第三話-5
「何か言われたっていうと、あれだよね?」
ここに来てようやく、相沢の言っていた意味が分かった。なるほど、当然小西にも話は行っているし、むしろ小西も積極的に賛同している立場のようだ。
それもそうか、しつこくダブルデートが云々言ってくるの、相沢単体じゃなくてあの夫婦だもんな……。
「ああ、多分御影が思ってるそれで合ってる。俺はさっき、相沢に持ち掛けられた」
大方、しつこく誘ったところで俺の彼女候補がいなかった所へ、御影が現れて今ならいけると踏み切ったんだろう。こちらの気も知らないで、随分思い切りがいい。
「相沢には、念入りにお盆の予定を確認された上で切り出された。俺は基本いつでも暇なのが知られたから、もう断る理由がない。あとは御影次第ってところだな」
「わたしも行けるって答えちゃったんだけど……」
終わった。
「……もう確定したようなものだな」
「そうだね」
初めから、選択の余地などなかったようだ。まったく、用意周到にご苦労なことで。
場所は相沢と小西の家の方面で、広さはそれほどでもない公園の夏祭りに行くという。毎年盆の時期に二日間行われるらしく、その一日目に俺たちを呼ぶつもりなのだ。
これがダブルデートでなければ、歓迎だったのだが。
「なんで俺で遊ぶのに、御影まで巻き込んだんだか」
「でもわたしは嬉しいよ」
俺のいるダブルデートに巻き込まれたのが? いや、俺で遊ぶのに参加出来ることが、か。
「みんなで遊びに行けるのが」
どっちでもなかったらしい。安心したような、どこか残念なような。妙な気分だ。
「三ヶ月前には、こんなの想像できなかったからね」
……そう、最近は忘れがちだが、御影と出会ったのは彼女がいじめに遭っていたからだ。その心の傷は、普通は並のものではない。どれだけ立ち直れているか、他人の俺には分からない。
今はまだ問題ない。だがいずれ、俺の気持ちが暴走しそうになったら、それは全力で制止するべきなのだ。
「だから、あのね、東宮くん」
この笑顔に惹かれすぎてはいけない。意識しすぎてはいけない。勘違いしてはいけない。精神を強く持ち、自制を効かせなければいけない。
「わたしを助けてくれて、ありがとう」
でもその言葉だけは、素直に受け取っておくべきだろうな。
……そう色々考えていたというのに、こいつには本当に困ってしまう。
「よお旦那、デートは満喫してきたか」
反射的に手が出なかっただけ、こちらの自制心を褒めてもらいたいものだ。
駅に戻ってきたところで俺は相沢に捕まり、絡まれていた。梨花がいれば、銀魔力でぐるぐる巻きにしていたことだろう。最近家では銀魔力をよく使うようにしているため、扱いにはようやく慣れてきたところだ。
少し離れたところでは、御影もまた小西に絡まれているようだった。
「あら奥さま、今日も仲がよろしいようで」
全て言い終わる前に御影が口を塞いだので、その後何を言おうとしていたのかは分からない。でもこれだけは言える。
相沢と小西、本当に似た者夫婦だ。幼馴染の付き合いの長さは伊達じゃないな。こんなろくでもないことで息を合わせないでほしい。
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