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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第四十章 『特殊な部隊』の廃病院での戦い

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第76話 廃病院の追跡者

 東豊川を流れるゆたか川の下流へ向かう堤防沿いの道をヘッドライトを灯したカウラの『スカイラインGTR』が走っていた。


「ラーナ。間違いはねえんだな?」 


 かなめは通信端末に映ったラーナのそばかす顔を見ながらそう言った。


『はい、反応は旧東豊川病院跡で途切れたっす。再び法術発動の気配はないっすから……』 


 ショットガンを肩に担ぐようにしてかなめは狭いカウラの車の後部座席にふんぞり返っていた。誠は身を小さくしてショットガンに何度となく頭をぶつけながら黙って座っていた。


「かなめちゃん。もう少し詰めてあげてよ。誠ちゃんが苦しそうじゃない」

挿絵(By みてみん)

 助手席でゆったりと座っているアメリアはそう言ってかなめの方を振り向いてきた。 


「は?いいんだよ。これで少しは体がやわらかくなるだろ?こいつにはもう少し柔軟性が必要なんだ。このくらいのことには耐えてもらわねえとな」 


 かなめは当然のような顔をして屁理屈をこねる。誠は苦笑いを浮かべながらかなめの言葉にうなずいていた。


「それより……間に合うのか?水島とか言うおっさんが人斬りに真っ二つにされた状態で見つかっても事件は解決したことにはならねえぞ」 


 かなめは人斬りが水島を斬ることを予想していた。


 西に火が傾き、夕日の中、車は森のそばを加速を続けた。


「間に合わせてみせるさ。私を馬鹿にするな」 


 かなめの疑いを愚問だと言うようにカウラは何もない堤防沿いの道に車を走らせた。フロントガラスには近辺の地図とラーナから送られてきている法術反応のデータが表示されていた。


「廃病院で鬼ごっこ。こりゃあ楽しくなりそうだ」 


 かなめは戦闘の前の凶暴な瞳を誠に向けてきた。


「不謹慎ね、かなめちゃんは。相手は強力な法術師で日本刀を持ってるかなりの手練れ。こちらはこの一般人が理性を失った時にそれを沈める為のショットガン。それで勝負しろっていうわけ?拳銃は持ってきているけど、予備のマガジンまでは用意してないわよ」


 アメリアはすっかり銃を撃つ気満々のかなめに声をかけてきた。


「そう言うオメエも顔がニヤけてるぜ。戦闘用の人造人間の闘争本能でも出てきたのか?」 


 そう言うアメリアの顔にも笑顔が浮かんでいた。


「まあ否定はしないわよ。でもまあ……辻斬りの犯人にそれを本来担当しているはずの茜ちゃんより先にお目にかかれるとは……運が良いのか悪いのか……」 


 振り向いたアメリアの目がぎらぎらと光るのが誠の目からも見て取れた。


「あのー。茜警部は?」 


 誠の言葉ににんまりと笑うかなめがいた。その姿に誠の背筋が凍りついた。それは戦闘狂モードのかなめの顔だった。


「ラーナの奴が連絡済だ。今のところアイツが動いた気配が無いところから見てアタシ等が本当に例の辻斬りかどうか確認するまで動けない状況なんだろ」 


 かなめの脳内に茜から連絡があったらしい。


「まーそれは残念。茜ちゃんには悪いけど私達がみんなまとめて捕まえちゃいましょうよ♪」 


 能天気にアメリアはそう言って腰の銃に手をやった。


「クラウゼ。気軽に言うものだな。相手は強敵でこちらの装備が貧弱すぎると最初に愚痴を言ったのは貴様だぞ」 


 カウラは軽口を言うアメリアを口ではたしなめていた。だがそのバックミラーに映る彼女の顔は楽しいことが待っているとでも言うように微笑みに満ちていた。誠はそんな雰囲気に飲まれないようにと唇を噛み締めて銃を握り締めた。


