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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第三話-3

 特急って乗り心地いいんだな。


 ということで、俺たちは現在、合宿先に向かう列車に揺られていた。目的地は山梨にある。名を『銀の羽衣』、天文台のある宿であり、塚本先生がそこにいくつか部屋を予約したという。


 よくもまあそんな都合のいい宿があったものだと感心するが、天文台を使うのは主に化学部だ。俺たち文芸部は使用予定はない。


 美術部は宿周辺の散歩道を散策することになっているものの、文芸部はいわゆるカンヅメになる。三部活を巻き込むことと場所を変えること、それだけの意味しかない、形だけの合宿だ、本当に。


 そんなことを改めて考えていると、恋人と離れ離れになり暇を持て余した隣人がちょっかいをかけてきた。こんなことをしてくるのは一人しかいない。相沢だ。


「一泊二日、山梨に泊まるわけだろ? お前耐えられんの?」


「やめろそれを言うな、思い出した途端禁断症状が出る」


「もはや依存性じゃねえか」


 何の、とは今さら言うまでもない。


「そんな体たらくで三泊四日の修学旅行大丈夫なのかよ」


「無理だな。梨花欠乏症で俺が死ぬ。飛行機の中で」


「シスコンがよ。航空会社が迷惑するからせめて海で死ね」


「逆に海なら死んでいいの?」


 とはいえこの場にいない義妹のことをいつまでも気にしていては仕方ないので、俺は無理やり話を変えることにした。


「化学部は天体観測がメインイベントだったよな。昼間は何してんの?」


「……散歩?」


「博物館とかないのか宿の近くに、暇人がよ」


「仕方ないだろ、こんな目的からして雑な合宿でまともな予定が立つか。文芸部こそ何してる気だよ、言ってみろ」


「カンヅメ」


「それ見たことか」


「しかも部誌は夏号の製作が終わったばかり、次の締切は文化祭号で一ヶ月後」


「馬鹿じゃねえの」


 こうなると愚痴大会の開始である。お互いにひとしきり顧問の雑な仕事を嘆いた後、あまりにも精神衛生上良くないことに遅まきながら気付いたため、再度話題を変えることにした。話題をよこしてきたのは相沢だ。


「そういえば東宮、お前お盆の予定とか何かあるか?」


「ない」


「……俺から振っておいてあれだが、ないはどうなんだ? 帰省とかしないのか?」


「さてここで東宮家の構成者を振り返ってみようか。ふらふらした高校生俺、全て俺次第な天使の義妹梨花、生活スタイルぐっちゃぐちゃで早死しそうなフリーライター母、所属不明で休日すらほとんどない謎の警察官父。予定なんか立つと思う?」


「塚本先生並みに無理」


「だろ? だからないようなもんだよ」


 途中塚本先生が盛大にディスられた気がしたが、日頃の行いなので仕方ない。


「まあ、祖父(じい)さんのとこには、普段から暇なときに勝手に行ってるしな」


「そんなほいほい行けるような距離なのか」


「いや、電車賃はあとで父さんにたかってる」


「それで許される体制なのがすげえよ」


 先月梨花と二人で行ったときには、孫が増えたと喜んでいた。なお、面倒なので事情説明は省いた。祖父さんは適当に納得してたから、多分問題にはならないと思う。切符買うのは割と楽しい。


「……それで、何の話してたんだっけ?」


「お前がお盆の予定訊いてきたんじゃん」


「そうだったそうだった」


 三歩どころか一歩も歩いてないの忘れたぞこいつ。


「俺の予定なんか気にして、何を企んでいる?」


「言い方。うちの近所の公園で夏祭りあるから、そこでダブルデートしようぜって持ちかけようとしてただけだよ」


「おい相沢、お前俺に彼女いないの忘れたんじゃないだろうな?」


「忘れた」


「今すぐ脳外科でも受診してこい。その記憶の悪さ、絶対なんか問題あるから」


「まあまあ、話は最後まで聴けって」


 最後まで聴いた結果にしても、ろくなもんじゃなかった。どうやら後で、御影と話す時間が必要みたいだ。


 小西でも誰でもいい、誰かこの相沢(ばか)を止めてくれ。

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