第五話-4
文化祭といえば俺たち文化部は部活の企画もあるが、万人共通でクラスの企画にも参加することになっている。運動部だろうが文化部だろうが帰宅部だろうが、これは変わらず全員だ。名目上、例外はない。
もっとも、それをちゃんと手伝ってる奴が何人いるか。かくいう俺も、美術部の原稿が上がってきて最終編集作業に入る頃には、さすがにこちらを優先することになった。クラスの責任者には、「すまん」と伝えてある。代償として、当日のシフトは少し長くされるみたいだ。仕方あるまい。
うちのクラスは小籠包の販売をするらしい。去年もどこかのクラスがやっていたはずだ。小籠包や焼き鳥をはじめ、毎年どこかがやっている企画というものは必ずあるそうだ。天宮先輩談である。
「そういえば、僕が裕くんと鈴花ちゃんに助けてもらったのも去年の文化祭だったから、もう一年になるんだねえ。早いなあ」
微妙に反応しづらい話題を振るのはやめてもらいたいと思う。今までに聞いた話をまとめると、去年消えた魔力使用者のフルネームは細川裕となるだろうか。知ったところでどうなるものでもないし、確かめようと思わないけど。
一点だけ気になるのは、死亡することで次代に引き継がれるはずの魔力使用者のシステムで、俺の先代であるはずの細川先輩が、まだ生きているということだ。これは平井が言っていたことだ。あいつ曰く、先代とは繋がりがあるらしいが。
しかしまあ、去年の嘘告白に関わっていたのが細川先輩と平井なら、繋がりがあるのは納得だ。去年の計画立てたのも平井らしいしな。細川先輩は俺みたいに利用されたっておちか。大人しそうな顔してえぐいことするな、あいつ。
「終わった……!」
俺が色々と考え事をしながら原稿とにらめっこしていると、岩沢くんが小さく喝采を上げた。一足早く作業が片付いたようだ。
「おつかれ」
と白原が声をかけ、缶のお茶を投げ渡す。引退した先輩が差し入れてくれたやつだ。俺も飲もうと思ったら、
「飲んでいいのは作業が終わった人だけですよ」
と言われてしまった。そういう白原は随分前に缶を空けているので、とっくに終わっているのだろう。
どう考えても俺の原稿が長すぎるせいだな、うん。みんな短編は五〇〇〇文字とかなのに、俺だけ倍書いてるんだもの。そりゃ確認作業に時間かけますよ。しかも余計なこと考えながら。終わるわけがない。
ちなみにこの校正作業、一人でやっても限界があり見落としが絶えないので、「なんか変なところ見つけたら全部教えてほしい」と凛に頼んでおいたところ、三箇所ほど誤字の指摘を貰うことになった。むしろこの文章量にその程度で済んだのが奇跡みたいなもんだ。
もっとも、その前の段階──美術部に渡す前の段階で、作者自身で誤字脱字等を確認する著者校正と、部内で原稿を回して誤字を探す粗探し大会(言い方が悪趣味)によって、三〇箇所は誤字が見つかっているわけだが。
文章書きの三大天敵、誤字、脱字、表記揺れ。そして製本してから数箇所、頒布してからも数箇所、それらが発見されるのはもはや様式美だ。避けられない運命、とでも格好をつけておく。どうにかしたいけどな、こういうの。
よろしければ、作品のブックマークやいいね・レビューなど頂けますと幸いです。




