第57話 待つしかない戦い
待つ。これが苦手な人が多い。
誠は目の前の頭を掻き毟って暴れだしそうな女性を見ながらその事実を再確認していた。
その典型的な人物、西園寺かなめの明らかに一触即発と言う言葉はこのためにあるのだと言うように引きつった口元を見るたびに誠は大きくため息をついた。
そんなちらちらと自分を見つめて来る誠の視線にかなめはすぐに気付いた。彼女自身も自分が待つことができない人物であるという自覚はあるようだった。
「なんだよ神前。その目……なんか文句あんのか?アタシに忍耐力がねえ?狙撃手に一番大事な精神は忍耐力だぜ?いつ来るか分からねえ標的を微動だにせずに待ち続ける……そんな任務は何回となくこなしてきた。そんなアタシに忍耐力がねえとでも言いたい顔で今アタシを見ているな?神前?そりゃあアタシを舐めてる証拠だ。その制裁を受ける必要がある。そうオメエも思うだろ?何が良い?パンチか?キックか?延髄斬りか?どれでも好きなのを選ばせてやる……アタシは心が広く忍耐強い女だからな……」
大人しくできない大人であるかなめは不機嫌そうに誠に向って因縁をつけた。しかも完全にその自覚があるだけにその鬱憤を晴らす手段として誠を利用する気満々なところがさらに手に負えなかった。
「そんな目で見て無いですよ。それにいつも西園寺さんは何かというと暴力を振るいますけどそれはパワハラですよ。クバルカ中佐はただ睨みつけたり竹刀を振り回したりはしますが危害は加えてきませんよ。まあ、僕が中佐に要求されている内容自体がすでにパワハラなんでその点では同レベルと言われるとそれまでなんですけど」
ちらりとその様子を伺っただけだというのに誠に向けてかなめは因縁を付けてくる。
「その面がなんでもない面か?どうせおとなしくしてろとか言いてえんだろ?言いたきゃ言えよ。その方がアタシもすっきりする。それとアタシが聞いたのは、アタシがすっきりするためにオメエがサンドバックとしてどんな役に立ってくれるかだ。オメエがこの部屋の隅にでも立って、アタシがイラっと来た時の為のサンドバックを務めれば問題はすべて解決する……違うか?」
明らかにかなめは誠に因縁をつけることで退屈に打ち勝とうとしていた。
「止めなさいよ!かなめちゃん!誠ちゃんはサンドバックにはなりたくないって顔をしているわよ!そんなんだったらかえでちゃんみたいに変態の極致に落ちる道を誠ちゃんは選ぶわよ!そんなのは私は嫌!かなめちゃんはお金を持ってるんだから、端末でスポーツ用品店のサイトにアクセスしてちょうどいい大きさのサンドバッグを取り寄せればいいじゃないの!そこの隅は蜘蛛の巣だらけで誰も近付きたくないんだからその下にサンドバッグを置いて殴るでも蹴るでもすればいいんじゃないの?」
アメリアの声に立ち上がりかけたかなめが息を整えるように深呼吸をして誠の目の前の席に腰を下ろす。誠はそれを見てようやく安心して目の前の端末に記されているアストラルゲージのグラフに目を向けた。
「西園寺。気持ちはわかる。動きたいのに動けないのは辛いものだ。例えば待ち合わせ時間が近づいている時に台がリーチから大当たり面へと進んでしまった時。私もよく同じ気持ちになる。だが、神前をストレス解消の標的にするのは止めておけ。貴様は先ほど何度も同じように標的を待つ狙撃任務に従事したと言っていた。だったら今回も同じ任務だと思え。貴様のことだからその時は標的を確実に無力化したと自慢したいんだろ?その時出来たことがなぜ今できない」
カウラの例えは大概はパチンコ絡みだった。誠はため息をついてこんなところにまでパチンコを持ち出さなくても良いのにと思った。
