第六話-3
ついでなのでちょっと気になったことを訊いてみた。
「ところでそっちの後輩」
「んえ、うちですか?」
「そう、君。微妙によく覚えてないんだけど、合宿のときいたっけ?」
なーんか似たような雰囲気の奴はいた気がするのだが、ウルフカットだったかな? という、それだけといえばそれだけの話だ。問の結果はいかに? その前に、他のふたりから横槍が入ったが。
「東宮くん」「双矢」
「……?」
「君には凛ちゃんがいるでしょ」「お前には御影がいるだろ」
「いやあのすいませんまじで何?」
だから何やねんがすぎる。誰か特定の女子と付き合っててこういうことしてるならまだしも、俺年齢イコール彼女いない歴なんだよなあ。
「え、もしかして東宮くんって年下派だった?」
「え、うち狙われてる? お兄に言いつけとこうかな」
「違いますよ!? というかそういう話じゃないよ!? あと兄君に言いつけられたら俺どうなるんよ」
「境川に流されるんじゃね?」
「どんぶらこどんぶらこって? 桃太郎かよ」
「どちらかというと東京湾のような気がしますけどね」
「ヤクザじゃねーか最悪だよ」
そういえばどんぶらこってなんでどんぶらこなんだろうか。
「それでなんですか、合宿の話でしたっけ? いましたよ。ねー鈴花ー」
「えー、何ー?」
「うち合宿行ったよねー?」
「いたよー」
「ほら」
流れるようにパーテーション挟んだ会話するなよ……。
「あたしの鈴花にちょっかいかけるなー!」
「なんだとー!」
白原も乗るんかい。「私はいつから千夏のものになったの?」という平井の声が聞こえ、何人かが笑うのも同時に聞こえてくる。出所の一つは俺の隣だが。
「まあ、僕もビデオ通話に映ってたのは見てたよ」
「ああ、あのときの」
「先輩ビデオ通話なんてしてましたっけ?」
「ああ、朝飯のときにな」
手帳型のケースでスマートフォンを立てて通話していたので、後を通った後輩女子が映り込んでいたらしい。思えばあの朝は美術部の女性陣にあれこれやられっぱなしだったが、よく考えたら今目の前にいる後輩も美術部じゃないか。こいつが絡んでこなくて助かった、のか?
けどどれだけ記憶を探っても、合宿にウルフカットの女子はいなかったような。
「まー覚えてなくても無理ないですよねー。東宮先輩、ずっと凛先輩につきっきりだったし?」
「やるじゃん、僕その辺りの話全然知らないけど」
「俺も話してないし、凛が話してないならそうでしょうよ」
「いつの間にか名前で呼び始めてるんだよねー、お姉ちゃんびっくり」
出たよ天宮先輩の謎のお姉ちゃんモード。これ始まると厄介なんだよなあ……。
「その話は良いでしょう、野次馬根性ですか」
「俺たちが誘導してみたら、二人ともあっさり名前呼びに移行したんで、こっちも驚きましたよ」
「へえー、良いじゃんその調子でいきなよー。凛ちゃん可愛いし良い子だよー」
「けど一応、俺合宿参加者は他の全員は把握してるんですよ、少なくとも顔見れば分かる程度には。……一人だけ、見覚えないのが目の前にいるんですよね」
謎だ、と考えながら参加人数を部活ごとに分けて計算し直していると、
「うち、夏休み明け直前にばっさりやってるから、そのせいかもですね」
「じゃあそれだよ」
謎の答えは単純明快、髪型が大きく変わったからでした。分かるかそんなん。
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