第14話 かえで教官
ランの許可を受けてかえでは相変わらずの凛としたまさに男女誰をも惹きつけてやまない美貌と知性を持ち合わせた彼女らしい余裕のある態度で誠のそばまで近寄ってくる。
誠はそのしぐさの一つ一つがどこまでも彼女らしい計算し尽くされたものであることに少し身構えるとともにその態度が自分への善意の表れなのは知っているのでそれを無下にもできずにそのままその場に立ち尽くしていた。
「ああ、神前曹長。色々きみの射撃スタイルには矯正すべきところがあるけれども今回でそのすべてを直すことは僕はするつもりはない。一番肝となる重要なところだけをレクチャーしよう。まず、銃の握り方から行こうか。元々君の選んだショットガンは設計自体が君ぐらいの身長の人間が撃つことを前提に設計されている。僕は君に比べると小柄だからその点を考えてグリップの持つ位置やストックを当てる時の角度を微妙に調整しているんだ。その点、神前曹長にはその必要は無いからね。ただ、君は左利きで引き金は左で引くし、右手でグリップ部分を操作することになる。そのことを頭に入れたうえで構えをしっかりと自分のものに出来れば、自然と君のこの銃を撃つ時の型はできる。それさえできてしまえばあとはその型に従って銃口を標的に向ければ間違いなく弾は思う通りの場所に着弾することになるんだよ。それから先はあとは微調整だけの問題なんだ。今日はそこの所だけを直しておくことにしようか」
そう言うとかえでは誠に自分の息がかかるところまで近寄ってきた。誠はその妖艶な笑顔と大きすぎる胸に息をのんだ。
「まず、先ほどの神前曹長の射撃姿勢とその結果を見たところ君はこの銃が撃つ弾丸が重いと言う事実を理解していないように僕には見えるんだ。ライフルが軽量の弾丸を高初速で撃ち出すことを目的とした殺傷兵器であるのに対し、ショットガンは重い弾丸、例えば重量があり破壊力を重視した単体のスラグ弾や、多数の鉛玉がシェルの中に入っている散弾などを射撃する性質のある銃器なんだ。飛ばす物質に重量があるとなればそれに殺傷能力を与えるにはそれに必要な炸薬の量も増えるわけで炸薬が増えれば当然反動は大きくなる。当然その反動に備えてしっかりと銃をホールドする必要があることは理解できるよね?君は軽い弾丸をより少ない炸薬で高初速で撃ち出す目的で開発されたライフルには慣れているが、それと同じ気持ちでショットガンを扱えば結果が違うのは君にも頭の中では分かっていることだと思うんだ。あとはその違いがあるということを理解した上で感覚を掴むこと。こればかりはいくら言葉で伝えても意味が無いと思う。その為には回数をこなすことしかないね」
かえではそう言うと誠の耳に息を吹きかけながら銃のストックをしっかりと誠の肩に当てるように動かした。その度にかえではその巨大な胸を誠の腕に擦り付けてきた。誠はそれに耐えながら必死に理性を保とうとした。
「日野少佐……顔が近いんですけど……クバルカ中佐は下半身は駄目だと言いましたけど上半身なら何をしてもかまわないという意味でそう言ったわけじゃないと思うんですけど……それに僕も一応理系なんでエネルギー量と質量の関係くらい言われなくても分かってるつもりですけど」
誠はまともなことを言いながら誠の股間に手を伸ばそうとしては止めるかえでにそう語りかけた。
「それは失礼。そして、きみは左利きだから右手で銃のフォアグリップを握るわけだが、僕がさっきから君の射撃姿勢を見ているとその握りが僕から見ると少し甘いように見えるね。もっとしっかり握ってぶれないようにするんだ。さっきも言った通りショットガンの反動は大きい。当然銃のぶれも大きくなる。あれだろ?僕の毎週送っている愛の無修正動画を見てこれを弄っている時は君の東和最大のモノをもっとしっかり握っているんだろ?その時のことを思い出してみ給え……そんなことを言っていたら僕もまた興奮してきた……」