 急カーブを切った『スカイラインGTR』の中で誠は思いきり顔面をショットガンに打ち付けた。


 そして車は急に停まった。川べりに立つ巨大な廃墟が見えた。こんなところがあったのかと地元出身ではない誠は度肝を抜かれた。


「豊川市の奥にこんなところがあるんですね……って!」 


 薄暗い廃病院を見回す誠の後頭部をかなめが小突いた。


「ごちゃごちゃ言うんじゃねえよ!とっとと下りろ」 


 かなめに蹴飛ばされて誠は何とかカウラの『スカイラインGTR』の狭い後部座席から転がるようにして廃病院の中庭に出た。正門の前の車止めの周りは荒れたアスファルトがこの場所が誰からも見放された場所であることを示しているように見えた。


 静かに誠はショットガンを手に7階建ての廃病院を見上げた。まるでロールプレイングゲームの魔王の待ち構えるこれからクリアーしなければならない宮殿のような不気味な雰囲気と言う言葉が浮かんできて誠はつい苦笑いを浮かべていた。

挿絵(By みてみん)

「誠ちゃん、何を笑っているの?今度の事件は結構ヤバいんだからもう少しは緊張感を持ってくれてもいいと思うんだけどなあ。それよりも……予想通りの荒れようね……なんでも……菱川重工の併設病院が10年前に新病棟を拡張したおかげで経営が行き詰まってこうなったらしいわね……って走るわよ」 


 いつものようにどこから仕入れたか怪しい言葉を吐きながらアメリアが銃を持って走り出すのに誠達も続いた。割れた正面玄関の扉はガラスもほとんどが砕け、それを固定していた針金も朽ち果てていた。


「本当にお化けが出てきそうよね……かなめちゃん、平気?」 


 アメリアはギャグのつもりか一番幽霊などを信じそうにないかなめにそう言った。


「何でアタシに振るんだ?こういう時に一番平気じゃねえのは普通神前だろ?」 


 かなめは心底不思議そうな顔をしてアメリアに問いかけた。


「こういうときかなめちゃんみたいなキャラがお化けが苦手でお荷物になると面白いかなーとか思ったんだけど」 


 アメリアはかなめが幽霊部屋に住んでいる事実を無視してそんなことを言った。

挿絵(By みてみん)

「アニメの中じゃねえんだよ。アタシはお化けよりよっぽど生きている人間の方が恐ええよ!その中でも最低最凶の人斬りが待ち構えているかもしれねえんだ。ふざけてねえで気を付けろよ!」 


 そう言うとかなめが先頭を切って割れたガラスに気をつけながら病院の中に入った。


 玄関を入ったロビーの周りには何度も何者かが侵入して悪戯を繰り返したらしく、窓口だったカウンターは倒され、ソファーは全てひっくり返されて転がっていた。


 そして床にはガラス片が散乱して転びでもすれば全身血だらけになることは間違いないほどの荒れ果てた光景が誠達の前に広がっていた。


「こりゃあ……見事な廃墟だ……甲武だったら食い詰めて家を追われた下級士族の家族が数家族巣を作りそうなそんな場所だ」 


 かなめの言葉も当然だった。日没後の暗闇の中でもはっきりとわかるほどの極彩色の落書きで壁は覆われ、あちこちに雑誌や空き缶が転がっている。足元を見れば焚き火をした後らしき焦げた跡まであった。


「間違えて悪戯しにきた島田みてえなヤンキー予備軍の餓鬼を殺さないようにするにはコイツは一番の得物だな……ただ、そんな奴が居た場合には人斬りからそいつまで守らなきゃならなくなる……そんな馬鹿が居ねえことを祈るだけだ」 


