↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第十八章 『特殊な部隊』のやり方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/75

第44話 腹が減ってはなんとやら

「あ……やっちゃった……。かなめちゃん!かなめちゃんはうちではランちゃんとかえでちゃんに次ぐ本気を出したら人が死ぬ可能性のある人なんだからそのくらいの自覚を持ちなさいよ!まあ、ランちゃんは完全にそのことを理解しているから問題を起こさないし、かえでちゃんはそれ以前に男子が喜ぶ変態行為の方が好きだからこちらもうちの寮では問題になることは無い。でもかなめちゃんが本気で暴れたり銃で人を撃ったりしたら普通の人は死ぬの!いい加減それくらい分かってよね!って大丈夫……ああ、西君。じゃあ大丈夫ね♪」 

挿絵(By みてみん)

 よく見ればかなめの一撃を受けたのは部隊最年少の整備班員の西高志兵長だった。それが分かるとアメリアは箸を止めてうどんを食べるのを止めてかなめを嗜めていた態度を翻して再びうどんを食べ始めた。


 出勤時間間際。食事を終えて安心しきっていたところへの一撃に思わず西はうずくまった。


「ごめんね……馬鹿が暴れて。でもその様子だと大丈夫そうよね。まあ運がよかったから今日宝くじを買ったら結構大当たりとかするかもよ♪」 


 西に関心を失ったうどんを食べ続けるアメリアの謝罪にはまるで誠意の感じられない。


「ええ、大丈夫です……鼻血も出ていないみたいですし……確かに西園寺さんに殴られて血を見ないということは今日はツイているのかもしれないです。それもそうですね、今日は帰りに宝くじを買うことにします!」 

挿絵(By みてみん)

 西は顔を抑えながらもなんとか自力で立ち上がった。鉄の規律と結束で知られる整備班員はその様子を見ながらもニヤニヤ笑って見せるだけ。まるで助ける様子も無い。そこには日ごろの西への整備班員の嫉妬があった。


 部隊一の人気者、部隊付き看護師の神前ひよこ軍曹と彼が付き合っているのは公然の秘密だった。当然、嫉妬に狂う技術部員達は西を目の敵にしている。


 しかし、気が利く存在で整備の腕も随一で整備班長の島田のお気に入りの西に手を出す度胸のある技術部員は一人としていない。腕力で『特殊な部隊で危ない三人の女』と呼ばれるかなめ、カウラ、アメリアが来る前のこの男子下士官寮を支配し、現在でも技術部の階級が上のハッカー集団の士官たちを腕力で言うことを聞かせているヤンキー島田の逆鱗に触れる西への嫌がらせなど彼らには死に等しい選択と言えた。


「誰か助けてあげなさいよー。同僚でしょ?いつも同じ職場で働く仲間じゃないの……私は今食事をしているから助けられないけど♪」 


 そんな技術部員の感情をよく知っているアメリアの明らかに助ける気の無い言葉が響いた。あからさまに助ける気が無いアメリアの態度を見て誠も技術部の寮生も下手に西を助けてもアメリアになんか奇妙ないたずらをされるのではないかとの警戒感から動けずにいた。


「べ……別に大丈夫ですから。さっきも言いましたけど、鼻血も出てません、あざにもなって無いと思いますよ。僕が上手く避ければよかったんですよ。アメリアさん、大事にしないでください」 


 西はそう叫ぶとそのまま鼻を押さえて食堂を飛び出して行った。快かなとそれを見送る古参兵達をアメリアは白い目で眺めた。


「西が出て言ったな?あの格好、普段と違うな……しかも今日はアイツは久しぶりの非番……ああ、ひよこの奴も非番だ。もしかしてデートか?西……この彼女いない率ほぼ100%の『モテない宇宙人』遼州人の国の東和で、20歳で成人男子のほとんどが結婚しているアタシやオメエの生まれた国の甲武の常識が通用すると思うなよ……アイツは今のアタシの一撃では鼻血を出さなかったが、そんなひよことイチャイチャしているところを東和の『モテない宇宙人』の遼州人のヤンキーが見逃すと思ってるのか?随分と危機感の薄い奴だ。まあ、アイツの待つ悲劇的なデートの運命はどうでもいいから、それじゃあ行くか!」