「分かって貰いたかねえよ!サンドバッグを買う?この任務が終わったらそいつをどこに置くんだよ?寮のアタシの部屋に持ち帰れとでも言うのか?あの杉田の爺さんの面を思い出すような品を部屋に置くなんて御免だね!それと、カウラ。良いことを言ったつもりでオメエのパチンコ依存症と一緒にすんじゃねえ!それにその例え、全然今のアタシの心境を言い当ててねえ!」
気を使ったカウラの言葉にもかなめは不機嫌に対応した。誠も思わず苦笑いを浮かべるがすぐに察してにらみつけてくるかなめの視線を避けるように身を伏せた。
すでに警邏隊の巡回が始まって二日。いや、まだ二日と言うべきだと誠は思っていた。直接の接触を避けながらのパトロールでのアストラルゲージチェック。そう簡単に犯人への道が開けるとは誠も思っていなかった。苛立ちの絶頂の中にいるかなめも理性ではそのことは分かっているだろう。しかし彼女の『待つ』と言う言葉に耐える限界はすぐそこまで来ているのは間違いなかった。
さらに問題をややこしくしているのは面倒見のいいランの放つ強力なアストラルパターンによるノイズがあった。肝心なデータが浮き出たと皆がそのゲージに集中すると、そこに巨大なアストラルパターンが現れてすべてをぶち壊しにする。それは、たまたま気が向いて通常の通勤ルートから逸れてアイスを買うためにコンビニで車で寄ったランによるものであることは、その度にキレたかなめがランに電話を掛けると間違いなくその通りの行動をランがしているので一同は全てのデータを破棄して最初からやり直すという無駄な作業を強制された。
これまでのこの事件の犯人が活動を開始して以降のランの行動をすべて把握しようと思えば、すべてのこれまでのアストラルゲージの異常反応をつなげるだけでいいので、ランのどう考えても理解不能な個人情報が嫌でも思い知らされる度に一同はうんざりした気分になった。
そして、今かなめがいつも以上に荒れている原因は昨日からこの捜査方法を提案したラーナが東都の同盟司法局本局に呼び出されていることだとは誠にも分かっていた。本来は彼女は同盟司法局法術犯罪特捜本部の捜査官であり、その主席捜査官嵯峨茜警部の補佐が任務のはずであり、茜が追っている連続斬殺犯に関する情報があればいつでもそちらに出張することが誠達の豊川署への出向の条件でもあった。連続斬殺犯などという派手で腕っ節が強そうな相手を聞いて黙っているかなめではない。こちらの容疑者の15人。男性9人、女性6人の構成だがどれもひ弱そうな面構え。法術が無ければかなめに取ってはどれも相手にするには不満がある存在なのだろう。
かなめが急に伸びをした。重量のある軍用義体に耐えかねて椅子が悲痛なきしみ声を上げる。
「うわー疲れるな!何もしてねえけど!いい加減ランの姐御は隊の地下にある営倉に閉じ込めてじっとしていてもらうってのはどうだ?何かいい反応があったと思ってゲージを見たら次の瞬間ランの姐御の波動で全部吹き飛んでパーになる!姐御はアタシ等を追い詰めるために存在しているのか?そんなに人の捜査を邪魔して姐御は何が楽しいんだ?良いから教えてくれ!」
またかなめは退屈とランの無意識の妨害に負けてそう叫んだ。
「何もしていない人は黙っていてよ!大人なんだから少しは大人しくできないの?それにランちゃんに『お願いですから営倉で大人しくしていてください』って誰が言いに行くの?かなめちゃん言える?私には無理。まさに誰が猫に鈴をつけるかで揉めているネズミみたいなものね、私達は」
かなめの独り言を聞き飽きたアメリアがたまりかねてそう叫んだ。
「なんだ?アメリア。アタシとやろうってのか?いいぜ、勝負は何にする?殴り合いか?飲み比べか?まあどっちもアタシの勝ちは目に見えてるんだが!それと姐御に営倉に入れなんて言う度胸はアタシにはねえ!間違いなく『関の孫六』で真っ二つにされる!そのくらいならこの場でオメエと酒の飲み比べをしているところをあの杉田の爺に見つかってここを追い出された方がよっぽどマシだ!」
