第四話-3
何をしたと言われても、いちゃこらしている友人夫婦を写真に撮って、御影に送っただけだが。一つ言えることは、
「お前ら、普段はかなり抑えてる方だったんだなあ」
「今すぐ忘れろ──!」
無理無理無理無理。無理なものは無理。多分当面は覚えてる。ってか忘れても写真が残ってる。だからそんな鬼気迫る表情で詰められても困る。
「そういえばこのぐわんぐわんって、お前ら共通だったんだなー、さすが幼馴染カップルなだけあるわー」
「知らん! そんなものは知らん! お前が忘れるまでその脳を揺らし続ける!」
「俺はいいが梨花にも迷惑だからそろそろ止めんか?」
「あっすまん」
「ただいま」
「ただいま戻りました」
「思ったより早かったねえ、おかえり」
結局あの後、あいつらの熱気から逃れるため、足早にその場を去って家に戻ってきた。お神輿が出るまでにはまだ一時間くらいあるはずだけど、あんなのを見た後で、一時間も散歩する元気はない。冷房が涼しい……。
「お夕食までまだ時間はあるから、おやつでも食べる?」
「いやあ、俺はいいや。もうお腹いっぱい」
「もう……?」
それはもう、はい。ね。
「りーちゃんはどうする?」
「私もいいです」
「あらそう? お祖父ちゃんが、栗餡堂の豆大福買ってきてくれてるのにねえ」
「食べる」
掌ドリル? 上等だ、栗餡堂の豆大福を逃す方がよっぽど愚かな選択だ。梨花も、一瞬で意見を翻した俺を、ぎょっとして見上げているけど。驚いた顔も可愛いね。
……というか割とレアだな、この子普段は割とクールだから、あまり表情大きくは変わらないんだよ。
もうちょっとくらい、表情豊かになってくれてもいいのにとは思うんだよなあ、これだけ可愛いんだから。まあ普段見せない顔だから、より可愛さが際立つというのもあるけど。
二人並んでテーブルに着き、豆大福を頬張る。うむ、安定的に美味いな。硬すぎず、かといって歯応えを失わない豆の絶妙な食感。ほんのり感じる塩味。程よく伸びる餅。そして、滑らかでありながら小豆の残ったこし餡の舌触りと、飽きの来ない適度な甘さ。
「祖父さんが買ってなかったら、自分で買いに行ってたな。やっぱり何回食っても美味いわ、いくらでも食べられる」
あ、御影からLINERのメッセージ来てる。そういえば相沢夫妻の写真送ったな。
「春宮くん、もうそっち行ってるの?お祭りは明日じゃなかった?」
……うーん、まあ東宮って普通にやったら変換出てこないからなあ、仕方ないことではある。
「昨日から祖父母家に泊まってるんだよ。元々夏休みどこかで来るつもりだったし、たまたま鈴森だったからタイミング合わせることにした」
「じゃあ小西ちゃんたちとは前から知り合いだったんだ」
「いや別に? 行動範囲被ってるのは合宿の帰りに初めて知った」
「そうなんだ」
会話はここで終わってしまった。
……一体御影は、今のやり取りで何が訊きたかったんだろう。
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