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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第三話-9

 食った食った、美味かった。食後、そのまま天体観測のために屋上へ向かった化学部を除き、文芸部と美術部の俺たち九人は、少し早いが部屋に引っ込んで休むことにした……ということになるはずがない。これは高校生の合宿である。


 誰が言い出したのか、部屋に人数分の布団を敷き終えた頃に何名かが男子部屋に集まり始め、カードを取り出してばば抜きが始まった。参加しているのは俺と御影、白原、平井、岩沢くん、文芸部(うち)の部長で六人。男子部屋に集まっているのに男女同数なのはどういうことだろう。


 白原を連れ込んだのは岩沢くんだ。カードをちらつかせたらすぐに食いついてきたらしい。些か将来が心配だ。


 そして白原に引き寄せられて平井が参加、その際に御影を連れてきた、というのが事のあらまし。部長に関しては、隣の男子部屋で一人になって暇になったからのこのこ釣られてきた、との事。


「飛んで火に入る夏の虫?」


「何も言い返せねえ」


 ばば抜きを二周して、なぜ二回続けて負けるのか。部長はどうやら負けに来たらしい。


 次は勝てるといいですねえ、と言いながらカードを混ぜる白原。完全運任せのゲームで二連敗って前世にどんな罪を犯したんだ、と憐れむ岩沢くん。合宿参加中の全文芸部員に煽られ気落ちする我らが部長。


 なお罰ゲームを定めたところ、三周目の最下位は平井になった。最高位は白原。罰ゲームは最高位が最下位に(公序良俗に反しない常識と良識の範囲内で)何でも命令できる、というもの。いつかの王様ゲームみたいなものだ。


「そういえば王様ゲームのときも、最初の王様は白原で、命令を受けたのは平井だったな」


「ありましたねえ、そんなことも。それじゃあ鈴花、おいで」


「え」


 ……うん? なんか流れ変わったな。現在時刻は一〇時七分、両手を広げた白原に、何かを察した平井がたじろいでいる。


「ねえ、待って千夏。今? ここで?」


「大丈夫、明日の朝は逆になるからね」


「ねえ本当に待ってそういう問題じゃなくて。今じゃないとだめ? その、あとで部屋に戻ってからとか……」


 白原は何をする気なんだろうか。しかし彼女の有無を言わさぬ笑顔に逆らえる者はそう多くない。広げた両手を強調するように一度上下を振ってみせると、諦めた平井がその腕の中にすっぽりと収まった。


「ふふーん、鈴花可愛い」


 白原はご満悦。


「ここでこれするなんて、何の罰ゲームなの……」


「何のも何も、ばば抜きで巻けた罰ゲームだよ。鈴花は部屋に戻るまでこのままね」


「ねえ、ならもう帰ろう?」


「だめ、まだ帰らない」


「こんなの、絶対あの人には見せられない……」


 あの人というのが誰なのか、平井にことある毎に煽られまくっている俺としては気になるところだが、それを探るのはまた別の機会にしよう。しかしまあ、合宿に来てこんなところで百合の花を見られるとは、思いもしなかった。


「眼福ですな」


 などと古のオタクのような口調でこっそり耳打ちしてくる部長の言に、俺は沈黙をもって肯定とした。だから岩沢くん、平井に嫉妬するのはやめなさい。

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