今度はかなめの退屈の持って行き場はアメリアだった。
「ホントにかなめちゃんは脳筋ね……付き合ってらんないわ。最初からランちゃんにそんなことを言えばどうなるか分かってるのならそんなこと言わないの!それにそんなに暴れたければこの庁舎の周りを走ってればいいし、飲みたいんなら今からでも月島屋に行けばいいじゃないの。あの店、昼飲みも始めたらしいわよ。行ってくれば?別にかなめちゃんが居なくても仕事は進むから」
アメリアは人をおもちゃにするのは好きだが、自分がおもちゃにされるのは好きではない。
「なんだ!その言い草は!テメエは本当に人を思いやるって気持ちがねえんだな!」
その態度を見てかなめはアメリアに喧嘩を売る。さすがにモノクロの画面でグラフの針の動きばかりを追っていて疲れたのはかなめばかりではなかった。アメリアもいつもなら聞き流すかなめの啖呵につい乗ってしまった自分を恥じるように静かに席に着いた。ラーナのような捜査の専門家がここにいれば説得力のある説教で二人を何とかなだめることはできるのかもしれなかった。
困ったような顔でカウラが誠を見つめた。彼女も軍用に作られた人造人間である。軍務については培養液から出るまでに多くの知識を刷り込まれていたが、その中には警察の捜査活動はあるはずもなかった。たとえあったとしても今の二人には机上の空論と笑われるだけだ。カウラはただ黙っていらだつ二人が暴走しないかどうか監視するほかに手はなかった。
「でも、なんだか引っかかるんだよな……」
相変わらずかなめは冴えない表情で画面を見つめていた。豊川市の主要道路を走る警邏隊のパトカーの位置が彼女の画面の正面で展開していた。何度とないかなめのため息に誠もカウラもうんざりしたような表情を浮かべていた。
「引っかかるも何も……これ以外に方法があるなら教えてくれ。それと貴様が真っ二つになることで捜査が順調に進むようになるのならクバルカ中佐に営倉に入るように貴様が説得するという案は私には悪い案には思えないな」
さすがに頭にきたカウラは手を後ろに纏めたエメラルドグリーンの髪に持っていくとそうつぶやいた。かなめはそれを見て呆然と顔を上げた。その目にはこういう時らしく生気が無かった。
「アタシ等の使っている計器。当然小売はしてないよな。そうだよな、ともかく普通に使ったらランの姐御の居場所を遠くから見つけることが出来る機械としてしか役に立たねえんだもんな。そんなもん欲しがる奴が居るわけがねえ」
他に言うことが無いから言ってみたという軽口のつもりでかなめはそう言った。
「私に聞いてるの?確かに、『ランちゃん探知装置』としてはこの機械は優秀ね。ランちゃんを怖がってるやくざ屋さんとかは欲しがるかもよ?他にも地球圏のいつランちゃんが激怒して滅ぼされるかもしれない国々の人達も。これさえあればいつでもどこでもランちゃんがいつどこで何をしているか分かるんだから。まあその結果それを知ったヤクザ屋さんや地球圏の指導者たちは今のかなめちゃんのように頭を抱えて転げまわるしかできることは無いんだけど。でも便利よね……ランちゃんのおもしろおかしい文化趣味があからさまになっていく様は私には結構刺激的よ。この前も近くのレンタルビデオ屋で『仁義なき戦い』を恐らく全シリーズ丸々借りたことが分かった時なんて結構笑えたけど。さらに電話を入れたら今はネット配信されてる『トラック野郎』シリーズを見ているなんて言われた時は正直目が点になったし」
アメリアが驚いたように目を見開いた。そしてしばらく考えた後ようやく口を開いた。
