第六話-2
両テーブルで一通り注文が終わり、各々が飲み物を手に取ったところで、天宮先輩がその場で立ち上がり、全員に声をかけた。ちなみに企画段階では柄じゃないと渋っていたところを、一年生たちに最年長者だからと強い推薦を受けて、断り切れずにやることになったらしい。
「えーと、皆お腹空いてるだろうし、長々喋るのは古来より校長先生の専売特許ですので、ここは手短に……」
さりげなくディスられる全国の校長先生。話が長いのは俺たちが産まれるよりも昔から日本中の共通認識なので、誰も文句は言えまい。ちなみに何人か笑ってる。俺はぎり耐えた。
「今日の打ち上げの注意事項だけ話すので聴いてください。今皆が着席してる二つのテーブルが一四時までの一時間半で貸し切りになってます。席移動は自由だけど他のお客様に迷惑になるような行為はないようにしてください。大丈夫だと思うけどね。では文化祭楽しかった人は飲み物を右手に、疲れた人は左手に持っていただいて……準備から片付けまで五日間お疲れ様でしたー乾杯ー!」
「「乾杯ー!」」
さすがに二秒では収まらないけど、充分短い先輩の挨拶。この手の挨拶が嫌いなのか、あるいは主題ではないから早々に切り上げようということなのか、とにかく挨拶が終わったらあとは喋りつつ飲み食いするだけだ。まだ食事は行き渡ってないので、とりあえず右手に持った飲み物から。
「天宮先輩、それ烏龍茶ですか?」
「そうだよ悪い?」
「誰もそんなこと言ってませんって」
渋いなあと思っただけなんだが。ちなみに俺の手元にはメロンソーダがある。こういう場でもなければまず飲まないからね。
「仕方ないじゃない、最近受験勉強漬けで運動量落ちてるからさー、身長据え置きで体重だけ増えてるんだよ。あんまり甘いものとか摂れないの」
「みなみ先輩細いのにー?」
「ってか、神経すり減らして痩せるとかじゃないんですね」
「勉強してるとついつい甘いものに手が伸びちゃうからね……」
まあ分からんでもない。俺も休日に小説書いてると、半分無意識的に備蓄の氷砂糖を減らしていることがある。体重は年に一回測るだけなので変化の有無は分からないが、俺の場合はあまり増減しているような気はしない。身長も体重も、成長はもう終わったのだろうか。去年から変わってなかったんだよな。
「でもほら、こんなに抱き締めやすいですよ」
「美術部だと君くらいだよ、抱き着き癖あるの。楽しい?」
「はい!」
「わーお、すっごい良い返事だー」
俺たちは何を見せられているというのか。すると天宮先輩の下腹部にしがみついている後輩女子がぎゅるんとこっちを見て、
「やだあー先輩たちー、見世物じゃないですよおー」
「無茶言うな、そっちが俺たちの目の前でやってるんだよ!」
「あ、料理来ましたよ。ネギトロ丼誰でしたっけ?」
「健人だな」
エイズフォーゲルって洋食系のイメージが強いけど、和食もメニューにあるんだよな。さっきまで知らなかった。そして店員じゃなくて猫型ロボットが運んでくるのか、今は。
「あとこれもみたいだよ、フライドポテトと唐揚げ」
「あ、ポテトはうちです。唐揚げは知らない」
「双矢じゃね?」
「はい、俺です。ください」
腹が減っているので、一旦受け取った唐揚げを口に放り込む。うん、やっぱり美味いな。後輩女子は箸でポテトをついばんでいる。素手じゃないんだな、まあこの後メインが来るだろうから手を汚すわけにはいかないか。偏見で申し訳ないけど、ギャルっぽい割に行儀が良い。
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