かえでは生理現象で大きくなってきた誠の股間一撫でしてがらそうささやきかけた。
「それは……その……僕の話はどうでもいいですけど日野少佐が変なことをするとまた西園寺さん達がキレますよ。クバルカ中佐は……ああ、今はアメリアさんを怒鳴りつけてますね。このタイミングだから良かったんですよ……中佐が下半身に触れるのを禁止と言ったら禁止なんです」
とりあえずかえでの言っていることは全て事実なので誠は仕方なく右手の位置をかえでの添えた手に導かれた位置に変えて力を込めて握りしめた。
「そんなことはどうでもいいんだ。ただ見たところ握りはそれでいいね。そして、次は銃を撃つときの立つ姿勢だ。これまで君の射撃は僕も何度も見てきたが君はどうしても銃を棒立ちで撃つ傾向がある。それはいただけないな。銃には反動がある。それを殺さない限り正確な射撃は不可能だ。確かに軽量弾を撃ち出すライフルだったら君の体格ならば今の棒立ちの姿勢でも対応できる。ただ、重い弾丸を使用するショットガンにはその撃ち方では対応できないんだ。反動というものがそもそも存在しないレーザーガンのような粒子を撃ち出すレベルの銃ならいざ知らず、実弾を発射する銃には反動というものがつき物なんだよ。もっと上半身を前傾して銃の反動を抑え込むようにして立つと銃の反動をその上半身の重さを利用してより小さな力で抑えこむことが出来るはずだよ。君のこの鍛え上げられたお尻の筋肉を触ってみればそのようなことは余裕で出来ると僕は信じているよ……ああ、少し僕も気持ち良くなってきたよ。またリンを呼んでリモコンのスイッチを入れてもらいたいくらいだ」
かえでは右手で誠の尻をまさぐりながら左手で自分の胸を揉みしだき始めた。
「これは銃の指導ですよね?セクハラ教室じゃないんですよね?それと今はリンさんも訓練中なんで呼ばないでくださいね?あの人は呼ばれたら馬鹿正直にリモコンのスイッチを最大にしてまたクバルカ中佐が怒鳴りつけに来るのは間違いないんで」
そう言いながらも誠はそのままかえでの言う通り銃を前傾して構えるようにした。
そこに近づいて来たのはかえでの副官渡辺リン大尉だった。
同じ射撃訓練中であるはずのリンが呼んでもいないのに現れたことに驚きながら誠はかえでに言われるがままに前傾した姿勢で銃を抑え込むようにして構えてその場をなんとかやり過ごそうとした。
「かえで様。私とアンは訓練の内容はすべて消化し終えました。それよりかえで様……それ以上誠様のからだを触っていると誠様の本能が暴発してかえで様をこの場で押し倒してしまうかもしれませんよ。かえで様はそれをお望みだと常々おっしゃっておりますのでその願いが叶う瞬間に立ち会えるとはこのリン、これ以上の幸せはございません」
リンの言う通り誠の理性はすでに興奮状態で跳びそうになっていた。ただ、目の前にリンと言うかえでの命令とあれば何をするか分からない存在が現れたことで何とか誠は理性を回復していた。
「あのー……リンさん。なんでここにいるんです?それと今ここでかえでさんの変態脳のスイッチを入れてリンさんは何がお望みですか?その結果僕がどうなるか考えたことあります?」
どう考えてもかえでの変態スイッチを押して誠をトラブルに巻き込むことを望んでいるようなリンの言葉に誠は焦りながらそう返した。
「いいんだ。僕の方ももう我慢の限界が近いんだ。神前曹長。この場で衆人環視の下で、僕の股間の花弁を味わい尽くしてみると言うのは趣向としてはどうだろうか?リン、この記念すべき瞬間を記録に残す用意を。僕にはこの光景を後世まで記念すべき形として残しておくべき義務があるんだ」
またもやかえでは露出狂の本性を現したので誠は苦笑いを浮かべた。
