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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第三話-7

 良くも悪くも何事もなかった散歩から戻ると、白原と岩沢くんはまだ戻っておらず、あれだけ俺たちを裏切り者と(そし)った部長の姿もなかった。


「おいあいつどこに消えやがった」


 荷物番をしていたのが誰かというと、鈴村先生だ。塚本先生を連れ込んで駄弁っているらしい。捕まる前に逃げよう、とアイコンタクトで相沢と決めると、俺たちは足音を立てずに隣の部屋に滑り込み、慎重にドアを閉めた。


 三部活合わせると、合宿参加生徒の男女比は七対六になる。部屋の広さや布団の数の都合上、俺たちの寝る部屋は男女二部屋ずつに分けられ、宿に着いてから適当な方法で(この場合は雑という意味だ)、部屋割りは決められた。


 男子部屋の一つは昼間は文芸部が使うことになっており、つまりは現在鈴村先生と塚本先生がいる。この隣も男子部屋で、俺たち四人はそこに滑り込んだ形だ。慎重にドアを閉めたのは、隣室のドアが全開放されているためだ。さぼり防止目的だが、逃亡すれば意味はない。


 部屋に入ると、そこには化学部の後輩男子と文芸部の部長がいた。どこに行ったのかと思ったが、こんなところにいたようだ。


「ってことは部長、さぼり?」


「左様にござる」


 四人中三人逃げたのでやる気がなくなったらしい。正直なことだ。先生がいたから適当なことを言って荷物番を押し付け、化学部の後輩がのびのびと占拠していたこの部屋に潜伏することにしたという。


「ごめんな、うちの変なのが押しかけて」


「全然大丈夫っすよ、ソシャゲの話してたんで」


「おいこら、部長に向かって変なのとはなんだ」


「だって変なのじゃん」


 迷惑にはなっていなかったようで安心した。相沢に続いて俺たちも靴を脱いで上がり込む。この宿の客室は畳張りで、荷物を置く場所さえ空けておけば寝転がっても問題ないのがありがたい。


 相沢は正座で座り込んだかと思うと、両腕を伸ばしたまま床に伸びるようにして姿勢を崩した。そこで突然、小西が大喜利の開催を宣言する。


「この光景に一言でタイトルを付けてください」


「やる気のない猫のポーズ」


 即座に反応した御影の回答がこれである。俺たちは同時に吹き出し、しばらく込み上げる衝動に任せて笑い転げた。確かに見えるけど! 上半身だけ見たら猫の伸びだけど! 普段何考えてたらそんな即興で面白い答え出てくるんだよ。


 なお、六人で笑い転げていたらさすがに隣の部屋にまで声が届いたらしく、様子を見に来た鈴村先生に発見された俺と部長は連行されて行きました。何も書くネタはないのにどうしろと。




「それで、結局あのあとどうしたんだよ」


「四人全員、『架空の反省文』っていう変なお題で原稿用紙四枚分の短編書いたよ」


「架空なのかそれ?」


「そこまでは良かったんだけどさ」


「そこまでは良いのか」


「鈴村先生の決定で、あの反省文、文化祭号に特集で載るらしい」


「……正気か?」


「俺が知りたい」

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