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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第三章 『特殊な部隊』とドキドキ射撃訓練
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第11話 ラボ行きの決まった超兵器

「神前、そう深刻な顔をするんじゃねーよ。そもそもあんなもんはアタシには必要ねーんだ。『方天画戟』は隣の工場でデータ収集のためにしばらく預かるそーだ。管理部の高梨部長に言わせると本年度は予算的にうちの資産にしておくと不味い状況なんだそうな。まーアタシとしてもあの『呪われた機体』はあんまり見たくねーかんな。個人的には結構なことだとしか言えねーな。34年前、アタシはあれで初めて人を殺した……殺しちゃなんねー立派な人物をだ。相手が軍人だからと言ってアタシは今でもそのことを悔いている。そんな悔いとその後の虐殺の記憶が詰まった機体にはアタシは乗りたくねーんだ。見るのもうんざりだ……思い出したくもねー」

挿絵(By みてみん)

 ランはそう言って苦笑いを浮かべた。 そこには強がりとも本音とも思える弱弱しい笑みに誠には見えた。


「でもせっかく手に入れた強い機体でしょ?いくら予算が無いからってそれを簡単に手放すなんてもったいないじゃないですか?移動するのだってそれなりに経費はかかるんですから。それを何でまた……それに『呪われた機体』ってどういうことですか?」 


 誠はランが『方天画戟』を手放す気満々なことに不満だった。

挿絵(By みてみん)

「あれでアタシは多くの人を殺した。無罪の抵抗する意思のない人間をだ。命令されたからなんて言い訳になんねーよ。そん時のアタシは今のアタシと違って戦うことがすべてだったというのもそれは今のアタシだから言えるただの誤魔化しにすぎねーことは分かってるんだ。そんな機体にアタシに乗れと神前は言うのか?随分と残酷な奴だな。そんなだからあの機体にはアタシは乗りたくねーんだ。だから高梨部長からうちの予算が足りなくて隣の工場がデータ収集用のオリジナル・シュツルム・パンツァーを欲しがっているという話が来た時にはすぐに飛びついた。アタシの機体は『紅兎弱×54』だけだ。他にはねー」 


 ランは悲しみを込めた言葉でそう語った。


「クバルカ中佐は認識が甘いんでは無いですか?戦場では武器の性能の優劣が勝敗を分けます。聞いた話では『近藤事件』の際も我が甲武の『火龍』が相手だったからなんとか勝利できたという話じゃないですか。それに『ビッグブラザーの加護』はもうありませんよ。確かにあれがあったからこそあんな無謀にしか見えない作戦で義父上やクバルカ中佐が勝利を確信して神前曹長をどうやって法術師として覚醒させた上でこれまで伏せられていた法術をより効果的に公開するかということに集中できたのは事実ですが、もうあのような手段や戦術を選ぶことができる状況ではありませんからね。もしもう一度あのような大軍を率いた部隊を僕たちだけで相手にすることを司法局の首脳部が望んだ場合、その圧倒的な戦力差を覆すにはそれなりの兵器が必要になると僕は考えています。その現状認識は部下として僕が持っているということだけは理解しておいてくださいね」


 一通り射撃を終えた前後に巨大な異物が入っているというのに平然としているかえではランの言葉を聞いてそう口をはさんできた。その状態であくまで冷静な状況分析ができるかえでをさすがだと思うと同時に、誠はそれがほぼ初対面の時からかえでに取っては普通のことだったのだと想像すると相変わらずかえでの変態性には呆れずにはいられなかった。 

挿絵(By みてみん)

「確かに日野が言う通りだ。司法局の偉いさんがそんな無謀な命令を出さねー保証は何にもねーのは事実だ。その時にはこのアタシの我儘が致命傷になりかねねーのも日野の指摘の通りだな。それを言われるとアタシも返す言葉はねーわな。それを考えるとアタシの感情論だけで済む話ならアタシもあの嫌な機体を毎日見る目に遭っても仕方がねーと諦める。まーそれをしたのはアレを操縦していたアタシであってあの機体自体の罪じゃねーかんな。ただ、そんなアタシの感情もあるが、まずは予算がどーにもなんねーんだ。日野は金で苦労したことは私生活ではねーだろ?アタシがアレに乗って戦った遼州内戦。そもそもあの戦いもまさに貧者の戦争だった。隊長に聞いてみ?あの戦争がいかに物資の消耗をいかに減らすかが戦争の帰趨を決するほどギリギリの戦いだって嫌でも分かるぞ。それに甲武は軍縮軍縮でオメーも相当海軍の部隊の再編や給料が止まるのが当たり前の中でどう軍の戦闘能力を維持するのが甲武海軍で最後にオメーがしてた仕事だってアタシは聞いてるぞ?確かに金が無くても戦争をしなきゃなんなかった隊長やアタシとは立場が違うが、軍縮軍縮の今の甲武軍だ。限られた予算に合わせてどの部隊を削減すれば甲武の国防力を維持したまま無駄な金を使わずに済むか、どの艦が費用対効果を満たすことができないと言う理由で退役させるかの会議にオメーは居たんだろ?だったらそのくらい察してくれてもいーんじゃねーのか?」