 かなめは自虐的に笑って手にした銃を眺めた。誠も自分達の持っている銃に入っている弾が殺傷能力の低い弾丸を使用したものだと言うことを思い出した。


「とりあえず分かれたら危険だ。西園寺が先頭でポイントマンだ。貴様の目には赤外線を探知できるサーモ機能があるからこの程度の暗がりなど昼間のような明るさに見えるんだろ?いつもそう自慢していたよな?それとアメリアが後衛を頼む。私やアメリアは『ラスト・バタリオン』だから暗闇でも通常の人間よりも視界が利くが……神前。貴様は我々の銃口を見ながら行動しろ。ライトはつけるなよ。人斬りを刺激することになるからな」 


 冷静にカウラはそう指示を出した。


「だろうな……あの人斬りは法術師だがサイボーグじゃねえなら、闇夜での活動能力は神前とどっこいのはずだ。なら、この暗闇はアタシ達に有利だな。少なくともアタシには敵は丸見えだからな」 


 かなめは当然というように先行していった。その足元のしっかりとした動きを見れば闇夜に戸惑っている誠とは違いかなめにはこの廊下に転がっているゴミの一つ一つがすべて昼間のような明るさで見えているのが分かった。


「了解っと!確かにかなめちゃんの言う通り……武器で負けててもこっちは夜目が利くからその分でカバーするってわけね」 


 誠の背後でアメリアはいつものように軽くそう言っていた。


 かなめが銃を構えてそのまま誠達を先導するべく走り出す。カウラはそれに続いた。誠は二人の足の動きを見ながら視野の効かない闇夜の廃墟に取り残されまいと急いだ。


 一階のかつては診察室だったらしい部屋の並ぶ廊下でかなめが足を止めた。そのまま一つ目のドアを指差し突入するべきかとカウラにハンドサインを送った。


 カウラはうなずいた。それを見たかなめはそのまま半分朽ちた扉を蹴破って中に入った。


「なにやってるのよ!音がしてバレたら意味無いじゃないの!カウラちゃんはライトも使うなって言ったのよ!かなめちゃんは聞いてなかったの!人斬りにこっちの場所がバレたら不利だってことくらい分かりなさいよ!」 


 背後を警戒していたアメリアがかなめがたてた大音響に抗議の言葉を発した。


「でけえ声出すんじゃねえよ!バレて上等!今時日本刀なんかで武装している馬鹿には鉛弾ぶち込んでそれでしまいだ!」 


「先に扉を蹴破って大きな音を立てたのはかなめちゃんでしょ!それに人斬りもこれまでの連続女性強姦殺人事件の容疑者として逮捕しなきゃならないんだから穴だらけにしちゃだめよ!」 


 何も無い診察室の中に飛び込むとアメリアとかなめはすぐさま喧嘩を始めた。カウラはこめかみに手を当てながらいつものように呆れて二人が口を閉じるのを待った。


「光はともかく音に関してはこれだけ広い病院なんですから大丈夫なんじゃないですか?でも西園寺さん……一つ一つ部屋をこうして移動するんですか?そんなことをしてたら人斬りの方が先に水島にたどり着いちゃうと思いますよ」 


 誠はフォローのつもりでそんなことを言ってみた。


「誠ちゃんの言う通りよ!かなめちゃんの目にはこの暗がりも昼間と変わらないんだから一目見て人気が無ければ通り抜ければいいだけじゃないの!」


 アメリアとかなめがせっかく仲裁に入った誠を怒鳴りつけた。落ち込む誠の肩を叩きながらカウラは部屋から外を眺めた。


「全く……ちょっとアタシが我流を通すとオメエ等勝手に騒ぐんだからな。分かったよ、ざっと見て気配が無けりゃあ次に移る。まったく……一人の方が向いてるぜ、アタシには」 


 そう言うとかなめはカウラを押しのけて周りを見回した。


「ラッキーだな。誰もいねえよ」 


 そう言うとショットガンを構えながらかなめは走り出した。誠達もその後に続いた。物音は誠達の走る靴の音ばかり。ただひんやりとした空気を頬に感じながら誠は走った。

挿絵(By みてみん)

