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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第四十一章 『特殊な部隊』のお約束

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第83話 化け物と呼ばれた男

「……なんだか温かい……この柔らかい感触は?きっと僕のことだ……あのサイボーグの自爆とかに巻き込まれて死んだのかな?やっぱり天国ってあるのかもしれないな……隊長は何万回も死んだけど一度も天国なんて見たことが無いっていつも言ってるけど、それはあの人が地獄に落ちるしかない最低の人間だからであって、僕は常にひどい目にばかり遭ってそれにふさわしい待遇が用意されているんだ。僕は正しいことをして報われずに童貞のままで死んだんだ。天国に行ったって少しも不思議なことは……ってあまりに周りがリアルだな?天国ってこんなにリアル……と言うかここ何処?」 


 誠は目を覚ました。廃病院の中庭に置かれた仮設ベッドの上だった。時々誠の視界を赤い回転灯が照らすのが嫌でも誠にもここが天国ではなくあの死闘の場所からそう遠くない廃病院の中庭であることは分かった。すでに千要県警、司法局実働部隊は到着しているようで捜査官や武装した県警の警備部員が慌ただしく行き来するのが気配で感じられた。

挿絵(By みてみん)

「起きたかい……こちらも起きているようだね。立派だ……直接この目で見るのは初めてだけど数多くの男のものを見てきた僕もこんな素敵なものは見たことが無い。素晴らしい……僕の『許婚』にふさわしい大きさだ。これだけのものをやすやすと受け入れられる未来の妻を持つ君は幸せだね?普通の女性ならこれだけのものを受け入れてもただ苦しくてもがくことしかできないだろうね。その点、僕はこれくらいで無いと快楽に浸ることはできない……お互い結ばれるべくして結ばれる運命なんだね、君と僕は」 


 誠は頬に触れている柔らかく温かい感触がかえでの巨大すぎる胸であることに気付いて飛び上がった。そしてかえでにより脱がされたパンツを履き直しかえでの方に情けない視線を送った。


 そこには全裸のかえでとその様子をビデオで撮るリンの姿が有った。死闘の緊張感とその後のほとんど罰ゲームと言っていい羞恥プレイに誠は顔を真っ赤に染めて全裸で誠の寝ていたベットに横たわっているかえでをにらみつけた。


「かえでさん!アンタはなんて場所でなんて格好してるんですか!ここは野外ですよ!しかもこの薄い衝立の向こうには県警の捜査官が走り回っている!そんなところで一体アンタは僕に何をする気だったんですか!」


 驚いた誠の言葉にかえでは妖艶な笑みで笑いかけた。


「誠君。君がついに『漢(おとこ)』になったと聞いてね……居てもたってもいられなくなった。僕の全身も君を待ち受けている。さあ、愛し合おう!なあに!この外で僕の激しい快感のもたらす絶叫を聞きたい人間が居るのなら利かせてやれば良い!それこそ僕の望むところだ!」


 かえではそう言うと誠に向って腕を開いて待ち受けるような姿になった。


「かえでさんはそれで良いかもしれませんが、僕が嫌なんです!どう考えてもこの状況はおかしいと思ったことは無いんですか?」


 必死になって叫ぶ誠だが、かえでは誠が近づいてこないと分かるとその腕を掴んで誠の人並外れた腕力を上回る力で誠を組み伏せた。


「いいじゃないか……僕達は美しい。僕達の愛し合う姿もまた美しい。人には美しいをもの見る権利がある。だったらすべての人々の祝福を浴びながら愛し合うのもまた悪くない……それが僕たちが生まれた義務なのかもしれない。それは罪かもしれないが僕たちにとっては義務なんだ。さあ!愛し合いすべてを忘れよう!」


 かえではそう言うとキスを諦めて誠の制服の上着を脱がしにかかった。


「やめてくださいよ!これは強姦ですよ!僕にその意思はありません!ここではだめです!きっと近くにカウラさんとアメリアさんが居ます!間違いなくどちらかが乱入してきます!これはもう僕のお約束なんです!」


 誠は欲望の赴くままにはだけた誠の乳首を吸って来るかえでに向けてそう叫んだ。


「誠様。ここはすべて男の欲望の赴くままにかえで様をむさぼられるのが一番かと。それにあの二人が乱入してきた場合に備えてこのリンが居りますので。あの二人を相手にして時間を稼ぐ程度のことは私にはたやすいことです」


 相変わらず最高性能の本格的な動画撮影装置で撮影を続けながらリンは静かにそうつぶやいた。


「……やめ……やめてください……」


 夢中になって誠の上半身を舐めあげるかえでに向けて誠は理性を保ち続ける限界と戦いながらそうつぶやいた。


 その時風のように何かがこの簡易ベッドの置かれた場所に跳び込んできた。

挿絵(By みてみん)

