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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第四話-7

「時間通りだね」


「ああ、そっちは昨日ぶりだな」


 出会い頭に軽くからかってやると、小西はばつが悪そうに相沢の後ろに逃げた。その相沢は、ぼけーっとしてこっちを見ている。こいつはこの状態がデフォルトなのは分かっているが、あれは確か、普通にただの寝不足じゃなかったか。


「そ、そんなことよりほら東宮くん、御影ちゃんの姿見て何も思わないの?」


「人目もはばからず昼間からいちゃこらしてた女が何か言ってら」


 そりゃもちろん、綺麗だと思うよ。目の保養。


「……?」


 不思議そうにこちらを見ている御影と目が合って、ようやく気付いた。台詞と内心が入れ替わってる。本当にあるんだな、こういうの。


「綺麗だ、よく似合ってる」


「っ!?」


「ええ、そこまで驚かなくても……」


 こういうのは素直に言った方がいいものだと思ったから、そのまま言ったんだけどな。まあ確かに、非モテ陰キャの台詞じゃないのは分かる。けど心の準備をしていれば、意外と何とかなるんだとも思った。実際ここでは何とかなった。


「……あ、ありがとう」


 顔を赤くして目を逸らし、消えそうな声で御影が言う。庇護欲湧いてくるんだよな、こういう姿見てると。守るも何も、何から守るんだって話ではあるけど。現代人にはあまり必要なさそうな本能な気はする。でも昔は大事だったのかな。


 視線を感じたので横に首を回してみると、相沢たちも驚いた顔でこちらを見ていた。何も言わなくていいぞ、何が言いたいのか何となく分かるから。だがたかが視線でそんなことは伝わらず、


「やるじゃん」


 それを言わなくていいというのに。


「それにしてもお前、昨日の今日でよく浴衣なんて手に入ったな」


「ああ、これ父さんが昔使ったやつらしいよ。祖母ちゃんがどこかから取り出してきた。梨花のは新しく用意したらしいけど」


「ああ、それでか。道理で年季感じると思った」


「いや、頻繁に使われてるわけじゃないし、そこまで年季らしい年季は入ってないと思うんだが……」


「似合ってればいいんだよ、ねえ、御影ちゃん?」


「え、わたし!?」


 唐突に話を振られてあたふたしている御影も可愛いが、困ってそうだからやめてやれ。


「……その子が、東宮くんがいつも話してる梨花ちゃん?」


 顔を赤くしたまま御影が視線を下に移し、露骨に話題を変えた。まあそれでいいと思う。


「逃げたな」「逃げたね」


 などと言っている夫妻はさておき。あいつらに俺以外がからかわれることあるんだ。


「ああ、妹の梨花だ。中国産まれなのに色々色素が薄いのは、先天的なアルビノのせいだな」


 といういつもの設定とともに、


「お兄ちゃんがいつもお世話になってます」


 梨花がぺこりと一礼。お兄ちゃん呼びもさすがに慣れた。どうだうちの義妹は、可愛いだろうとばかりに梨花を抱き上げる。体重が存在しないから、梨花は長時間抱っこしていても疲れにくい。非力なので助かる。


「そっか、これは東宮くんがシスコンになるのも納得の可愛さだね」


 喜んでいいのかこれ。喜べばいいか。御影にも梨花の可愛さが伝わったようで良かった。


「ところで御影ちゃん」


「はい何でしょう」


「この二人、兄妹なんだからどっちも東宮なんだよ」


「……? そうだね?」


「そろそろ名前呼びに変えても良い頃じゃない?」


「………………!?」


 御影の処理が追い付いていないが、まずもっと長い付き合いの相沢と小西が俺を名字で呼んでいるんだから、その理論は無理があるんじゃないかと言いたい。決して、俺の心の準備ができていないからとかではなく。


「そういえば、それもそうだなあ」


「それもそうだなあじゃねえよ相沢お前は止めに回れ」


「いや、別に今考えたわけでもないんだなこれが。少し前から結衣とも話してたんだけどさ、これを機に、全員名前呼びにしても良いんじゃないかって」


 ねえその話長くなる? 俺たちまだ待ち合わせ場所から一歩も歩いてないってこと忘れてない?

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