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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第一話-6

 ところで、文芸部と美術部の仲がいいのは前述の通りだが、俺自身はあまり、個人的に仲のいい美術部員はいない。白原からは以前から美術部に友達がいると聞いていたので、もしかしたら俺も仲良くなれるかと思ったのだが……。


「何ですか、さっきからじろじろと?」


「何でもないですすいません」


 これである。俺の方が先輩のはずなのだが、この少女の視線はそんなものお構いなしに、氷のごとく冷たい視線で射抜いてくる。いや、話しかければいいのかもしれないが、名前も知らない異性に話しかけるだけの度胸があれば、多分今頃、非モテ陰キャなんてやってない。


 というか、よく考えたら非モテ陰キャ丸出しの風貌の異性と仲良くなろうと思える女子は、俗に言う一軍陽キャくらいか。いや、彼等ですらそんなことを思っているかどうか怪しい。まあ仲間はずれにするのも悪いし、で話しかけてくれるのかもしれないし。


 にしてもこの銀髪少女、視界の外からよく俺の視線に気付いたな。なんでだ?


「そういえば白原、あの銀髪の子、名前なんて言うんだ?」


「およ? もしかして先輩、狙ってるんですか?」


「にやけるな、名前が分からないと話しかけられないだろ」


「平井鈴花ですよ。でもだめですよー、鈴花、好きな人いるらしいんで」


「狙ってないってば」


 そもそも後輩は恋愛対象外だ。恋愛は同級生に限る。


 というか……、


「よくそんな事情知ってるな?」


「半年前に、色々あったんですよ」


「へえ……」


 半年前か。半年前と言えば、去年の一一月……まったくの偶然だとは思うが、俺が後継者(・・・)になり、義妹ができたのも一一月の初めだったな。俺の存在そのものが変わるような出来事だったが、白原と平井の方も、何かあったらしい。


「それにしても、半年前って随分色々あったんだな。確か、化学部の先輩が急に高校辞めたのも半年前だし」


「ああ、そんな噂もあったみたいですねー……」


「あと、『異能力者に手を出すな』みたいな謎の警句が流行り出したのもその頃だし」


「え、あれもそんな時期だったんですか?」


「そうなんだよなー、半年前に何があったやら……」


 まあ、警句の件とか、俺に関わりがありそうなのもいくつかあるんだけど……。


「何を他人事みたいに言ってるんです?」


「え?」


 話に割り込んできたのは、平井鈴花だった。まるでつまらないものでも見るかのような視線をこちらに寄越し、俺が(とぼ)けているかのようなことを言う。いや、実際そういうところもあるんだけど。


「むしろ『異能力者に手を出すな』っていう警句のこと、東宮先輩も当事者の一人じゃないですか」


「おい待て、なんでそれ知ってるんだ? 俺、誰かに喋ったことあったか?」


 いや、ないと思う。この話はかなり特殊なので、家族と相沢にしか話していない。どちらも成り行きで話したのだが、充分信用に足ると思ってのことだし、そこから話が広まるとも思えない。


「まあいいです。東宮先輩には、後で話がありますので」


「おいこら、『まあいいです』はこの場合、俺の台詞じゃないか?」


 そんなツッコミもむなしく、平井はさっさと俺たちの下を離れて行ってしまった。


 何考えてるんだろう、あの子。いろんな意味で、もしかしたら俺より強いんじゃないだろうか……。

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