 ランはかえでの忠告に対して諭すようにそう言って言葉を続けた。

挿絵(By みてみん)

「それにあの『方天画戟』の機体設計とアタシの34年間の戦闘データの蓄積は後で話すがなんでも隣の工場で再びシュツルム・パンツァーの開発を行うにあたり、05式の後継機の参考にするらしい。そもそも40年前は量産不可能な技術を投入した高品質機体だ。その時にはコスト的に不可能だったが現在では制式機として採用できる技術が何かを見極める参考にするみてーなんだ。それにアタシも数々の戦いであの機体の明らかなシュツルム・パンツァー戦ではオーバースペックな部分は知り尽くしてある程度機動にシュツルム・パンツァーとして戦いに勝つには必要な機体の癖をあの機体に覚えさせて戦ってた。だからアタシは現存するシュツルム・パンツァーや飛行戦車を効率よく撃破する戦い方を徹底してきたし、それを見れば今の技術で量産可能なシュツルム・パンツァーや飛行戦車に対抗するにはどのような機体を作るかということに関するヒントくらいのもんにはなると思う。ただ、アレはアタシ並みの法術師が乗ることを前提にして作られてるからどれほど参考になるかは分かったもんじゃねーがな」 


 そう言うとランは苦笑いを浮かべた。


「それって05式の後継機ってことですか?第二小隊に今度の四月に配備される奴ですか?間に合います?もう年が明けたんですよ?三か月でデータ収集から設計、試作機の製造……までは無理ですよね?そもそも隣の工場に今現在シュツルム・パンツァーを三機作る工場の設備を用意するのにどれだけ時間がかかるか……そもそもそう言う戦闘データを参考にして機体を作るなんて言う発想ならそのデータの解析だけで三か月なんてあっという間に過ぎると思うんですけど……」


 誠の間の抜けた質問にランは大きなため息をついた。


「間に合う訳がねーだろーがバーカ!そもそもオメーの言う通りデータ収集自体が今年度中には終わりっこねーや!第二小隊には現行の05式の致命的な欠点であるエンジンの振り方を間違えたことによる機動性の無さを補う改修が施された機体が配備される予定だ!隣の工場が開発の参考にしたいのは次の世代の機体だ!つまり正式採用の中止が決定した07式の後継機の話だ!オメーが『同盟厚生局違法法術研究事件』で示したよーに07式は05式の敵じゃ無かった。この二つの良いとこどりを狙った09式は中途半端で使い物にならなかった。だったら根本的に新しいシュツルム・パンツァーとして設計をやり直す。それが隣の工場の考えなんだわ。『方天画戟』はエンジン出力はとても量産レベルに持っていける品質のものでは無いが、多少スケールダウンして法術を持たないものでもあたかも法術師が乗っているような『干渉空間』を展開できるような機体を作りたいとか隣の工場長は言ってた。まーどー言う機体になるのかはだいぶ先の話になるんだろーな。それこそ二年後になるか……三年後になるか……そん時まで第二小隊に機体無しで勤務しろって言うのか?さっきみたいな変態行為を日野にやり放題で良いから置いておけと言うわけか?その前にアタシの精神が参っちまうぞ」


 ランは遠い目をして射撃場の壁の向こうの菱川重工豊川工場の敷地の方に目をやった。


「確かに海軍省での僕の最期の職場での主任務は削減された予算を反映していかに戦闘継続能力を落とさずに必要経費を落とすかと言うことがメインの仕事が多かったのは事実です。そう考えると二機の高コストの機体を維持管理する能力がこの隊には無いのは見れば僕にでも分かります。やはり予算的にはオリジナル・シュツルム・パンツァーを一部隊で二機保有することは難しいんですね。分かりました。ああ、クバルカ中佐。僕は射撃メニューを一通り消化したので神前曹長の初のショットガンの射撃の指導に当たりたいのですがよろしいでしょうか?」 


