休憩をはさむこととなった。




一時休憩となり、重苦しい緊張が支配していた部屋からひとり、またひとりと人が出ていく。残されたのはイオスたちと、隅で静かに控えるヨミだけとなり、先ほどまでの熱気が嘘のように静まり返っていた。


「カグラさん、ちょっとお願いが」


「ふぁに?」


口いっぱいにパンを頬張ったカグラが、むぐむぐと口を動かしながら振り向いた。イオスよりもはるかに長い時を生きているはずの彼女だが、こういう仕草は実に子供らしくてどこか微笑ましい。


「何ですか、その顔は。……それより、街の盗賊互助会シーフギルドへ向かって、生き残りの盗賊たちがいたら直接話を聞いてきてもらえませんか?」


「裏付けね、わかったわ。山の状況や異形の噂について、事細かく突っ込んで聞いてくるね」


カグラは手に持っていたパンの残りを口へ放り込むと、軽やかな足取りで部屋を後にしていった。


その背中を見送り、イオスは部屋の壁際に腰を下ろしていたベテランの二人に視線を向ける。


「オロチさん、ミロさん」


静かに名前を呼ぶと、腕を組んで目を閉じていたオロチがゆっくりと瞼を開けた。横にいたミロも、背もたれから身体を起こしてイオスに向き直る。


「なんじゃ?」


「お二人には、先ほどの遺跡で遭遇した『異形』の戦い方や特徴を騎士たちに伝達していただきたいんです。それと……可能であれば、出発までに火矢を作っていただけないでしょうか」


「任せとけ。あれの対処なら身体が覚えておる」


「了解した。騎士たちにも要点を絞って伝えておこう」


ミロとオロチは力強く頷き、頼もしい笑みを浮かべた。任せられた役目を果たすべく席を立つ二人を見送りながら、イオスは思い出したように声をかける。


「あ……それとオロチさん。先ほどはありがとうございました。おかげで冷静さを取り戻せました」


「うむ」


オロチは深く一つ頷いただけで多くを語らなかったが、その短い応えと背中には、イオスにとって何よりも大きな安心感があった。すると、横からミロが不満げに口を挟んでくる。


「……わしには感謝の言葉はないんかい?」


「じゃあ……火酒でも持っていきますか?」


「おお、そうじゃな! あれはよく効く、何樽か用意させるか!」


先ほどの『異形』に火酒を使った戦術を思い出したのか、ミロは上機嫌で声を弾ませながら部屋を出て行った。


二人を見送った後、イオスもラクシュを探しに部屋を出た。ラクシュのことだ、恐らく自分と同じような情勢の予想に行き着いているはずだと考えていたからだ。


廊下を歩いていると、窓辺に佇んでいたラクシュの姿を見つけた。


「ラクシュさん」


「おや、イオス君か。先ほどは見事な考察だったね、恐れ入ったよ」


仮説に対する言葉だろうと判断し、イオスは静かに問いかける。


「ラクシュさんも、同じことを考えていたのでは?」


「鋭いね。見立てはほとんど同じだよ。さすがはディオスの秘蔵っ子だ」


「……それ、地味に嫌なんですが」


思わず嫌そうな顔をするイオスに、ラクシュは愉快そうに笑った。イオスは表情を引き締め直して言葉を続ける。


「それと、あくまで仮説は仮説ですからね。当たらないかもしれません」


「私としては当たらない方が都合がいいのだけれどね。だが、それでいいんだよ。最悪の状況を想定して動いた方が、被害を最小限に抑えられる。何もなければそれで笑い話にすればいい」


「もし外れた場合は?」


「そりゃあ、頭を掻いて苦笑いさ」


端整な顔立ちの男がそれをやれば、大抵のことは許されてしまうのだろうとイオスは苦笑を漏らす。ラクシュはふっと笑みを消すと、少し真面目な眼差しでイオスを見つめた。


「……イオス君、リア王女はこのまま国境へ向かうと思うかな?」


「責任感の強い方ですからね。おおよそ、行く決断をされると思います」


「私と同じ意見だ。……これで今回の依頼も、最高難易度に跳ね上がったわけだ」


ラクシュは肩をすくめながらも、その瞳には冒険者としての鋭い光を宿していた。




やがて約束の時間が訪れ、一人、また一人と部屋へ戻ってきた。

盗賊互助会シーフギルドから戻ったカグラ、騎士たちへの伝達を終えたオロチとミロ、そして外の風にあたっていたイオスとラクシュ。それぞれが持ち寄った情報を胸に持ち場へ着くと、先ほどまでの穏やかな空気は一変し、室内には静かな緊張感が張り詰めた。


茶器を片付け終えたヨミがそっと壁際に控え、全員が示し合わせたように口を閉ざす。

誰からともなく視線が注がれる中央の席で、リアがゆっくりと立ち上がった。その佇まいには迷いが削ぎ落とされ、王族としての気品と凛とした強さが満ちている。


「みなさま、お待たせいたしました。……私の考えがまとまりました」


静かで澄んだ声が部屋に響く。全員の視線が集中する中、リアは全員を見渡して宣言した。


「退避することはしません。私はこのまま、レベレースの国境へ向かいます」


「姫様……!」


騎士たちが驚きの声を上げるが、リアは制するように掌を向け、毅然とした態度を崩さない。


「国境で民が戦っている時に、王族である私が安全な場所へ逃げ帰るわけにはいきません。それに……イオス様の仰る通り、これが誰かの手によって組まれた人為的な罠であるならば、放置すれば被害は広がる一方です。本国からの増援を待つ間だけでも、私がいることで、できることが増えるのではないでしょうか」


王女としての覚悟を示したリアに、ラクシュは目を細め、騎士団長が深く腰を折ってその決断に従った。


「承知いたしました。リア王女のお覚悟、とくと拝見いたしました」


状況が固まったところで、ラクシュが一同を見渡す。


「では、援軍に向かうという事で、現地までの作戦を立てるとしましょう」


「献策は……」


イオスがすかさずラクシュに丸投げしようと口を開かけた、その瞬間だった。


「イオス様ですね」

「イオス殿だな」

「イオス君でしょ」


被せるような全員一致の見解に、イオスは言葉を詰まらせる。ラクシュは苦笑いを浮かべながら、イオスへ向き直った。


「ではイオス君、現地へ素早く、かつ比較的安全に向かうための作戦を聞かせてくれるかい?」


「あの……結構辛い強行軍になりますよ?」


「構わないさ。一刻を争う事態だ、背に腹は代えられない」


「では」


イオスは一度深く息を吐き出し、静かに言った。


「魔法師を酷使した強行軍を提案します。」


イオスは苦笑いを浮かべながらも、迷いなくテーブルへ指を置いた。


「まずは――」



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