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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第二話-裏

 時間はやや遡り、東宮双矢の言うところの、「変人部の会合」に向かおうとしていた天宮に、廊下で声をかけてきた男子生徒がいた。名を木下(きのした)陽一(よういち)といい、昨年には彼女とクラスメイトだった人物だ。


「天宮、今少しいいか?」


 背後から呼び止められ、天宮はあまり上機嫌とはいえない声で振り返る。


「……何? 僕この後部活行くんだけど」


「ちょっとした確認だ、すぐ終わらせる」


 すぐには終わらないだろうな、と天宮は受け取った。




「細川の弟子が、この学校にいる。そんな噂を聞いたことはあるか?」


 木下が挙げた名前は、これも昨年に天宮たちとクラスメイトだった人物のものだ。とはいえ、彼の弟子、と言われても、首を捻るしかない。


「そんな噂があるの?」


「いや知らん。俺が勝手に思いついただけだ」


 なんとも無責任な話があったものだ。


「ただ、いる気がするんだよ。今の二年生に、あいつと同じ力を持つ人間が」


「少なくとも、僕はそんな噂、聞いたことないよ。そもそも裕君が魔法を使えたこと自体、知らない人の方が多いんだよ? そんな話、広まるわけがない」


 なんのことか理解した上で、天宮は否定した。弟子というのが誰のことなのか、即座に思い至ったのだ。彼の弟子というのであれば、そう呼ぶに相応しい人物は別に存在する。木下の言う弟子とやらは、どちらかというと後継者と呼ぶべきだろう。


「お前は、そう思うのか」


「それにどうしたの? 裕君がいなくなったあの頃ならともかく、半年以上も経った今になってそんなことを言い出すなんて。ちょっと説得力に欠けるんじゃない、木下君?」


「俺は、見たんだよ。二年生の誰かが、何もない場所から銀色の糸みたいなものを出したり引っ込めたりするのを」


 該当する事象には思い当たる節があったが、探られると面倒なので、ここははぐらかしておくことにする。


「ただの見間違いじゃなくて?」


「違う!」


 厄介なことになった、と天宮は額を押さえた。確かに現実として、その現象は実在した。誰かに見られ、一瞬を切り取って責められる可能性も存在した。それが現実のものとなったのは天宮の責任だ。年長者の自分が、まず警戒しなくてはならなかったのに。


「俺は、確かに見たんだよ。少し前に、校内でいじめがあったって話が出ただろう。だいたいそれくらいの頃だ。時期的にも一致する」


「木下君……」


「多分あいつだ。あいつは細川に教えられた力を振りかざして、気に食わないやつをいじめたんだ。思えば細川もそんなところはあった。俺もやられたんだ、軽口を叩いただけだったのに、黙っていろ、と喉を氷漬けにされて……」


「木下君」


 天宮が優しく窘める。彼に教えるつもりはなかったが、どうやら予定を変更して説明はしておいた方が、後のためにも良さそうだ。


「僕は知ってるけど、裕君は弟子を取ったりしてない。それに、君が喉を氷漬けにされたときは、さすがに言い過ぎだったよ。裕君は、みだりにあの力を振るっていたわけじゃない」


 こういう人間なのだ、木下陽一は。悪人というわけではないが、思い込みが激しい。そして、加減や距離の詰め方があまりにも下手すぎる。『彼』に厄介者扱いされていたのも、主にその悪い意味での遠慮のなさが要因だ。


「けど……天宮」


「違うよ。それに君が見たのは、多分逆。いじめの主犯を釣り上げた瞬間だよ。実は僕も、そのときの作戦に関わっていたんだ。だから断言する。君が見たのは、理外の力を理不尽に振るう後輩の姿じゃない。僕が保証する。あの子たちに代わって、僕が保証するよ」


「そう、だったのか。知らずに俺は何を……」


「僕たちは、後輩たちを無闇に疑うべきじゃない。信じてあげるべきなんだ。何もできなくても、先輩として、それくらいはね」


「……はあ、そうか」


 危ないところだった。あらぬ誤解が染み付いてしまうところだった。これでは前線で身を張った後輩に申し訳が立たない。


 そして、木下は、そんな天宮の台詞に思うところがあったようだ。


「お前、変わったよな」


「そう?」


「ああ、半年くらい前から」


 天宮は脆く微笑んだ。『彼』が姿を消した後、その自覚はあったから。

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