第三話-20
ワードウルフを何回か繰り返し、平井がワードウルフにいると負けない事実に慄きつつ、チェックアウトの時間を迎えた。荷物よし、忘れ物なし、さて出発。
この後はまっすぐ帰る、わけではなく、列車を乗り換えた後甲府で一度特急を降り、甲府城跡や科学館に寄り道。とはいえ特筆事項も特にないんだけど。正直なところ城跡を素人が見たところで、何も分からないんだわ。
ああでも、甲府駅でお土産にクッキーを買った。帰ったら梨花に……あとついでに父さんと母さんにもあげよう。
そして昼飯の後、再度特急に乗り込み、今度は帰路に着く。あとはもう、解散場所までのんびり揺られていればそれでいい、はずだったんだが、くじ引きの結果隣が小西になったからな……これは多分、何が起きる。
「ところでお盆の話だけど」
ほら言った。こうなったら先手を打つ。
「梨花連れて行ってもいい?」
「え? ああ、それはもうそういうつもりだったから、全然構わないんだけど」
それはもうそういうつもりだった? 織り込み済み!?
「私も健人と、『東宮くんがそんなに溺愛してる義妹って一回くらい見てみたいよね』って話してたくらいだから、それはもう全然良くて」
先を読むな先を。
「え、じゃあなに?」
「いや普通に日程言ってなかったなって」
そういえばそうでした。小西がスマートフォンを取り出してメモを呼び出したので、俺もカレンダーアプリを開いてスケジュールを設定。
「じゃあまず日付だけど、これは八月の八日と九日にあって」
「え二日行くの?」
「話は最後まで聴いて? 私たちが行くのは九日の方だから」
そうですよね二日も連続で連れて行かれるわけないですよね先走りました失礼しました。……お祭りって普通土日じゃないのか、なんで金土なんだよ、休みだから別にいいけど。
「それで集合は一七時、場所は鈴森神社駅北口」
「わあ知らない土地……じゃないな、全然知ってる土地だな、何なら馴染み深いな」
「それは、すごく意外だね?」
「祖父さんがその辺住んでるからなあ、北鈴森ならいつも降りてる駅だ」
なんだ、祖父さんの家から歩いて行ける距離じゃん。知らない土地に行くんだと思ってたから拍子抜けしてしまった。楽だし梨花と二人で前日入りしようかな、電車賃は後で父さんにたかるとして。
どのみち、鈴森には夏休み中どこかで、梨花と一緒に泊まりがけで行くつもりだったのだ。祖父さんの返事次第だけど、今年は神社の祭りの時期に合わせる方向で、話を通しておくことにしよう。
「しかしまあ、鈴森神社か。初詣も毎年そこに行ってるし、昔夏祭りにも連れて行ってもらったことあるし、もしかしたら小西とか相沢とも、知らない間にすれ違ったことがあったかもな」
「そうかもね。じゃあ場所は大丈夫ってことでいいね? 案内しないよ?」
「俺はいいけど、それ御影が迷子にならない?」
「そうしたら東宮くんが連れてくるんだよ? ダブルデートなんだからね」
あっはっは、便利な言葉だなー。まあ、それくらいはするけどね。
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