 かなめが階段の手前で立ち止まると中腰で手で後続のカウラ達に止まるようにサインを出した。


「誰か……」 


 確認をしようと口を開いた誠の口元にかなめが指を差し出して制止する。そして指で上の階を指すと一人の人物がそこにいると言うハンドサインを出した。


 誠は銃を握り締めた。その不安そうな様子にニヤリと笑みを浮かべた後、かなめは静かに階段を登りはじめた。


 誠にもしばらくして気配が感じられた。何かを探していると言うような雰囲気が頭の中を駆け巡った。


『水島徹の法術発動かな……でもそれなら……』 


 考え事をしていた誠は階段の端にあった窓ガラスの破片を踏んで音を立ててしまった。


「誰だ!」 


 高めの男の声が響いたので誠達はそのまま声がしたあたりから見えないようにそのまま身を暗闇に沈ませた。


「まったく……桐野の旦那にも困ったもんだぜ……こんな暗い場所に俺を置いていくなんて……俺達コンビじゃないですか……俺が見ていないからって勝手に水島を斬られたら困りますよ……」 


 悪態を付きながら声の主は遠ざかっていった。


「桐野の旦那?」 

挿絵(By みてみん)

 ささやくような声で誠がかなめに目を向けた。


「桐野……桐野孫四郎。やっぱり例の連続辻斬り事件の最重要容疑者か……まああんな手練れがそう数いるわけがねえんだがな」 


 かなめは曖昧に首を振った。アメリアも難しい表情で黙り込んでいた。


「先ほどの声の声紋は取れたか?」 


 カウラの一言にかなめは驚いたように顔を上げる目を閉じて突然黙り込んだ。彼女の脳から直接東都警察の鑑識課のデータにアクセスしている。


「間違いねえ。あれは北川公平だ。あの野郎と桐野はつるんでたのか……面倒な話だぜ」 


 かなめの電子の脳はすぐに声の身元を割り出した。


「すると……動いているのは『廃帝』?最悪じゃない……勘弁してよ……」 


 アメリアはそう言うと首を振ってお手上げと言うように手を広げた。誠も彼女の放った『廃帝』と言う言葉に少しばかり恐怖を感じ始めていた。


 遼帝国末期に設立された皇帝の手足となって働く法術師集団があった。何度とない政変で今は王朝の支配を離れ、『廃帝ハド』と呼ばれる長髪の大男に率いられていると言うテロ組織である。近年は遼南のイスラム原理組織や外惑星のゲルパルトのネオナチ系の非合法組織と連携しての動きを水面下で見せていた。そのことはランからも聞いていたので事の大きさを誠も自覚した。


 そしてその『廃帝』直轄で動いている法術師の北川公平が動いている。その事実は自分達の独断専行と取られかねない出動が拙速だったことを知らしめるには十分な出来事だった。


「相手は『廃帝』。しかも、これまで十八人斬ってる人斬りと、能力の判定もできない法術師のおまけ付き。ここまで来てなんだけど……仕切りなおす?正直戦力不足よ」 


 弱気の虫に駆られた後衛のアメリアがカウラに尋ねた。


「馬鹿言うんじゃねえよ……ここで逃げたらちっちゃい姐御に笑われんぞ」 


 二方面作戦に燃えるものを感じているかなめがそう言って両方に攻撃を仕掛けようとする。


「ランちゃんはこういうときは笑わないと思うわよ。それに今回の捜査で自分が一番の邪魔だったと言ったら、詫びだと言ってこの全員をあの美味しいお寿司屋さんで好きなだけ食べて良いとか言ってくれるかも」 


 アメリアはと言えばこの場は引くべきだと考えているようだった。


「いちいちうるせえアマだなあ」 


 アメリアとかなめがごちゃごちゃとまた喧嘩を始めた。黙って二人を見つめていたカウラだが覚悟を決めたと言うように顔を上げた。


 かなめは静かに階段を登っていった。誠とカウラはその様子を見ながら静かに彼女が登りきるのを待っていた。


 そのままかなめは壁の向こうをのぞき込んだ。そしてそのままついて来いというハンドサインを出した。誠、カウラはそのまま銃を手にゆっくりと階段を登った。


「アイツ等も水島とかいう奴を見失ってるみたいだな……なら目が良い分こっちに分がある。アタシ等は水島を捕まえればいいだけだ。それが済んだら逃げ出して、ラーナが応援で連絡している後続の県警やかえで達と合流して袋叩きにすればいいだけの話だ」 