「変態止まれ!」


 幼女の叫び声が響くと同時にかえでの頭が何者かに蹴り飛ばされた。


 現れたのは『特殊な部隊の風紀委員』ことクバルカ・ラン中佐だった。


 さすがに現れたのが『人類最強』の欄が相手となればカウラやアメリアのような『ラスト・バタリオン』相手なら時間を稼げるリンも手も足も出ない。


「クバルカ中佐……僕……僕……」


 誠は半泣きでコートを着込んでかえでを仁王立ちでにらみつけるランに縋りついて泣き始めた。


「おい、日野。アタシはいつこいつが『漢』になったらレイプして良いといつ言った?アタシが見る限りこれはレイプだ。オメエが変態なのは知ってるが、アタシの部下から犯罪者を出す訳にはいかねーんだ!そんなことも分からねーからオメエは性犯罪者なんだ!いくら実力があろうが性犯罪者である限りオメーと神前の仲をアタシが認めるわけにはいかねーな!」


 ランはいつもの睨むような目つきをさらに鋭くしてかえでとリンをにらみつけた。


「クバルカ中佐……誤解ですよ。僕達は愛し合っている。双方の合意があるのは僕の僕から分泌された液体でぬれた下着と誠君の股間が証明しているんじゃないですか?そんな事だからいつまでたっても見た目が8歳児なんですよ。そう言う寛容な愛への見方が出来るようになれば中佐も成長するんじゃないですか?」


 かえでは全裸のまま豊満な胸を揺らしながらベッドから起き上がった。


「こいつの股間の問題は『若さ』って奴だ。それにこいつはまだ真の『漢』になったわけじゃねー!真の『漢』は多少の危機を迎えたからって怯えて切り札を切るような間抜けな真似はしねーもんだ!当然、オメーに許してやった手をつなぐ、キスをするの権利はチャラだな!こんな変態行為を好む性犯罪者にそんなことをする資格はねー!性犯罪者には刑務所がお似合いだ!」

挿絵(By みてみん)

 ランは非情にかえでに向けてそう言い放った。


「そんな!僕は誠君無しでこれからの人生をどう生きていけばいいというのですか!分かりました!死にます!誠君無しでは僕は生きていけません!」


 かえではそう言うと仮設の医務室の隣に脱ぎ捨ててあった制服の隣に置かれた刀に手を伸ばした。そのあまりにかえでの真に迫った演技にランは完全に騙されていた。


 誠はかえでは演技でこれくらいのことは簡単にやれることは知っていたので誠の理性はもうすでにあれだけのことをやった英雄のそれでも、痴女に襲われて興奮してしまっているうぶな若者でもなく、『特殊な部隊の変な女担当』と島田が呼んでいるいつもの『モテない宇宙人』の遼州人の中でも珍しい女難の相がある青年と言うポジションに戻っていた。


「日野!分かった!冗談も分からねーのか!手をつなぐのは許してやる。キスも許す!確かに神前が真の『漢』に近づいたのは事実だ!だから、貴様には他の女共よりも優先的に『デート』をする権利をやろう!それで生きる希望も湧いて来るだろ?」


 さすがに自分が言いすぎたことを察したランはかえでに向けて譲歩案を提示した。人の演技を疑うと言う思考を持たないランを騙すことなど数々の女性をその巧みな演技で篭絡させてきたかえでに取ってはあまりにたやすいことと言えた。


 そのあっさりとかえでの演技に引っかかる自称『人類最強』の幼女の姿を見ると、誠は今回の捜査において一番の障害が彼女であることを思い出してきて白けた気分がさらに白けてきた。


 自分の演技で最低限の目的は果たしたというような顔をしたかえではリンからコートを受け取るとそれを羽織ってベッドから降りて笑顔を向けてそのまま誠達に向けて歩み寄ってきた。


「そう言うことですか……分かりました。誠君、クバルカ中佐は中佐公認での僕とのデートを君にプレゼントしてくれたんだ。これは感謝しなければいけないね。僕も今から楽しみだ……君とはすばらしい一日を過ごせると確信しているんだ……今から楽しみだね」


 かえではコートの下は全裸と言う典型的な変質者の格好のまま誠の抱き着いてきた。


「かえでさん。どうでもいいけどコートを羽織るだけじゃなくってちゃんと服を着てください。それと股間を隠してください。さっきも言いましたけどこの周りは豊川署のお巡りさんたちが走り回っているんで、その前をその恰好で歩き回るつもりですか?すぐに別の犯罪者としてかえでさんはパトカーに乗せらることになると思いますよ」


 誠はかえでの胸とてらてらと光るかえでの内ももを見ながらそう言って静かに目を逸らした。


「かえでちゃん!首尾は……ってランちゃんがここに居るってことは上手く行かなかったのよね。少し残念」


 シートで覆われた医務室にアメリア、カウラがなだれ込んできた。その後ろからは好奇心満々と言う表情のひよこが目を輝かせてついてきた。


「ああ、アメリアさん。残念ながら結局最後まで行けなかったよ。しかし、困ったな。こんなに誠君への愛があふれて来るとズボンが染みになってしまう……まあ、誠君との思い出の品と言うことでとっておこう」


 そう言いながらかえでは平然と素早く下着を身につけて制服を着る様子を見るといかにかえでが日常的に全裸から服を着るということに慣れているということが誠にも嫌でも分かって来た。


