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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第二話-9

 アリスは関東を中心に複数存在する、大型のショッピング施設だ。東宮家の最寄り駅である朝日出駅の傍にも設置されており、朝日出駅北口からは歩いて五分程度の距離にある。


 正直なところ、東宮家からのアクセスを考慮するなら、全国どこにでもあるショッピング施設ATOM(あとむ)でいい。今回わざわざアリスを選択したのは、東宮家から住所の離れた御影を連れていきやすく、俺がいつも買い物をしている店が多いからだ。


 俺は前日まで服装についてかなり悩んだ。それこそ、相沢に助けを求めようか本気で検討するほどに。しなかったのは、間違いなくからかわれることが分かり切っていたためだ。


 創作のために書いている日記には、「散々悩んだ結果、最終的には普段通りの服装に落ち着いた」と書いてある。後から読み返した場合、自己客観視にも役立つので割と使える。


 実際の服装は、ポロシャツにパーカーを羽織っただけという、なんの捻りもない簡素なものだ。ポケットには小さく畳んだエコバッグ、手にはショルダーバッグ、その他ポケットタオルやポケットティッシュなど。


 見事にいつも通り。まあ手段が手段なら目的も目的なので、こんなものでもいいのかもしれない。


 北口でネット小説を読みながら待っていると、電車が到着したらしく大勢流れてくる人混みの中に、ぱたぱたと一人の少女が改札を出てきたのが見えた。待ち合わせだろうか、軽くめかしこんでいる姿で、周りをきょろきょろと見回している。


 そして彼女はこちらを見ると、いそいそと駆け寄ってきた。……いそいそと駆け寄ってきた?


「いた、東宮くん!」


 俺、だな。御影だったのか。随分と印象が違うので、声かけられるまで誰だか分からなかったぞ。


 御影の服装は、群青のチュニックと、白いデニムのスキニーパンツ。肩の上を通して前に流した三つ編みの先には小さなリボン、長い前髪はヘアピンで横にまとめられている。


 普段は地味な印象だと思ったが、こうして見ると、顔立ちはやっぱり整ってると思う。端的に言えば可愛い。天宮先輩が自慢げになるのも、無理ないかもしれない。


「ごめん、待った?」


「小説読んでたから、全然大丈夫。呼んだの俺だし」


 待ち合わせのお約束みたいな台詞だが、こういうときなんと返せばいいのか、よく分からない。そう、分からないのだ。だからこその今日のこれなのだが、先が思いやられる。


『凛ちゃんのこと、守ってあげてね』


「──!?」


「ど、どうしたの!? わたし、なんか変だった!?」


「い、いや、違う! そういうわけじゃない!」


 本当に違うのだ、ただ、いつもと違う服装の御影を見ていたら、つい思い出してしまっただけで。


「そ、そう? 今日の格好、どうかな」


「すごく、いいと思います」


「なんで急に敬語?」


『うんうん、凛ちゃん、可愛いでしょー』


「──!!」


『君、凛ちゃんのこと好きでしょ』


「────!!」


「ねえ、本当に大丈夫!? 信じていいんだよね!?」


 声にならない声を上げながら突然頭を振り回したり抱えたりする奇行に走り始めた俺を、御影は若干引き気味に見ていた。


 正しいよ、その反応で正しいと思うよ。待ち合わせしてた相手が急にこんなことし始めたら俺だってそうするし、多分梨花ですら今の俺見たら引くよ。


 これがフラッシュバックとかいうやつか。イマジナリー天宮先輩は一旦どこかに引っ込んでてくれ……。

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