「はい、わかりましたかえで様。このリンの携帯端末は常にかえで様と誠様のそのような記念すべき瞬間に立ち会っても大丈夫なように現在東和の警察組織でも鑑識などの現場動画の画質を求められるものと同機能の動画撮影機能付き携帯端末を持ち歩いております。ですので、誠様がその本能の赴くままにかえで様のすべてを征服する様をすべて記録することが出来ます。ですので、誠様。もう我慢をされる必要は無いのですよ。思う存分本能の赴くままにその快楽に身を任せてください」
リンはそう言うと制服のポケットから一見誠の携帯端末と同じにしか見えない携帯端末を取り出してカメラを構えてきた。
「リンさん!自分の訓練が済んだからって何を考えているんですか!これは射撃訓練です!毎週僕に送ってくれている日野少佐の無修正動画の中とは違うんです!僕が射撃訓練がしたいんです!」
ブチ切れた誠はかえでの絡みつく手を振りほどくとそう叫んだ。
かえではがっかりしたように誠から離れるとレンジに置かれたピンク色の弾丸の入った箱に手を伸ばした。
「それは失礼。神前曹長は今日は興が乗らないということなのかな?そう言う風に僕の魅力に耐え続ける君……僕の魅力にこれまで耐え続けるとはさすが僕の『許婚』と言えるね。僕は今君により惹きつけられているんだ。この東和に来て以来、簡単に僕の魅力に引き込まれて理性を失ってしまう女性を相手にするのはには飽きてきたところでね。遼州人は男性も女性も自分が『モテない』と信じ込んでいるという奇妙な習性を持っているようだね。僕と交友関係のあるセレブの女性達もそれぞれにそのコンプレックスに苛まれていて僕がその女性に興味を持っていると分かっただけで舞い上がって僕の思うがままに僕に身を任せて来るんだ。それも美しく生まれた僕の悲しい宿命なのかもしれないかな?ああ、男は別だ。神前曹長以外の男は絶滅しても僕の良心は少しも傷まない。ああ、話が脱線してしまったね。それでは実射と行こうか……この弾を銃に込めていくんだ」
かたくなな態度の誠に諦めたような表情を浮かべたかなめは箱から銃弾を取り出した。
誠はかえでが先ほど言った言葉にどう考えても数多くのかえでの問題行動が含まれている事よりもようやくかえでがあきらめてくれたかと安心して銃に弾を込め始めた。
「でも、僕の身体はいつでも君を求めている。本部棟の奥の僕とリンしか使わない女子トイレ……他の女子隊員は僕とリンとの愛の秘め事が行われていることを察して近づかないでいてくれているんだが……そこに君はいつでも入る権利がある。この訓練が終わったら……待っているよ……」
弾を込める誠の耳元でかえではそんな爆弾発言をした。誠は思わず銃を取り落としそうになった。
確かに誠が最近はランも飽きてきたらしく距離が短くなってきたランニングを済ませた後にかえでとリンが終業直前まで機動部隊の詰め所にいないことが多い理由がそんなふざけた理由だと分かって思わず唖然とした。
「アンタたちは神聖な職場でなんてことしているんですか!職場はラブホテルじゃないんですよ!」
誠の常識的な感性から引き出された叫びは、かなめが始めた猛烈な勢いの射撃音にかき消された。
「それより今は射撃の訓練がしたいと君は言っていたよね?それじゃあ始めよう。じゃあ、神前曹長。僕の指導した通りの撃ち方で売ってごらん。これまでとは違った世界が味わえるよ」
かえではそう言うと妖しく笑っていた。誠は言われるがままにかえでに強制された射撃スタイルでショットガンに装弾した。
『かなめさんも自分勝手なのはありとあらゆる行動でわかってはいたけど、かえでさんも勝手なんだな。これは西園寺家の血筋なのかな?』
どこまでも話題が性的にアウトな話題から急に真面目に射撃をしようと言い出すかなめに諦めたように誠はかえでの言うままにショットガンの銃口をターゲットに向けた。
「ボスン」
射撃音は相変わらず派手さは無いが、誠の銃から出たサンドバック弾はターゲットのわずか上をかすめた。
「惜しい!でも、さっきより明らかに良くなっているね。その調子だよ。確実に君は成長している。続けて」
