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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第三話-裏

 美術部と化学部、そして文芸部を加えた三部活合同の夏のイベント、合宿。去年はなく、今年突然開催が決定した、目的のない謎のイベント。


 今年三年生の僕は受験生であり、当然遊び呆けている場合ではない。参加したいのは山々なんだけどね、だって面白そうなんだもの。見に行けるものなら見に行きたい。


 何が面白そうか──それは後輩たちの恋模様だ。特に注目するのは美術部の凛ちゃんと、文芸部の東宮くん。僕が思うに、この二人は両想い、あるいはそれに近い状態になりつつある。そのはずだ。


 東宮くんは部活が違うから確信には至らないけど、凛ちゃんはほぼ確実とみて間違いない。僕の勘がそう告げている。


 だって東宮くんがいるときといないときで、明らかに表情違うんだもの。この子がいじめにあっていたときも既視感はあったけど、その後の変化にも笑っちゃうくらい見覚えがある。あれは恋する乙女の表情だ。去年の僕と同じ。


 そっか、あれからまだ一年も経ってないんだ。あのときも、鈴花ちゃんが助けてくれる人を見つけてくれて、僕はその人に恋をした。今回も鈴花ちゃんが、助けてくれる人を見つけてくれて、凛ちゃんはその人に恋をした。


 同じだ。当事者として関わった人数からその後の変化まで、全部が一緒。僕の場合は裕くんで、凛ちゃんの場合は東宮くんだった。その違い。


 でもちょーっと時間をかけすぎな気がするかなあ、どう見ても両想いなのに。それとも僕が先を急ぎすぎたのかな。一ヶ月ちょっとは早すぎた? 結果的にはあれが最後の機会だったとはいえ。


 ……だって修学旅行最終日に振られてから、一週間くらいで、裕くんいなくなっちゃったし。だめだったら潔く諦める気でいたけど、本当の意味で最後になるなんて思わないじゃん。


 僕の恋はそこで終わった。裕くんのことは今でも好きだけど、でも引きずりはしない。もう帰ってこないんじゃないか、っていう確信があるから。もうそんな帰ってこない裕くんのことはいいの。


 だからこそ、凛ちゃんにバッドエンドは見せたくない。トラジディにさせたくない。多少遠回りでも、時間をかけてでも、絶対にあの子の恋は実らせる。


 でもそんな手回は要らない気もするんだよね。だってやっぱり、あの二人は既に両想いだから。あんなの時間の問題でしょ、って言えたらどれだけ良かったか。実は懸念もひとつある。


 単純に、二人とも自分に自信がなさすぎる。直前までいじめにあっていた凛ちゃんはともかく、東宮くんもあれは過去に何かあったな、絶対何かに心を折られてる。


 もう早く素直になればいいのに、という気持ちと、今の状態だとお互いに踏み出せなくて、自然に離れてしまうのでは、という気持ち。どっちもある。あとは、今はまだ時期尚早かもしれない、という思いも。うーん、もどかしい。


 まあ確かに、出会ってすぐの今両想いだからって、ずっとそうだとは限らないからね。一緒にいれば、自ずと見たくない部分も見えてくる。そうなったときに二人がどうするか。でもその前に離れてしまうのは、やっぱりもったいない。


 だから僕は、お節介な先輩を演じる。からかいながら背中をこっそり押してみる、そんな役割を当てはめて。


 確か今日は合宿二日目、調べたところ皆が泊まる『銀の羽衣』という宿の朝食は、そろそろ始まっている頃のようだ。凛ちゃん……は、朝が弱いって言ってたから、東宮くんかな、この場合は。そんなわけでお節介な先輩の、モーニングコールスタート。


「おや、すぐ出たね。先輩を待たせないとは感心感心。おはよう」


 ほんと、いい子たち。何も言わずに姿を消した、どこかの誰かさんとは大違い。


 ばーか、もったいない人。まだ菅野台にいたら、面白いものが見られたかもしれないのにね。

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