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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第二部

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第五話-11

 健人の説明はさっぱり分からなかったし、小西が黒板に書いていた構造式? もさっぱり理解できなかったが、凛と梨花が楽しそうだから良しとする。でも多分、人が来ないのは地理的要因もあるんだろうな。フロアに化学部以外いないんだもの。ちなみに梨花にスライムの原理を理解できたのか訊いてみると、


「大体分析できました。再現できるはずです」


 という答えが返ってきた。何、今手元にあるそのスライムの構造を分析したの? 再現できるって何?


 ちなみにスライムは持ち帰れるようで、せっかくなのでということで二人とも、紙コップごとビニール袋に入れてもらっていた。乾くので日持ちはしないらしい。そんな生菓子みたいな。


 ついでになんだかよく分からないポスターを読み、なんだかさっぱり分からないねと俺と凛が感想を交換し、健人たちのやっぱり分からない説明を聞いて、結局何ができる何の研究なのか、少しも理解できないまま化学部の部屋を出てきてしまった。ちょっともったいないような気もするけど、理系人なら理解できるのだろうか。


「来年はダイラタンシーでもやるべきか」


 と健人たちが話しているのが聞こえてくる。でも来年の今頃は、俺たち多分、もう部活やってないと思うんだ。美術部はやってそうだけど。


「ところで生菓子といえば、生じゃないけど、どこかでドーナツとか売ってなかったっけ?」


「そんなお店出してるクラスがあったね。ミセス・ドーナツとかだったっけ、名前」


「ミス・ドーナツのパクリじゃねえか。まあ、行っとくか?」


「行きたい!」


「じゃあ行こうか」


 言わずと知れた超有名なドーナツチェーン店、通称ミスド。まあ文化祭だし、ときどきこういうネーミングの店が出現するのはお約束だ。確か去年は、野球部の焼鳥屋が鳥富豪とかだったような。鳥富豪こそ焼き鳥の全国チェーン店だ、大丈夫なのか、とさすがに不安になったのはここだけの話。


「そういえば野球部って、王道の運動部なのに文化祭出店部活の常連らしいな」


「なんかね。文化部はほぼ全部活参加してるけど、運動部は珍しいよね」


「まあ野球部とサッカー部は青春野郎って感じするし、何かやりたいのかな」


「あとは、練習から逃げたいとか?」


「うわあ、ありそうな話だ」


 野球部とかサッカー部の連中(に限らず運動部全般そうだけど)が、「練習ダリい~」ってやってるのはいつもの光景だ。そんなに嫌ならなんでその部活に入ったんだろうか、と常々疑問なのだが、中学のときからぬくぬくした文化部にしか所属したことのない俺には、分からない何かがあるのかもしれない。


「ちなみに今年の野球部は何を?」


 と俺が訊くと、


「肉まんだってさ」


 と凛が教えてくれた。梨花が食べたいというので、ドーナツの前に立ち寄っていく。店番に駆り出されているらしい三年生が梨花を見て、


「どっちだか分らねえけど、その子連れ去られないように気を付けろよ」


 などというよく分からない忠告をしてくれた。いや、本当にこれは何? 言われなくても梨花から目は離さないけど。分かりにくい冗句だなあ。


 肉まんは美味かった。


「去年の焼き鳥のときは食い逃げが出て困ったよな、とか話してるの聞こえたけど、ありゃ一体何だ?」


「さあ?」


「なんだろうね?」

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