かえでは満足げに笑うと誠を相変わらずの爽やかな笑顔で見守っていた。
すぐさま誠はポンピングをするとそのまま全弾連射するつもりでいた。
正直このかえでとリンに見つめられ続けるという助教から誠は一秒でも早く逃げ出したかった。
「ボスン、ボスン、ボスン、ボスン」
そのまま、あのかえでが見せた見事なご連射をなんとか再現しようと誠もまた連射をした。
初弾はターゲットのど真ん中に、その他の弾もターゲットの中心付近に確実に命中し、早打ちをした理由はともかく自分でもこれほどにちゃんと弾が的に当たるんだという事実に驚くような結果となった。
「やはり、君には伸びしろがある。いきなり連射をしろと僕は言っていないがそれでもあれだけ命中させるということはその素質は十分にあるということの何よりの証拠だね。もしよければ次に拳銃やライフルの射撃訓練の時も僕に指導させてもらえないだろうか?あの人を怒鳴り散らして殴ることしか知らないお姉さまとは違って僕にはきっと君から射撃に対するコンプレックスを拭い去ることができると思うんだ。ああ、君がその結果成長を実感できた時は興奮のあまり僕を自由にしてくれても構わないよ。何しろ僕と神前曹長は『許婚』の関係なのだから」
誠の上達を褒めつつも、結局は自分の本性を現して見せるのがいかにもかえでらしいと思いながら誠はかえでの笑顔に見とれつつ、弾の入った箱に目をやった。
すでに訓練用に持ち込んだ弾はもう残りわずかだった。
その弾を手に取ると誠はショットガンを裏返して装弾口からショットシェルを装弾する。
「さあ、今の感覚を忘れないうちに次の射撃に移ろう」
そう言うとかえでは誠の理性の限界を試すかのようなかえでによる銃の構え方の指導は続けようとした。
装弾を終えてかえでに指導された通りに誠はショットガンを構えると銃口を下に向けターゲットに正対して立つ。
「いいね、でももう少しお尻を突き出した方が良い……そうだ、手で触っていても引き締まっていて無駄な肉が無いのは神前曹長の良いところだ。じゃあ、始めよう」
そんなかえでのセクハラ後の合図とともに銃口を上げてすばやくターゲットに照準を合わせる。何か誠の構えにおかしなところが見えるたびにかえでから撫でられるとなれば体力と理性には多少の自信のある誠でもさすがに腕に痺れが来ていた。
隣のレンジでこの様子を見ていたかなめの口元は怒りに引きつっていた。
その隣では先ほどまで何やら怒鳴り合いをしていたアメリアがニコニコ笑いながらかなめと誠とかえでの様子を見つめていた。
こちらも射撃訓練を追えたらしいカウラは時折誠の下半身に堂々と手を伸ばすかえでを見て厳しい表情を崩さなかった。
誠はさすがにギブアップすべきかと考えながら銃を再び胸の前に構えた時だった。
「どうだい、進んでるか?」
突然背中から声をかけられて誠はびくりと振り返った。
そこには部隊長嵯峨惟基特務大佐がいつものようにタバコをくゆらせていた。
「こー言うところじゃ火気厳禁じゃねーんですか?」
かえでの指導が変態行為に発展しかねないとじっと見守っていたランが平然とタバコを吸っている嵯峨に向けてそう言った。どこでも無遠慮にタバコをくゆらせる嵯峨はそんなところだけ姪であるかなめと似ていた。
「厳しいねえ、さすが鬼教官殿だ」
ランの注意に仕方がないというように嵯峨は咥えていたタバコを落として踏みしめた。
「こう言う事もうちのお仕事だからさ。神前にも一応体験しておいてもらわないとね。それとかえでよ、俺はお前さんの義理とはいえ父親なんだ。そんなにあからさまに俺のかわいい部下である神前に好き勝手にセクハラをされると俺としても困るんだわ、やっぱり。俺もどちらかと言うとスケベな方だからランみたいに婚前交渉は絶対認めないと言うわけでも無いんだが、ここは職場だ。俺にはその職場の環境を守る責任が有るんだ。そこんところ分かってくれると嬉しいな」
