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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第一話-3

 ところで、なぜ美術部と文芸部と化学部が合同で校外学習を行っているのか。これには理由がある。


 もともと文芸部は部誌の発行を習慣として行っており、文書の作成スキルを持っていた。文芸部の基本活動は創作活動だが、内容は小説が九割を占めており、文章を書くことに一切の抵抗がない集団だ。


 同じく部誌発行を習慣化している美術部は、文芸部とは逆に、部誌の内容のほとんどをイラストが占める。文芸部の部誌が文集なら、美術部の部誌は画集のようなものだ。


 文を持つがイラストを作れない文芸部と、イラストを持つが文が書けない美術部。まずここで需要と供給が発生し、部誌の共同製作文化が始まる。


 対して、化学部である。彼らは毎年、研究テーマを決めて活動するものの、その成果をまとめて発表する機会が極端に少ない。昨年ようやく同好会から部に昇格したものの、部費の支給額は少なく、すぐにでも同好会に降格される恐れがあった。


 そこで文芸部から救いの手が差し伸べられた。文芸部の部誌発行能力で、化学部の活動実績を宣伝する活動を起こしたのだ。何を言っているのか分からないと思うが、俺にもよく分からない。


 この時点では文芸部と化学部の繋がりだったが、美術部とは友達の友達くらいな距離感だった。だがそもそもこの三部活は変わり者が集まる部活トップスリーであり、仲良くなるのにさほど時間はかからなかった。


 その時間たるや、三馬鹿が運命のごとく惹かれあった、などと揶揄されるくらいである。何を言っているのか分からないと思うが、俺にもよく分からない。


 とにかく、変人部トップスリーはそうして交流の機会を増やしていった。脳筋で知られるバスケットボール部とバレーボール部や、俺たちとは(断じて)全く別の意味の変態ぞろいと陰口を叩かれるハンドボール部とサッカー部もそれぞれ仲がいいらしい。類は友を呼ぶ、という奴だろう。野球部と吹奏楽部のカップリングは、また別だと思う。


 要するに、部活同士の交流自体は、菅野台高校では珍しくもなんともないということだ。グラウンド部活は、夏休み中に大規模な合宿を合同でやるらしいし。


 それはそうと部活の交流会なんて、わざわざ遠路はるばる小田原に来てまでするものでもないと思うのだが、そもそも小田原に行こうと言い出したのは誰なのだろうか。


 パターンとしては二通り考えられる。どこかの部員が言い出して、先生たちが行先に定めたか、あるいは最初から、先生たちの話し合いで出た場所にそのまま決まったのか。


 まあ決まったものはしょうがないので、俺は今、小田原に向かう電車にがたんごとんと揺られていた。


 変人部のアクティブメンバー数は、かなりばらつきが大きい。我らが文芸部の部員数は一五人いるが、実際に活動しているのは俺や白原などせいぜい七人程度、つまり半数が幽霊部員、しかもアクティブメンバーの三割は三年生なので、もう間もなく引退する。


 化学部は聞くところによると、部員七人中幽霊部員は一人だそうだが、そもそもの絶対数が少ない。


 美術部に至っては、二〇人中一二人が幽霊部員だという。もはや部として存続しているのが不思議なくらいだ。変人部の生態は謎だらけである。


 計算してみると、三部活のアクティブメンバーは全部で二一人であり、しかもそのメンバー全員が校外学習に同時に参加できるとは限らない。


 実際、文芸部でも校外学習の不参加表明をしたメンバーは三人いる。化学部は二人、美術部も四人が不参加だ。これ、実施するのが各部活別だったら日程も調整できたんだろうけど、合同だとそうもいかない。


 結局今回参加するのは一四人……本来の目的は部活同士の親睦を深めることだが、四四人中三〇人が不参加となると、もうこれは代表者会談と言った方がしっくりくる。変人部、廃部危機。


 やがて集合時刻の二〇分前になり、俺は小田原駅に到着した。

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