 元気よく食堂を出て行こうとするかなめの肩をカウラが叩いた。 


「後で西に謝って置けよ。確かに西がひよことデートをするなら数回カツアゲや因縁をつけられて喧嘩を売られることは予想されることだが、アイツも軍人だ。そのくらいの覚悟があるからひよことデートをするという東和では無謀とも思える行為に出たんだろう。しかし、そんなことはどうでもいいことだ。貴様の先ほどの行為は明らかに『モテない』ことで因縁をつける遼州人の東和のヤンキーと同レベルの話だ。同僚ならば貴様には西に謝る義務がある」


 カウラは釘をさすようにかなめにそう言った。


「アタシは上官だぜ……面倒くせえ!それにその『モテない』人間にやくざが居た場合はアイツは今夜にはドラム缶にコンクリと一緒に入れられて東都湾の藻屑と消える可能性がある。そうしたら謝ろうにも謝りようがねえだろ?」 


 かなめがつぶやくようにそう言うとアメリアもカウラも呆れたような視線で見上げた。


「かなめちゃん今日の夜か明日の朝にでもちゃんと謝りなさいよ。大人でしょ?確かに西君だけモテるのは結婚相談所で見合いを百回して全部一発で断られた私としてもムカつくけど、それはそれ、これはこれなんだから。私程度の適度な嫌がらせは良いけど物理的に痛みを与えるのは完全にアウトだわね!私は断られた回数なら銀河屈指よ!アニメショップのくじならこれくらいはずれを引き続ければ何か凄い商品がもらえるのに何で結婚相談所はそう言うものを用意してないのよ!まあ、そんな気が利かないから辞めてやったんだけどね!」 


 そんなアメリアの一言にかなめの顔がゆがんだ。


「分かったよ……後で謝っておくから。そん時アイツがこの世の人だったらな!アイツが東都湾の藻屑と消えるのならば謝る必要はねえ!ぜひアイツにはひよことイチャイチャしているところをイラついたヤクザに因縁をつけられてくれ!」 


 言い訳がましくかなめはそう言うと頭を掻いた。


「ちゃんと謝るのよ!これが隊内の話だから良いけど豊川署で同じことをしたらサーバとの連絡を切られる程度じゃすまないわよ!まあ、豊川署の署員は全員『モテない宇宙人』である遼州人だから結婚できそうなのはあの明らかに気に入らない腰かけ程度の気分で署長をやってるあのとっちゃん坊やくらいでしょうけど」


 アメリアはそう言うとそのまま立ち上がった。手にはどんぶり。誠も今度はアメリアの手を煩わせまいと自分のどんぶりを手に取った。


「行きましょ!別にここで時間を潰していてもらちが明かないわ!それに県警が一体何を私達から隠したいかなんて非常に興味深いじゃないの!知的好奇心が刺激されてくるわよ!」 


 そのままどんぶりをカウンターに返すとそのままアメリアは出口へと向かった。

挿絵(By みてみん)

「そうだ、ラーナ。飯は食ったか?そう言えばオメエが飯食ってるところアタシは見たことねえんだけど……飯は食うのか?遼帝国生まれと聞くと叔父貴のことが頭に浮かぶからな。あの叔父貴はそもそもあの誠ほどではないがそれなりにデカいなりを期限切れカップ麺を朝昼晩と食うことで維持しているという信じられねえ行動をとっている。オメエもそうか?ああ、あれは不死人だからできるのか。普通に死ぬ遼州人なら栄養が偏って病気になるな、あの食生活ならば」 


 いつの間にか手に湯飲みを持ってくつろいでいたラーナにかなめが話題を振った。突然のことに戸惑うように視線を泳がせた後、静かにうなずいた。


「ええ、まあ……軽くですけど……アパートで蕎麦を食べました。おいしかったですよ。実家が蕎麦農家なんで蕎麦粉ならうちに売るほどありますから」


 ラーナは照れながらそう言った。 


「食べたのならいいけどな。神前。アタシはおやつが食べたい。なんとかしろ!島田の頼みは何でも聞くオメエだ。当然直属の上司であるアタシの言うことは聞いて当然だよな?」 