「まあ、私としてはかえでちゃんが誠ちゃんとの間に早く子供を作ってもらってその間においしくいただくという協定を結んでいるんだからどうでも良いんだけどね」


 アメリアはネクタイを締めるかえでを横目にニヤニヤ笑いながらそう言った。


「神前……不潔だな。貴様は色香に惑って道を踏み外すことになるぞ。そういう意味では日野とはお似合いなのかもしれないな」


 そんなアメリアの言葉を聞いてその陰から現れたカウラは吐き捨てるようにそう言った。


「カウラさん。誤解です!僕は何もしていません!」


 誠は怒りの表情を浮かべるカウラに必死になって言い訳した。


「股間をそんなにさせて言うセリフか?それは」


 誠の言い訳は潔癖症のカウラには全く通用しなかった。


「それは………その……男なら誰でもなってしまう現象と言いますか……それより、北川達はどうしたんですか?あのサイボーグは僕が倒しましたけど、連中は無傷だったでしょ?」


 誠は話題を自分の事から逸らそうと作り笑いを浮かべながら、自分が気を失っていた間の出来事を確認しようとかえでに脱がされたシャツを着こみながらそう言った。


「逃げられちゃったわよ。まああちらとしたら無理をしてうちとやり合うつもりは端から無かったんでしょうけどね。機会さえあれば確保したかったというくらいのところだったんじゃないの?今回は」 


 アメリアが心配そうに毛布に包まれた誠を眺めていた。


「やはり本気じゃ無かったんですね……僕がそんなに活躍できるわけ無いですからね……そう言えば西園寺さんは?」 


 誠は服の乱れを直したかえでに声をかけた。


「ああ、お姉さまはそのまま義体の交換だそうだよ。右腕は完全破損だそうだ。腹部の人工消化器系も復旧不可能。ラボでの完全交換になるそうだ……うるさいお姉さまも居ないことだし、やはり今の機会を利用してここは二人で愛を確かめ合うべきかな……」


 そう言って再び服を脱ぎだすかえでをアメリアが再び押しとどめる。


「かえでちゃん、あなたが色情狂なのは分かったからこんなところでするのは止めなさいよ!それよりかなめちゃんだったわね。工場で修理。まるでおもちゃみたいね……まあ私達も工場生まれ。お似合いの捜査チームだったってわけね」 


 欲情したかえでの声とアメリアのいつもの自嘲に誠は少しばかり安心して周りを眺めた。深夜の闇に廃病院の影が不気味に照らし出されて浮き上がって見えた。先ほどまであの中で命のやりとりをしていた。そんな事実がまるで夢だったようにその黒い塊は静かに照明の中で佇んでいた。


「これで終りですかね。水島の身柄は確保した、米軍はあの男の確保に失敗して『廃帝』は手を引いたんですから。他の勢力の動きとかは……この状況を見ればそれなりに使える法術師でも投入しない限り拘置所から水島の身柄を略取するなんて不可能ですからね」 


 誠はそう言って晩冬の冷たい空を眺めた。


「そうなのか?そう簡単に行くとは私には思えないんだ……それに拘置所から水島を連れ出す方法は実力行使ばかりとは言えないしな」 


 浮かない顔のカウラに誠は少し首をひねっていた。


「法術の可能性が示されたんだ。今回の件で少なくとも東和では確実に今までは任意だった法術適性検査がその強制範囲が厳格化にされるだろうな。他の同盟諸国で任意制をとっているハンミン国、西モスレムも同調するだろう。場合によっては他の植民星系国家や地球にも影響を与えることにもなりかねない……私達にとってはこれで終わりだが、多くの人にとってはこれからが始まりなんだ。ちょうどお前が半年前の『近藤事件』のときと同じ状況だ。その象徴である水島を手に入れる。その手段が強硬手段だけとは私には思えない」


 カウラは唇を噛みしめつつつぶやいた。そんなカウラに近くを通った警備部員から受け取ったコーヒーをアメリアは差し出した。その目もいつものふざけた調子は消えていた。 

挿絵(By みてみん)

「全く……誠ちゃんも因果な星の下に生まれたものね。そうして人類は未知の能力者の存在に怯えて憎しみの中でのたうち回ることになる。別に力を欲しくてそう生まれたわけでも無いと言うのに力があるだけで憎まれ、力があるために憎む。今回の水島も連行する最中に散々誠ちゃんの悪口を喋り続けていたわよ。『俺が犯罪者になったのは神前誠と言う化け物が勝手に力を使ったからだ』って……まあ拳銃強盗が銃の発明者を恨むような話だから気にすること無いわよ。逆恨みの典型例を私も見られたってことで水島にはその点だけ感謝しておくわ。あんな見事な逆恨みなんてそうそう見られないから」


 アメリアが力なく笑うのが見えた。誠はそれを見ながらベッドの横でその周りの様子を見ていた。そしてその枕元に剣が一振り置かれているのに気がついた。


 誠の意志に答えた『賊将の剣(つるぎ)』がそこにあった。

挿絵(By みてみん)

 とにもかくにも誠は自分が一歩前進したのだと思いつつも、その陰で多くの人が苦しむことになる現実を感じてこの力が自分をどこに導くのかと言う不安が浮かぶのを感じていた。



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