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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第二話-11

 腹が減った俺たちは、アリス一階のフードコートに足を運んだ。大雑把に数えて、だいたい一五店舗が一箇所に纏まっているだろうか。ファストフードから洋菓子店までだいたいなんでもあるので、食事を選ぶのには困らない。


 まあこの時間なので、当然ほぼ満席状態だったわけだが……席を見つけるまでの過程は省略することにする。


 俺はピザ、御影はハンバーガーというそれぞれジャンクなメニューを選び、確保した席に座った。御影はどうだか分からないが、俺はこういう時でもなければ、あまり食べない食事だ。


「この後はどうするの?」


 いくらか食べ進めたところで、御影が俺に訊いた。そう言われても、今日の動きはかなり行き当たりばったりだ。予定などないし、どこに行きたいとか決めているわけでもない。くまねこ書店とトジマ以外、アリス(ここ)には目的意識はないしな。


「そうなると……あとは服を見に行くくらいか? そろそろ夏用のシャツとか欲しかったんだよな」


「なるほど。わたしも服は見ておきたいかも」


「問題は、どこから見て回るかだな……」


 アリス朝日出には、服飾関係を扱っている店が多い。CUとか、Get Niceとか、World Workとか、Left Inとか、もう本当にとにかく店舗数が多いのだ。東半分は全部服屋だからな、売れてるのか?


 というわけで、どの店から見に行こうか、という問題が出てくる。まあ、深く考えず近いところから行けばいいか。


「それはそれとして、今日の御影は結構よく喋るんだな」


「!?」


「ああ、いや、責めてるとかじゃなくてな? この間の王様ゲームのときは全然喋ってなかったけど、今日は会話が多い気がして。……大丈夫? 喉詰まってない?」


「だ、大丈夫。そうだね、今日はちょっと、喋る量多いかも」


 フライドポテトを頬張っていた御影が急に固まったので少し心配したが、とりあえずは大丈夫らしい。


「王様ゲームのときって、六人でやってたじゃん?」


「そうだな」


「わたし、人数が多いと喋るタイミング掴むの苦手なんだよね」


「ああ、なるほど?」


「でも今日は二人っきりだから、ちょっと話しやすい」


「お、おう……」


 なんだろう、自分で振った話題のはずなのに、なんでこんなに気恥ずかしい感じがするんだろう。


 俺は非モテ陰キャで御影にそういう意図がないことが分かってるからいいけど、他の男だったらもしかしたら勘違いするかもしれないくらいにはぐっと来た。まあそんな状況があったとしたら、その男は少々お話が必要だが。


 そんなしょうもないことを考えていると、今度は反撃とばかりに、いたずらっぽい表情で訊いてきた。


「というか、そういうこと訊いてくるなら、わたしからも訊きたいことあるけど?」


「……なんかぞくっとするな、その笑顔」


 居心地が悪いという意味であって、断じてマゾヒズム的な意味でないことは断言しておく。


「東宮くん、今日わたしのことちらちら見てたでしょ」


「!?」


 あ、やばい、俺のはまじで喉に詰まった。ピザのチーズに喉塞がれた。水飲まないと窒息する……。


「……ああ、死ぬかと思った。で、何だって?」


「今誤魔化そうとしなかった?」


「何のことかな」


 御影が膨れた。失敗だったらしい。


「東宮くん、今日わたしのことちらちら見てたでしょ」


 うーん事実。どうも逃がしてはくれなそうだし、認めるしかなさそうだ。


「なんだ、ばれてたのか」


「そりゃあ、あれだけ見られてたら気付くよ。そんなにこれ(・・)が気になった?」


 御影が、チュニックの袖をひらひらと振って見せてくる。うん、まあ気になってないかと言われたら全くそんなことはないんだけど。そういうところを観察するのも目的の一つだったし、それも気になってたけど。でもそれより、


「その服の色、義妹(いもうと)の目の色にそっくりだったからさ」


 梨花の深い青の目は本当に綺麗だと思う。吸い寄せられてずっと見ていたくなるほどに。我ながら重度のシスコンだと思うけど、身内の贔屓目を抜きにしても、梨花の目は綺麗だ。好きな色を訊かれたら、今ならあの色を即座に答えるだろう。

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