 かえでが明らかに誠に対してそう言った。誠は嫌な予感を感じながらランの反応を見た。


「おー……そのくらいは許可してやる。ただ、神前の下半身に触れることは禁止だ!分かってんだろうな!オメーには散々世話をかけされてるんだ!うちにはオメーが来る前から島田と言う問題児を抱えてたんだ!これ以上アタシに余計な仕事を与えるんじゃねーよ!」 


 ランはかえでの言うことももっともで、かえでがショットガンのシューターとしては神業クラスなのでとりあえず限定付きで許可を出した。そして自分も射撃を始めるべくランは射撃レンジで射撃準備に入った。


「どーれ……サンドバック弾か……こいつは銃には悪そうだよなー。袋が破れりゃ砂がバレルにへばりついて……銃の管理の連中も苦労しそうだよこりゃ。火器管理室の連中が全員残業を覚悟した顔をしてた理由がよく分かったわ」 


 ランはレンジに置かれたオレンジ色の毒々しい箱を開け始めた。誠やカウラも仕方がないというようにそのまま射場に上がった。かえでとリンは誠を挟むように立つと息がかかるほどの距離まで近づいて来た。


 誠には嫌な予感が漂っていた。


「神前曹長……君は気持ちよくなりたいかい?僕は先ほど倒れてのたうつほどの快楽に満たされている……君が気持ちよくないのは不公平だと僕は思うんだが……僕は間違っているかな?」


 誠に歩み寄って来たかえでは巨大な胸を誠に押し付けながら耳元でそうささやいた。


「日野少佐……何を言っているんですか?というか、僕まで変態にしないでくださいね?さっきクバルカ中佐は僕の下半身に日野少佐は触れてはいけないという命令が出ていましたよね?聞いてました?」


 突然のかえでの言葉に声がひっくり返りながら誠はそう言った。


「いいから、正直に言い給え。この僕の前後に入っているモノには君の精子が詰まっている。僕が正気を失うまで快楽に浸ることでその中の通常の十倍の量の培養した君の精子が僕の子宮と直腸に流れ込むように出来ているんだ……どうだい?絶頂する僕を生で見る機会はクバルカ中佐の許可が出れば多数あると思うが今見るのも良いものだと思わないかい?」


 そう言ってかえでは隣に立ついつの間にかかなめからリモコンを取り戻したリンからリモコンを受け取ってそれを誠に見せて見せた。


 リモコンのスイッチが入り振動音が誠にも聞こえてくる。


「あのー、僕は訓練がしたいのであって……こんな状況を喜ぶのはうちでは隊長と島田先輩くらいだと思いますよ?」


 そう言う誠はなんとか理性を保とうと必死だった。かえでは次第にリモコンのスイッチを大へと動かしていく。


「はあぁん!神前曹長。もう少しだよ……なんなら触ってみるかい?」


 そう言ってかえでは誠のショットガンを持っていない右手を自分の股間へと導いた。そこにはパンツでは無く堅いプラスチック製の何かがかえでのズボンの下にあることが分かった。


「日野少佐……年中こんなの付けてるんですか?これまでもこの状態で生活していたんですか?うちの実家に来た時もそうだったんですか?」


 誠は好奇心に駆られてそう聞いていた。


「そうだよ。はあっ……ふうっ……勤務中はいつもこれを愛用している……うっ」


 かえではそう言うと思い切り誠の耳を噛んできた。


「痛いですよ!上半身ならいいって話ですか?やめてください!」


 そう言う誠の声はもうかえでには届いていないようだった。最大にしたリモコンを取り落とすとかえではそのまま誠に抱き着いてきた。


「神前曹長……もうすぐだ……もうすぐ僕は気を失うほどの快楽の波にのまれる……そうすれば君の精子が僕の子宮に……来た!」


 そう言ってかえでは膝から崩れ落ちた。


 誠の嗅ぎなれた匂いが付近に充満した。用意良くリンがあたりに消臭スプレーを振りまく。


 何度かの痙攣のあとかえではゆっくりと誠に抱き着きながら立ち上がった。


「……今日もこれで……君を胎内に感じながら……仕事をすることが出来る。僕はなんて幸せな……女なんだろう……」


 かえでは息も絶え絶えにそう言ってきた。


「とりあえず落ち着きましょう……というか……そう言うところが日野少佐から人を遠ざけているような気がするんですけど。たぶんそんな性癖が無ければ僕も少佐を好きになれると思いますよ」

挿絵(By みてみん)

 そう言う誠自身がこの場で一番落ち着いていなかった。



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