第四話-12
やっっっと手に入れたよ、焼きそば二人分確保するだけで、なにゆえこんなにもみくちゃにされなきゃならんのさ。その割にベンチは空いてるし。どうなってんだ、鈴森神社の夏祭りってこんなだったっけ……。
「やれやれ、無駄に疲れたよ」
ようやく落ち着いて腰を下ろし、ずっと抱き抱えていた梨花も隣に座らせる。梨花の反対に少し隙間を開けて御影が座り、隙間には買ってきた焼きそばの入ったビニール袋を置いた。
なにしろ俺は片腕に梨花を抱え、もう片方の手は御影と繋いでいたので、戦利品は御影に預けていたのだ。こういうとき、荷物を持つのは理想は男の方なんだろうけど、今回ばかりは仕方ない。
「悪いな、あの群衆の中で食料守ってもらって」
「ううん、いいの。梨花ちゃんもいたんだし」
「正直な話、多分焼きそばより梨花の方が軽いぞ」
「……さすがにそれは嘘じゃない?」
俺だって未だに嘘だと思うよ。でも本当に重量を感じないのだから仕方ない。
「お腹すいたでしょ、こっちが東宮くんと梨花ちゃんの分。どうぞ」
「何から何まですまんな。……ところで御影、かき氷、どうする? またこの人混みに突っ込んでいく勇気、ある?」
「東宮くんは?」
「俺? ない」
「正直だねえ」
御影には笑われてしまったけど、でもこれはなあ……。
「今回無事に戻れたからといって、次回の安全が保証されたわけじゃないしなあ。俺一人だったらすり抜けて動けたかもしれないけど、梨花と御影がいると、そういうわけにもいかないし」
「わたしが頼りないって言いたい?」
「華奢な女の子連れていくのは不安しかないんだわ」
御影が急に動きを止めて黙ってしまったが、俺は何か変なことを言っただろうか。再度口を開いたかと思えば、
「……ばか」
「なんで俺、急に罵倒されたんですかねえ!?」
「ふふっ、ばーか。焼きそば食べよ」
「真意不明で俺はそれどころじゃないんですけど!?」
そんなに同じ時間を過ごしたことはないと思うんだが、御影が俺の扱い方を理解してきたようだ。何をすれば動揺するか、何を言えば混乱するか、見極めてきている。そんなもん探ったところでどうするんだよ。すると梨花が俺の腕をつついて、
「お兄ちゃん」
「なに?」
「ちょっと静かにして」
「うっ……」
そ、そうか、家での大天使モードじゃなくて、今は外行きの妹モードだから、割と容赦ないんだ。梨花にそうするように言ったのは俺だけど、いざ言われてしまうとなかなか心に来るものがあるな……。
少々凹みつつ、割り箸を取りだし、パキン。ああ、失敗してアンバランスな箸になってしまった。
「いただきます」
「いただきまーす」
「いただきます……」
というばらばらな一言で会話を一旦断ち切り、俺たちは一度、食事に集中する。苦労して手に入れた焼きそばは、美味いことには美味いのだが、なぜだか妙にしょっぱい気がした。
焼きそばを食べ終えた頃、人混みはさらに悪化していた。
「……かき氷、買いに行けるのか?」
「ちょっと、難しそうだね?」
「さすがにやめておくか。危険すぎる」
これ、ちゃんと帰れるんだろうな。俺はともかく御影は電車で帰るわけだし、身動き取れなくなったら困るだろ。それ以前に、相沢たちとも再度合流できるのか怪しい。あいつら大丈夫かな。
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