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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第四話-8

 名前呼びなあ、だめとは言わんが、俺みたいな非モテ陰キャには割とハードルが高いんだよ、呼ぶ方も呼ばれる方も。梨花は家族として扱うのが最初から決まってたことだから、名前で呼んでもらうことにしたけど、あれだって最初はかなり緊張したからな……。


 名前呼びって、回数重ねれば慣れることには慣れるけど、あくまで一人一人に対してだからな。梨花で慣れたから他の人も平気、とはならない。それこそ年齢一桁くらいの頃は全員一律に、男女ともに名前で呼び合ってたはずだけど、いつの間に気恥ずかしさを覚えるようになったのか。


 というかこれ、この空気どうするんだよ。一歩も歩かないままここでずっと固まってるわけにもいかんぞ、相沢が名前呼び提案したところから誰も一言も発さないけど。


 相沢って、恋人はいるけど、別に陽キャってわけではないんだよな。かといって俺みたいな陰キャとも少し違う気もする、変な生き物だ。休日はたまに出不精な俺を適当に連れ回してくれるが、こういう場面だと秘めた陰の部分が出てくるらしい。話題振ったのお前だろ、もうちょっと頑張れよ……。


 まったく肝心な時に仕方ない奴だ、ずっとこうしているわけにもいかないし、適当に切り上げるか。


「はあ、この話後にしない? とりあえず神社行こう、そろそろ腹減ってきた」


「あ、ああ、まあそうだな」


 ということで、俺たちはぞろぞろと鈴森神社に移動を開始した。梨花は俺が抱き上げたままだ。うっかり人込みに紛れてはぐれそうな気がしたので。道中、こそっと相沢が耳打ちして、


「すまん、正直助かった」


「貸し()な」


「了解」


 貸しを作ってどうする予定もないが、早めにどこかで返させる場面を作るとしよう。手早く状況を片付けるための方便とはいえ、友人同士で貸し借りあるの、割と気持ち悪いし。


 歩きながら周りを見てみると、同じ方向に歩く浴衣の歩行者の割合が大きかった。まあそれもそうか、ここ臨時の歩行者専用道路だもんな。普段着の人も、大半は目的地は同じだろう。


 鈴森神社は、この地域でも比較的大きめの神社で、確か裏側には誰かの古墳跡があったはずだ。神社としては割と新しく、築四〇〇年前後、という風に昔祖父さんから聞いたような気がする。記憶が曖昧なのは、単に時間が経ちすぎているからだ。


 何度か調べ直そうと思ったことはあるが、結局他の調べものに向かってしまい、未だにちゃんと調べられずにいる。古墳は誰のものだったかなあ、なんとなく、皇族か豪族か貴族だった気はするんだけど。豪族と貴族の違いって何だろう、これも後で調べておこう。それはさておき。


「そういえば相沢、また今日も眠そうだな、お前。夏休みなのに寝てないのか?」


「いやあ、普段はもっと寝てるんだけどな。今日は特別」


「何かあったの?」


「深夜の一人遊びが結衣にばれて、二人遊びになった」


 一瞬何のことか分からなかった。


「……あ、泊まり?」


「そゆこと」


「なんだただの惚気か。末永く爆発しろ」


「そっちから訊いて来たのに?」


 ちなみに御影と小西の方でも何か話しているようだが、周りが煩いので、こっちにはよく聞こえない。たまに前を行く二人が俺たちの方を振り返ってくるけど、御影と視線が合うと、すぐに逸らされてしまう。まあ長時間視線を合わせるのは、俺もちょっと難しいけどさ。


「………………」


 それを見た相沢も何か言っていたが、俺も梨花も何も聞き取れなかったので、何を言われたのか、真相は不明だ。訊いてもはぐらかされたし。多分、碌なことじゃないんだろうな。

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