「でも、ランちゃんの男の趣味がどうやら高倉健から菅原文太に変わったことなんてどうでもよくって、この技術を菱川が手放さないなんてことは当たり前じゃないの。東和きっての財閥、菱川グループの切り札よ。そう簡単に売れる代物じゃないわよ。さっき言ったようにやくざ屋さんはまだしも、いつ自分の国の大統領の後ろに『関の孫六』を抜いて鬼の形相をして立っているか分からないランちゃんの位置を特定できる便利な機械なんて、地球圏の東都の連絡事務所には常備しておきたいんじゃないの?地球圏の国々は。さっき言ったように東和駐在の情報関係の駐留武官はどうしようもない昭和の芸能事情が嫌でも頭に刷り込まれてうんざりするけど、そんなこと本国に報告するわけが無いんだから。ただ、東和としても地球圏に対する抑止力としてランちゃんの存在はかつては抑止力こそが存在意味だった核に匹敵するんだもの。いくらお金を積まれても東和政府がこの技術の持ち出しを許すわけないじゃない」
アメリアの回答に画面から目を離さずに満足げにかなめはうなずいた。そしてそのまま誠の顔を一瞥すると再び画面をモニターに向けた。
「法術関連の学会とかでは話題になっているのかな、このアストラルゲージとかは……またランの姐御の話をするなよ?それをするとランの姐御が嫌な顔をするお袋の前でもこのゲージは同じ反応をするというアタシの恐れてる最悪の結論にたどり着いちまう……お袋は……かえでに似て貴族趣味の極致だからな。下野の博物館にある『源氏物語絵巻』の一番古いのを国の全財産を質草にして東和の文部省から買い取ってそれをくれてやれば分刻みで位置情報をその国に教えてもらえるんじゃねえのか?」
かなめの関心はアストラルゲージが量産されているかにあるようだと誠は思った。
「そんなランちゃんばかりじゃなくってかなめちゃんのお母さんの趣味に無駄なお金を使って何がうれしいのよ。それにそんなあの二人の危ない人達の監視のためにアストラルゲージは開発されたわけじゃないのよ。二人ともアレを開発した東和共和国に危害を加える可能性はゼロなんだから。だからこそ東和共和国はこの技術を独占……いいえ、独占したつもりでいるだけかもしれないわよね……ランちゃんもかなめちゃんのお母さんも東和共和国ではする事なんてたかが知れてるけどそれ以外では本当に何をするか分からない……」
かなめの質問に気づいたことがあるというようにアメリアが顔を上げる。その様子でカウラは大きくうなずいてかなめを見つめた。
「アメリアも気付いたか。クバルカ中佐、そして西園寺の母親の西園寺康子女史。確かに遼州圏で何か事を起こす可能性はゼロだがそれ以外ではいつ何を起こしてもおかしくないと地球圏は常に考えている存在だ。そして、それより劣る法術師がこの遼州圏には無数にいると考えればそれに備えようと言う考えが地球圏、そして遼州圏の国々で生まれないと考えないはずがない。それにこのアストラルゲージを作った菱川精密機械のこの製品に関する公表されているデータを見てみたが法術関係の研究をしている国の機関ならどこでも同程度の製品は作れる程度の技術の集合体だと私は感じた」
言葉に詰まったアメリアを見るとカウラは静かにそう言って一同を見回した。
「カウラちゃんもそう感じたんだ……そうよね、アレはどこの国でもそれが必要だと感じる感性があれば作れる代物なのよね。そして事件を取り上げた新聞に目を通す程度の余裕のある東都の大使館や連絡事務所の武官を抱えている国なら……確かにランちゃんがこれまで誰にも尾行されてるところなんて見たこと無いものね。ランちゃんなら尾行者が居ればすぐにその存在に気付くはず……というか、時々間抜けなやくざ屋さんの鉄砲玉が拳銃を持ってランちゃんを尾行しようとして返り討ちに遭うなんてよくあることだものね。そんな感性の無いやくざ屋さんだからそんな間抜けな真似をする。でも国家という数多くの官僚いうAIとは違う自分で0~物を考えて視線を変えて物事を見ることができる人間がその支配に関わっている組織ではそのようなアイディアは何処でも湧いて出ると考えるのが自然なこと。だから遼州人をかなり誤解している地球圏の国家組織の人間がランちゃんを尾行するなんて無謀なことをする可能性も無いし、そもそもあの機械と同じようなものがあればその必要がそもそもない。そして、その使い道は単なるランちゃん監視装置以外にも色々使える……例えば今回の特殊過ぎる法術師と接触を取るためにその場所を特定したいときとか……」