 突然のかなめの一言。誠は先週整備班の新人が買ってきた月餅(げっぺい)が厨房の冷蔵庫にあることを思い出して立ち上がった。


「ああ、誠ちゃん私のも!この前小火器管理室に来た新人君が異動前の旅行で遼北旅行に行った時に買ってきた月餅があるんでしょ?それを取りに行くのなら私のも持ってきて!」 


 アメリアも叫ぶ。誠はそのまま厨房に飛び込んだ。


 食事当番の管理部の面々が冷たい視線で大きな業務用冷蔵庫に飛びつく誠を迎えた。


「相手が女性ばかりで……うらやましいねえ……とても『モテない宇宙人』の遼州人とは思えない生活だ。と言うかお前は本当に遼州人か?その辺が不思議に思えるよ」 


 洗い場で背中を向けている菰田の言葉に肝を冷やしながら誠は月餅を取り出すとそのままカウンターに走った。先ほど慌ててかなめが湯飲みを返したことと、カウラの湯飲みが無いことを思い出した誠はそれをトレーに乗せると急ぎ足でかなめ達の所に辿り着いた。

挿絵(By みてみん)

「ご苦労」 


「ありがとうな」


 当然のことのようにかなめは受け取った。カウラはすぐさまポットに手を伸ばした。


「本当に……神前曹長、いつもお疲れさまっす」 


 そんなラーナの気遣いの言葉を聞いて誠は苦笑いを浮かべた。


「いつものことですから」 


「そうだな、いつものことだ」 


 かなめはそう言うとうまそうに月餅を口に運んだ。


「そう言えば機動隊のパスでサーバーにアクセスするんだよな。機動隊の部隊長権限でどこまで入れるんだ?」 


 カウラにポットから番茶を注いでもらったものに手を伸ばしながらかなめがつぶやいた。


「まあ現場の責任者クラスとなると捜査権限も限られてくるでしょうからある程度限定されるでしょうね……でもねえ。かなめちゃん。何の為にかなめちゃんがいるのよ。そういう時は……強引にね♪」 


 アメリアは恐ろしいことを平然と言ってかなめに目を向けた。


「おい、アメリア。アタシを犯罪者にしたいのか?それにアタシはハッキングはあまり得意じゃねえんだ。まあ、生身のテメエ等と比べたら比じゃねえのは事実だけどさ」 


 アメリアの明らかにハッキングしろと言う態度に苦笑いを浮かべるかなめ。だが冷たくなった番茶を啜りながら誠はどうせ証拠が見つかるまで止めてもかなめがやたらとアクセスする光景を予想して苦笑いを浮かべた。


「じゃあ、皆さんいいっすか?」 


「あわてるなラーナ。茶ぐらい飲ませろよ」 


 月餅を頬張りながらかなめがつぶやいた。アメリアはそれを見て呆れたように大きくため息をついた。


「おい、アメリア。その態度は何なんだ?オメエはアタシがのんびりしようとするといつもそんな態度を取るな。いい加減潰すぞこのアマ!」 


 アメリアとかなめの掛け合い漫才を見ながら仕方が無いと言うように笑うカウラと誠は立ち上がった。かなめも湯飲みを置くとそのまま静かに立ちあがった。


「それじゃあ食事も済んだ!アタシらなりの捜査の始まりだ!それと……アタシ等の食器は神前がかたしておけよ」 


 かなめはそういい残してラーナ達と一緒に食堂を出て行った。置き去りにされた誠は厨房の当番の同僚達から冷ややかな視線を浴びながら仕方なく湯飲みを手に洗いものの棚に運んだ。

挿絵(By みてみん)

「完全に尻に敷かれてるな……良いざまだ。ベルガー大尉以外は」


 そんな菰田の厭味ったらしい声が背後から聞こえた気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。