 そう言うとかなめは静かに銃を小脇に抱えると腰の拳銃に手を伸ばした。


「おい、カウラやるのか?オメエが決めろ」 


 愛銃、スプリングフィールドXDM40を構えてカウラを見つめるかなめの顔は笑っていた。カウラはしばらく黙り込んで北川の声が下あたりの様子を伺っていた。


「北川も丸腰とは思えねえからな。なあに、水島相手にはこんなのは必要ねえだろ。とりあえず確認しただけだ。ちゃんと入っているな……弾」


 拳銃をホルスターに仕舞うとかなめはショットガンを構え直して誠達に視線を向けた。 


「かなめちゃんらしくも無いわね。緊張してる?それとカウラちゃん、仕切り直すにしても水島をここから連れ出すにしても早く決めた方が良いわよ。どうする?」 


 後から追いついたアメリアの言葉にカウラは力なく笑みを浮かべた。状況としてはいつもの強気がかなめに無いのは誠にも理解できた。


「恐らく『廃帝ハド』配下の連中以外にも水島をここに飛ばした法術師を擁する勢力の介入が予想されるわけだ。北川も慎重に動くだろうな……ならば我々が先に水島を確保できる可能性は高い。行こう」 


 カウラそう決断すると前方をうかがうかなめの後ろから声をかけた。


「カウラ、良い判断だ。北川はそう簡単に尻尾を掴ませない奴の事だ。相手によっては無理はしねえだろうな……もし相手がネオナチ連中だとしたら法術師抜きで兵隊の数で対抗するだろうから人海戦術でアタシ等より先に水島にたどり着いちまう可能性が高いから無茶かもしれねえが、少数精鋭が売りの『廃帝』配下が相手なら恐らく相手は北川と桐野だけだ。こんだけ広い病院で先にアタシ等が水島にたどり着く可能性が高い。何しろアタシには連中にとっては暗闇にしか見えないこの廃病院が昼間の明るさなんだからな」 


 かなめが楽しそうにそうつぶやいた。そして誠と目があったかなめは自分の弱気を悟られまいとそのまま北川が消えていった方向に眼を凝らした。


「カウラちゃん。ショットガンの実弾は持ってる?」 


 後衛を担当しているアメリアが中央に並んで立つ誠とカウラに向けてそう言った。


「スラグ、散弾ともに無しだ。場合によっては西園寺の言うようにこちらでやるしかないな」 


 今度はカウラが腰の拳銃を叩いた。誠もさっと腰に手をやった。誠の腰にも嵯峨に貰ったルガーP08の戦後リバイバルモデルであるモーゼル・モデル・パラベラムがあった。


「ああ、誠ちゃんの拳銃は期待していないから良いわよ。というか撃たないでね、誠ちゃんの弾はどこに飛んでいくか分からないから」 


 誠が拳銃を確認するのを見たアメリアは誠を冷やかすようにそう言った。


「すみません……戦力にならなくて」 


 謝る誠にアメリアは笑顔で返した。それを見て舌打ちしたかなめはそのまま立ち上がって北川の歩いていった方に歩き始めた。


「無駄口はいい、進むぞ……我々が北川や桐野より先に水島に接触できなければすべてが水の泡なんだ」 


 カウラの声に誠の顔から笑顔が消えた。次第に闇夜に沈む廃病院。かなめの目に内蔵された暗視機能と誠の法術師としてのサーチ能力に頼る前進が続いた。


 北川の足音が次第に遠くなる。誠はかなめについていきながらただどこからか飛び出てくるだろう第三勢力を想像しながらショットガンを構えながら進んでいった。



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