第三話-1 合宿は美少女と一つ屋根の下
その人を知らざればその友を見よ、とはよく言ったものだ。いや、本当に。
変人部、合宿まで一緒にやるのか。
菅野台高校には、夏の大規模合宿というものがある。主にグラウンド部活の連中が原則全員参加し、五日間の高地トレーニングや自炊などを通すことで、心身の鍛錬と集団行動の訓練を行うというものだ。
内容から分かる通り、参加するのは運動部だ。野球部、サッカー部、ハンドボール部、陸上部……。白原が言うには色々な意味で地獄なのだという。彼女がなぜそれを知っているのかは謎だが、いずれにせよ俺たち屋内部活、しかも文化部ともなれば関係のないイベントだ。
そう思っていた時期が、俺にもあった。というか、変人部のほぼ全員がそうだろう。相沢や小西あたりの化学部員ですら、察知できたかどうか分からない。というわけで要するに、例によって塚本先生が言い出したことだ。
六月初頭に突如開催が決定した、夏休みの変人部合同イベント。……そう、合宿である。まじで何しに行くんだ俺たちは。
どうせ訊いたところでろくな動機ではない(ひとつ屋根の下で寝起きして青春しろとかそんなことを言い出すだけに決まってる)から真相はあえて探らない。探らないが、表向き、三部活を集めて合同で合宿を行う名目は以下の通りだ。
「化学部、天体観測を通じて自然科学の心構えを見つめ直す。文芸部、山中の施設に滞在することで環境を変え、創作の集中度を向上する。美術部、自然や宇宙を知ることで芸術に対する熱意を高める。合同で行う理由、互いに部活間での交流を深め、知見を広げるため……」
合宿に関する説明会が行われ、配布された資料を小西が読み上げると、俺たちからは一斉に疑問符が溢れ出た。
「「「「「「なにこれ?」」」」」」
一枚の紙を取り囲んでいるのはいつもの六人。東宮、御影、相沢、小西、白原、平井だ。天宮先輩は三年生であり、夏を過ぎればそろそろ引退の時期が近いので、合宿には参加しないことになっているそうだ。御影と平井が少し残念そうにしていた。天宮先輩大人気。
そもそも変人部を集める理由も分からないし、この後から無理やり取ってつけたような名目も意味が分からない。
「「どう考えても、塚本先生の私欲だよなあ……」」
相沢と小西、化学部員が真っ先にたどり着いた結論がこれだ。文芸部員の俺も、あの先生ならやりかねないと思う。さすがに本人に向かっては言えないが。
「細川先輩なら面と向かって食ってかかりそう」
「『これは何のつもりですか?』とか言いそうだよね」
「先輩って、塚本先生と仲良かったんですか?」
「鈴花、細川先輩のそれって仲良かったって言っていいの?」
相沢と小西の、細川先輩とやらへの信頼が厚い。そして平井や白原も、細川先輩とやらのことは知っている様子。この場にいなくて相沢たちが先輩と呼ぶということは、今は三年生だろう。なぜ平井と白原が知っているのかは分からないが、
「もしかして細川先輩を知らないのって」
「わたしと東宮くんだけ?」
俺と御影の疎外感。一体どうなっているというのか。
「これ、天宮先輩だったらなんて言うんだろう」
「なんて言うかなあ。意外と何も言わないかも」
細川先輩とは対照的だ。それはそれで見てみたい気もするが。
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