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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第一話-7

 あれだけ意味深なことを言われた後で、「それはそれ、これはこれ」と割り切れるような精神性を、俺は持ち合わせてはいない。


 中にはそうやって割り切れる人もいるんだろうし、そっちの方が楽なのは分かっているんだが、これは悪癖のようなものだ。やめようと思ってやめられるなら、苦労はない。


 さっき平井に言われた、「後で話がある」がいつまでも頭の中でぐるぐると回っていて、博物館の展示内容が全く入ってこない。


 何だろう、話って。「非モテ陰キャ丸出しな見た目のくせに、私の友達と仲良くしないでください」とか言われたらさすがに凹むぞ。言わないと信じてるけど。


 そもそも白原が俺を先輩として慕ってくれている(勘違いじゃないよな?)のは、多分仮入部の初日、迷子になっていたところを俺が拾ったからだ。


 菅野台高校は、校舎が絶妙に複雑な構造をしていて、南棟以外は教室の配置に一貫性がない。俺も馴染みのある教室なら一ヶ月程度で大体覚えたが、特に運動部の部室や更衣室など、縁のない部屋は未だに大雑把な位置しか分からない。


 つまり何が言いたいのかというと、先に近付いたのは俺じゃないってことだ。長々と語ったが、極論ただの自己弁護である。誰も聞いてないとはいえ、我ながら見苦しいな。


 まあそのあたりは、白原の方からも助け舟を出してくれるだろう。ここで彼女に見捨てられたら、俺は多分、文芸部を辞めることになる。一年早く引退することになる。


 そんな、考えていても仕方ないことを考え続けていると、いつの間にか俺は、博物館の入り口に戻ってきていた。


 結局何も頭に入らなかった。創作のことを考え続けて色々無視してしまうことは今までに何度もあったが、そうでないことで脳のリソースを長時間浪費するのは、年に数回程度だと思う。まさかこんなことで、その数回に入るとは思わなかったが……。


 昼時になり、俺たちは小田原城に移動する。各々持参した昼食を取り出し、適当にグループを作って食べ始めた。俺? 例のバカップルに拾われたよ。なんか白原もついてきたけど。


「平井と一緒じゃなくていいのか?」


 と訊くと、


「鈴花は他の先輩たちと話すことがあるみたいなので」


 と些か拗ねた声で返ってきた。さいですか。


 昼食を食べている間も、俺は平井に言われたことをずっと考えていた。ここは小田原城だが、俺の脳内はさながら小田原評定である。延々と同じ事ばかり考えて、結論が出ない。


 小田原評定とは、いつまで経っても結論の出ない会議や相談のことだ。豊臣氏に小田原城が攻められたとき、城内で和戦の評定がなかなか出なかったという故事に由来する言葉である。


 結局北条氏はそのまま滅亡したようだが、俺の思考力もこのまま滅亡しそうだ。誰か助けて。結局相沢たちの会話の内容もよく覚えていないし、適当に相槌を打っていたせいで、三人を心配させてしまった。


 昼食が終わり、自然公園に移動して散策していると、いつの間にか背後から忍び寄ってきていた平井に腕をつつかれた。


「東宮先輩、どうせ暇みたいですし、さっき言った話をしましょう」


 なんでこの子、こんなに俺に当たり強いの? 俺なんかした?

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