嵯峨はタバコをもみ消すと苦笑いを浮かべながらそう言った。
「義父様これはセクハラではありません『許婚』としての愛の奉仕です」
かえでははっきりとそう言い放つと嵯峨をにらみつけた。
「かえで、テメエは何かって言うとその『許婚』ってことを持ち出すんだな。それさえ言えば内をしても許されるとでも思ってんのか?見てみろ……どう見ても神前も嫌がってんぞ。まあアタシとしてはかえでのセクハラの対象が神前に移ってホッとしてるんだがな。ただ、そのターゲットに神前を選ぶな。アタシが不愉快になる」
皮肉を込めた調子で叔父である嵯峨に向けてかなめはそう言い放った。
「本当にそう思ってるの?かなめちゃん。さっきから歯を食いしばって仲良くしている誠ちゃんとかえでちゃんの方をにらみつけながら射撃の最中も気もそぞろだったように見えたんだけど……誠ちゃんを取られたことがそんなに悔しいの?まあ、私も悔しいし、まだ勝負はついてないわよね。かえでちゃんは性欲では誠ちゃんを手に入れたかもしれないけど心までは手に入れていない。その点に私達の付け入る隙は有るかも」
アメリアは引きつった笑みを浮かべているかなめの表情の変化を見逃さなかった。
「ここは銃の訓練場だ。色恋の話をする場所じゃねー!……オメー等もまだ予備の弾として持って来たまだ開けてねー箱があんだろ?それは今回は使う必要なねーんだが、来年こんな面倒な銃を扱う時間が減ると思って今撃っちまえ。じゃあとりあえず装填」
ランの言葉に誠はテーブルの上の箱から一発ずつショットシェルを取り出すと銃の下のローディングゲートから装填を始めた。
「もっと入れる時は丁寧にするんだと言ってるだろ?僕に入れる時は少し乱暴で激しすぎるくらいだと嬉しいのは確かだけど」
装弾する誠の耳元で相変わらずそう言いながらかえで耳元でそうささやいてくる。
「何度も言うがどの銃でも基本は同じなんだ。狙って標的に当てる。簡単だろ?それと日野少佐。銃の指導以外で不用意に神前に触るのは止めていただきたい。見ていて不愉快な気分になる」
カウラの教えも射撃にコンプレックスを持っている誠には逆に堪える言葉だった。
「ベルガー大尉も嫉妬かい?さすが僕の『許婚』である以上、どんな女性も神前曹長には惹かれて当然か……だって僕がこんなにも神前曹長に惹かれているのだから……神前曹長。じゃあ射撃準備だ」
誠はようやく誠に纏わりつくのをやめたかえでから解放されると静かに冷静にと自分にそう言い聞かせながらフォアグリップを引いて弾を薬室に叩き込んだ。
「ボスン」
引き金を絞ると何とか25メートル先の標的が銃撃を受けて揺れた。
「なんだよ当たるじゃないの。かえでのやってたことはセクハラだけかと思ったらちゃんと指導もしてたんだな」
嵯峨はかえでの得意げな表情を見ながらそう言って笑った。
「叔父貴。そりゃあ止まっている的だからな。これで外したら間抜けとしか言えねえぞ」
興味深げに標的を見る嵯峨にかなめはそうつぶやいた。
「でもさっきは外したな」
再びのカウラの言葉にがっくりと誠は肩を落とした。誠は脳内はかえでの送ってくる無修正動画に移る快感に身もだえる全裸で屋敷に住む使用人達に責め立てられるかえでの姿で一杯になりながらこんな苦行のような訓練を続けることに苦痛を感じていた。
「ふーん。神前も的に当てることができるんだ。うちに来た時はライフルで20メートル先の万ターゲットすら外していた神前がねえ……いい勉強になったわ」
そうつぶやくと嵯峨はそのまま背を向けて射場を後にした。
「叔父貴。何しに来たんだ?言いたいことがあるならはっきり言えよ!」
元々かなめの生家である甲武大公西園寺家の三男から大公嵯峨家へと養子に出された嵯峨惟基。戸籍上はかなめの叔父に当たるのは誰もが知るところだった。
そんな嵯峨の突然の登場と気まぐれな退場にかなめは怒りに駆られたような視線を去っていく嵯峨の背中に投げた。