アメリアはかなめのつまらない一言から最悪の事態を想定していた。
「つまり、その連中は私達より先にターゲットにたどり着いてもおかしくないな。以前、神前が言っていた最悪のケースは十分あり得るケースだった。そう言うことか」
アメリアとカウラ。二人の言葉に誠はようやく結論を知ることになった。
「それじゃあ……急がないと!」
誠が立ち上がりかけたところでアメリアがそれを制した。
「だからこれが一番早い方法なの!全宇宙の国家組織は同じ方法で今回の犯人を捜しているの!これ以外の方法があるのなら今すぐ教えてよ!誠ちゃんは理系なんだからアニメに出てくる発明家みたいに作っちゃってちょうだいよ!無理なんでしょ?だったら焦っても仕方ないわよ!要するに地球圏の国々よりも先に私達がこの犯人を特定できれば勝ちなわけ!ただ、あちらが先に特定したら負け!だったら今の状況でただ運を天に任せる!それ以外に手はないわ!」
半分やけになってアメリアはそう言い放つと椅子の上で伸びをした。
「クラウゼ中佐……」
泣き顔で誠はアメリアに目をやるがアメリアはかまうつもりは無いというようにそのまま画面に目をやっていた。
「アメリアの言う通り後は天運だけだ。我々が犯人にたどり着くか、それとも法術師の戦力化を狙う地球圏の国々が犯人にたどり着くか……クバルカ中佐のノイズが邪魔になっているのはこの場合は逆に我々にとっては有利な状況と言えるな。連中はクバルカ中佐の日常生活については我々より知識が浅い。だから、我々は中佐が気まぐれに変わった行動をとらない限りそのノイズをあらかじめ予見してデータ収集ができる。その点、連中には中佐の行動パターンなど知らないはずだ。その分我々にアドバンテージがある」
カウラもまた誠をフォローするつもりは無いと言うように画面を眺めながら冷えたコーヒーを啜っていた。
「話は変わるけどよう。そんな面倒なことは抜きにしていっそのことあの茜が追ってる人斬りとやらがこの犯人を見つけ出してぶった斬ってくれれば話が早ええのにな。どうせこの犯人は不死人じゃねえんだろ?法術を乗っ取られてキレた辻斬りが怒ってそいつを斬ってくれれば何もかもなかったことになる」
半分やけ気味にかなめはそうつぶやくと下品な笑みを浮かべた。
「不謹慎なことを言うわね、かなめちゃんは!それって単に死体が一つ増えるだけじゃないの!私たちがここに出向してきた意味がまるで無くなるわ!その意味考えたことがあるの?だから暴力馬鹿は嫌いなのよ」
アメリアがかなめの暴言にぽつりとつぶやいた。しかし誰も本気で反論する気はない。
実際心の中ではこのランのノイズを除去してはそれがすぐに別の角度からのランのノイズに邪魔されると言う無意味な作業にこの場にいる人間はうんざりしていた。
「僕たちのこの果てしなく続く徒労もそうですけど、警邏隊の人達の忍耐には感服しますね。これだけ何もなくても順路を着実に巡回している……警察に入らなくって本当に良かったな。僕たちはこの事件が終わればこの果てしないクバルカ中佐の与える徒労から解放されますけど警邏隊の人達はそれを年がら年中続けてるわけですからね」
すでに二日目で誠達は警察官僚の忍耐強さに感服させられていた。それを素直に口に出しただけなのに誠はかなめから殺気のあふれた視線で睨まれた。
「まあ待ちましょう。他に方法は無いもの……ランちゃんがどうしようもない以上他に方法は無いわ」
アメリアはそう言いながら手持ちの端末で乙女ゲームを再開した。




